定期的に競売セミナーを開催し、日々、競売の相談を受けているドクターKである。今回、競売で公開されていた戸建の競売事例をご紹介する。
紹介する物件は、地方の戸建ての賃貸物件である。裁判所から公開された資料は既に賃貸中であり、落札後も賃貸継続できれば、すぐに家賃収入が得られる。
この物件のポイントは、通常の賃貸契約とは異なる。米軍の方に貸し出しているベース賃貸の契約である。
特徴は通常の賃料によりも非常に高い賃料が得られることである。この物件は賃料が18万円である。ベース賃貸を知らない方もいると思うので、日本人向け賃貸との一般的な違いは以下である。

このような物件も公開されるケースがあるので、ご参考に頂けたらと思う。
1.物件概要
(1) 所在地
物件の所在地は南関東の市町村であり、人口は約40万人の大規模な市町村にある。東京湾や相模湾に面し、いくつかの漁港が点在し、大学や多くの企業の研究機関もある。
主な特徴の一つに米軍基地があり、市の中心部はアメリカ風のお店が立ち並んでいる。特に「海軍カレー」は有名である。あと、元内閣総理大臣の出身地であり、今も人気を集めている。ここまで記載すると、概ね所在地がわかるだろう。
(2) 物件概要
物件は、土地面積が111.5u、建物の延べ床面積が79.4u、築23年の2階建ての木造戸建である。外観は水色の外壁であり、この海に面している街には、お似合いのカラーである。家の前には駐車場もある。

(3) 間取り、室内
間取りは以下である。3LDKであり、1階はリビングと浴室、トイレがある。2階は3つの洋室があり、トイレとクローゼット、物入がある。


2.物件詳細
(1) 賃貸契約の内容
裁判所の公開資料には賃貸契約の内容も記載され、以下、賃料である。
裁判所の執行官が調査した時点の賃料は180,000円である。近隣の家賃に比べると非常に高い賃料である。

(2) 関係者のコメント
裁判所の公開資料には、関係者のコメントが記載されている。南西のフェンスの境界について、気になるコメントがあるが、それ以外は特に問題となるコメントは見受けられない。
あと、入札するなら、管理会社が記載されているので、入札前に問合せして、賃貸状況を確認しても良いと思う。

(3) 物件評価の金額
裁判所から依頼された不動産鑑定士による競売の基準価格は以下である。
7,470,000円
上記の金額は、裁判所から依頼された不動産鑑定士によって、査定される。この金額は、一般流通市場の価格よりも安く設定される。理由は、この金額が一般流通市場よりも高いと誰も入札せず、競売自体が成り立たないためである。
3.落札結果
(1) 落札結果
落札金額は以下である。上記の基準価格よりも低い金額で落札されている。落札者が安く物件を入手できたことがわかる。落札した方は法人ではなく、個人である。そのため、賃貸運用を前提に入札したのだろう。
11,310,000円
(2) 利回り
表面利回りは、裁判所から公開された賃料が継続可能であると、18.6%である。
家賃 180,000円/月
落札金額 11,310,000円
諸費用 300,000円
(裁判所へ代金納付する際の諸費用(登録免許税など))
表面利回り 18.6%
4.最後に
この物件は賃貸中であり、裁判所から公開された資料を見る限り、落札しても賃貸継続の可能性が高く、すぐに家賃収入が得られる。ここがポイントである。
通常、賃貸中でなければ、リフォームや賃貸募集が必要であり、落札金額以外に費用と時間を要する。不動産投資を始めようとしている方がいれば、今回のような物件も選択の範囲に考えて頂きたい。しかし、裁判所の手続きや債務者との交渉などがあり、初心者が一人でやるとかなり大変である。
ちなみに、私の周りには競売物件が初めての不動産投資物件の方もいて、不可能ではない。そのような方は、競売関係に詳しい方と連携し、相談しながら、物事を進めることが一番良いだろう。
執筆者:ドクターK
【プロフィール】
「株式会社ココス」所属。競売コンサルタント。年に数十回の入札を行い、数件落札。競売をやりたい初心者向けに毎月競売セミナーを開催し、競売のノウハウを伝授。執筆活動も行い、著書「はじめての競売」に一部寄稿。