定期的に競売セミナーを開催し、日々、競売の相談を受けているドクターKである。今回、競売で公開されていた戸建の競売事例をご紹介する。
紹介する物件は持分の戸建てである。持分物件とは、建物または土地に関して、一部の権利しか得られない物件である。
そのため、落札者は物件を落札した場合、一部の権利しか得られていないため、すぐに転売も賃貸もすることができない。
転売、または、賃貸するために、残りの権利を持っている方と交渉する必要がある。もし交渉が難航すれば、裁判等の手続きが必要である。
ゆえに持分物件は非常にリスクが高く、一般の方が安易に落札してはいけない物件である。そのような物件をプロの不動産業者が落札し、どのような形で販売されたのかを紹介する。
1.物件概要
(1) 所在地
物件は南関東の市町村にある。この市町村はかなり山奥にあり、人口は3千人の小規模な市町村である。関東屈指の貯水量を誇るダムが建設されている。
物件の所在地付近は最寄りの駅までは10qぐらい離れている。自然豊かな地域である。
(2) 物件概要
物件は土地が203u、建物の延べ床面積が170u、築29年の3階建ての戸建である。日当たりは良好である。駐車場もあり、郊外に所在する地域なので、駐車場が必須だろう。
写真の外観は築29年を経過しているが、非常におしゃれな形の家であり、正直、築29年を経過しているとは思えない。

(3) 間取り、室内
間取りは以下であり、6LDKである。1階は、リビングキッチン、和室、浴室、洗面がある。2階は洋室が4部屋ある。3階は洋室が1部屋ある。増築という言葉があるので、一部は増築されている。

以下、室内の写真である。非常に綺麗に使用されていることがわかる。正直、築29年の戸建ての室内でここまで綺麗に使用されていることは珍しい。

2.物件詳細
(1) 関係者のコメント
裁判所の公開資料には、関係者のコメントが記載されている。
この陳述内容より、夫婦で住まれている。物件の持分は、5分の4が夫であり、5分の1が妻である。今回の競売物件の対象は5分の4のみであり、債務者は夫である。
落札しても、妻が所有している5分の1は取得できないため、落札後、妻と交渉が必要である。

(2) 物件評価の金額
裁判所から依頼された不動産鑑定士による競売の基準価格は以下である。
4,080,000円
上記の金額は、裁判所から依頼された不動産鑑定士によって、査定される。この金額は、一般流通市場の価格よりも安く設定される。理由は、この金額が一般流通市場よりも高いと誰も入札せず、競売自体が成り立たないためである。
3.落札結果
(1) 落札結果
落札金額は以下である。
3,311,000円
この物件の最低落札価格が、3,264,000円であり、ほぼ最低落札金額で落札されている。
(2) 落札後
落札した方は、その後、転売と賃貸の募集の両方を行っていた。残りの5分の1をどれくらいの金額で買い取りできたのか不明であるため、売却益や利回りが算出できないので記載しないが、マイナスにはなっていないと思われる。
以下、転売募集である。

以下、賃貸募集である。

4.最後に
この物件は、持分物件であり、落札しても、転売や賃貸の募集がすぐにできるわけではない。通常はプロの不動産業者が扱う物件である。
今回、落札後、競売の対象外であった5分の1を妻が所有していた。そのため、落札者は妻と交渉し、5分の1を買い取り、そのあと、転売、かつ、賃貸の募集を行っている。今回、非常に難しい物件ではあるが、ご参考に頂けたらと思う。
執筆者:ドクターK
【プロフィール】
「不動産セカンドオピニオンサービス合同会社」所属。競売コンサルタント。年に数十回の入札を行い、数件落札。競売をやりたい初心者向けに毎月競売セミナーを開催し、競売のノウハウを伝授。執筆活動も行い、著書「はじめての競売」に一部寄稿。