定期的に競売セミナーを開催し、日々、競売の相談を受けているドクターKである。今回、競売で公開されていた区分マンションが1万円の物件をご紹介する。しかし、1万円には理由があるため、説明する。
この物件は地方の区分マンションである。裁判所が査定した価額は「1万円」である。
通常、区分マンションの価額は数千万円するが、「1万円」でマンションが購入できるなら、お買い得である。
しかし、そこにはカラクリがあり、安い物件には裏があるので注意しよう。
ちなみに、「1万円」という評価価額は、本当はマイナスであるが、競売物件で入札金額をマイナスという設定はできない。そのため、最低価格の「1万円」にしているとご理解いただいて構わない。
1.物件概要
(1) 周辺環境
物件は日本海に面している都道府県にあり、近くには有名なスキー場がある。私自身もそのスキー場には数回行ったことがある。
最寄りの駅は都内から新幹線で行けるため、都内からスキーを日帰りで楽しめる人気スポットである。
スキー場は非常に広く、多彩なコースがある。物件は新幹線が止まる最寄りの駅から約3.7km離れたところにあり、リゾートマンション、旅館や民宿が点在する地域である。
(2) 物件概要
物件は築29年の区分マンションであり、7階にある。広さは35uの1LDKである。
以下、外観である。外観をみる限り、メンテナンスはされているように思える。
(3) 間取り、室内
間取りは1LDKであり、以下である。
以下、部屋の中の写真である。非常に綺麗である。置いてあるものは、リビングにあるソファと棚、テーブルぐらいである。
所有者は住居目的ではなく、別荘の用途で購入し、利用していたのだろう。この間取りなら、別荘目的で十分である。
2.物件詳細
(1) 物件評価の金額
裁判所から依頼された不動産鑑定士による競売の基準価格は以下である。冒頭で記載した通り、「1万円」である。
「1万円」である理由は、滞納金が多額にあるためである。以下、滞納金であり、「17,865,979円」である。
この延滞金の支払いは債務者や債権者ではなく、落札した買受人が支払う義務がある。
そのため、裁判所では、物件を評価する際に、物件評価額から滞納金を差し引き、評価している。万が一、誤って1万円で落札したら、所有権移転後、約1786万円の負債を抱えることになる。
なお、裁判所は物件を評価する際、滞納金が物件評価額を上回り、マイナスになった場合、マイナスという値段を付けることはできず、結果、「1万円」ということで査定した。
もし、マイナスにしたら、買受人がお金をもらえることになり、競売の仕組みが成り立たなくなる。
このような物件は誰が買うのか?というと、競売専門で行っているプロである。通常、管理組合と滞納金の減額交渉を行うが、うまく減額できるとは限らず、裁判になるケースもある。
一般の方は、手を出したらいけない物件である。減額できるどうかわからない物件は、入札を避けるべきだろう。
3.最後に
これから競売物件を入札する方、または、検討している方は、入札前に必ず裁判所から公開されている「3点セット」を読むべきである。物件に滞納金があれば、必ず記載されている。
裁判所の執行官は、「3点セット」を作成する際、必ず物件評価に影響する事柄は記載する必要がある。もし、「3点セット」に評価額だけ記載され、滞納金があっても全く記載がなければ、落札した後が怖すぎて、誰も入札できない。
安い物にはカラクリがある。読者の皆さんも気を付けて頂きたい。
執筆者:ドクターK
【プロフィール】
「不動産セカンドオピニオンサービス合同会社」所属。競売コンサルタント。サラリーマン投資家。年に数十回の入札を行い、数件落札。競売をやりたい初心者向けに毎月競売セミナーを開催し、競売のノウハウを伝授。執筆活動も行い、著書「はじめての競売」に一部寄稿。