定期的に競売セミナーを開催し、日々、競売の相談を受けているドクターKである。今回、競売で公開されていたアパートの競売事例をご紹介する。
紹介する物件は、南関東の市町村にあるアパートである。裁判所から公開された資料では、6部屋のうち、2部屋が賃貸中であり、4部屋が空きである。
入居率が低いように思えるが、競売物件は、債務者が管理を怠り、賃貸募集まで対応できず、空室となる物件が多い。そのため、入居率が低いだけで、賃貸需要がないと判断するのではなく、その地域の賃貸需要や立地条件を考慮して、入札するかどうか判断頂きたい。
ちなみに、この物件付近の賃貸需要は、近くに複数の大学があり、最寄りの駅からも1q以内であり、賃貸需要は低くない。逆に良い方である。この物件を参考頂き、このような競売物件もあることを理解頂けたらと思う。
1.物件概要
(1) 所在地
物件は南関東の市町村にあり、この市町村は約40万人の大都市である。交通の便は比較的に良く、JRや私鉄があり、都内への通勤も可能である。
また、海に面し、サーフィンなどのマリンスポーツが盛んに行われている。市町村内には複数の大学があり、工場団地もあり、活気がある。物件は最寄りの駅から、約1q以内であり、一般住宅が立ち並ぶ住宅地域にある。
(2) 物件概要
物件は、土地が99u、建物の延べ床面積が101u、築29年の2階建てのアパートである。日当たりは目の前が道路であり、良好である。外壁は白とグレーのツートンカラーである。

(3) 間取り、室内
間取りは以下である。1階、2階とも同じ間取りであり、1K × 6である。各部屋にはロフトが付いている。一人暮らしの単身向きの間取りである。

以下、室内の写真である。少し汚れもあり、クリーニングをすれば、綺麗になると思われる。

2.物件詳細
(1) 賃貸契約の内容
裁判所の公開資料には賃貸契約の内容も記載され、以下、賃料である。裁判所の執行官が調査した時点の賃料は102号室が41,000円であり、201号室が35,000円である。

(2) 関係者のコメント
裁判所の公開資料には、関係者のコメントが記載されている。こちらのコメントを参考に、物件の良し悪しを判断し、リフォーム費用などの見積りに参考頂きたい。

(4) 物件評価の金額
裁判所から依頼された不動産鑑定士による競売の基準価格は以下である。
9,720,000円
上記の金額は、裁判所から依頼された不動産鑑定士によって、査定される。この金額は、一般流通市場の価格よりも安く設定される。理由は、この金額が一般流通市場よりも高いと誰も入札せず、競売自体が成り立たないためである。
3.落札結果
(1) 落札結果
落札金額は以下である。入札件数は17件、法人が落札している。
16,912,752円
(2) 利回り
利回りは、裁判所から公開された賃料が継続可能であり、空室の部屋の賃料を現在賃貸中の最低家賃の35,000円で仮置きすると、満室時の表面利回りは、14.8%である。
落札金額 16,912,752円
諸費用 500,000円(登録免許税や不動産取得税などの概算金額)
表面利回り 14.8%
4.最後に
今回、このような物件を入札する方は、ある程度不動産物件のノウハウがあり、リフォーム、募集や管理のノウハウがある方になるだろう。
また、この物件の入札件数は、17件であり、法人が落札している。法人は、落札後、リフォームし、入居者を付けて、利回りを低くして、販売する可能性がある。この近辺の一棟アパートの利回りは、8%〜10%ぐらいである。計算すれば、落札した法人がどの程度、利益を加算し、販売するのか?わかるだろう。
このような物件もあることをご理解頂き、ご参考頂ければと思う。
執筆者:ドクターK
【プロフィール】
「不動産セカンドオピニオンサービス合同会社」所属。競売コンサルタント。年に数十回の入札を行い、数件落札。競売をやりたい初心者向けに毎月競売セミナーを開催し、競売のノウハウを伝授。執筆活動も行い、著書「はじめての競売」に一部寄稿。