定期的に競売セミナーを開催し、日々、競売の相談を受けているドクターKである。今回、競売で公開されていた店舗物件の競売事例をご紹介する。
紹介する物件は九州地方にある築31年の店舗物件である。裁判所から公開された資料では賃貸中であり、落札後も賃貸継続できるなら、直ぐに家賃収入が得られる「美味しい」物件である。
もし、読者の方が首都圏に住んでおり、地方の物件だと賃貸ニーズを気にすると思う。本物件は、最寄りの駅から徒歩圏内にあり、商店街の中に位置し、周りの建物もお店を運営しているため、比較的に賃貸ニーズはある。
裁判所から提示された基準価は260万円であり、非常に低く価格が設定されていた。そのため、小額投資、高利回り、落札後に家賃収入が得られる初心者向けの競売物件である。
読者の中で競売をやってみようという方がいたら、このような物件からチャレンジするのがお勧めである。今回、紹介する物件を参考に、このような競売物件もあるということをご理解頂けたらと思う。
1.物件概要
(1) 所在地
物件の市町村は九州地区に位置し、人口は約12万人の都市である。戦前から工業都市と言われ、陸上部で有名な企業の発祥地であり、同グループの工場が点在している。
(2) 物件概要
物件は、土地が102u、建物の延べ床面積が129u、築31 年の2階建てである。外壁は白色である。建物は商店街に位置し、目の前は比較的に交通量が多い大通りである。
隣接の建物は複数の店舗が入っているビル等が建ち並んでいる。最寄りの駅は県内の中でも比較的に大きい駅であり、本物件は最寄りの駅から徒歩10分ぐらいの場所に位置する。

(3) 間取り、室内
間取りは2階建ての建物である。1階には2店舗、2階は1店舗になっている。各階の床面積は約65平米である。2階の店舗は元々2つに分かれていたが、現在は1店舗になっている。

以下、室内の写真である。写真の状況より、お店の運営は行われている。落札後、そのまま運営頂ければ、家賃収入が得らえる可能性が高いだろう。

2.物件詳細
(1) 賃貸契約の内容
裁判所の公開資料は賃貸契約の内容も記載され、以下、賃料である。101号室は、100,000円である。平成13年から賃貸を開始し、約20年以上住んでいるため、直ぐに退室する可能性は低いだろう。102号室は空室である。201・202号室は、「関係人の陳述等」に記載とのことであり、以降で説明する。

(2) 関係者のコメント
裁判所の公開資料には、通常、債務者や所有者などの関係者のコメントが記載されている。以下、記載内容である。201・202号室は、債務者と賃借人が古くからの付き合いであり、無償で賃貸している。そのため、落札後、賃貸を継続するなら、家賃の交渉が必要である。

(3) 執行官のコメント
裁判所の公開資料は債務者などの関係者のコメント以外に、裁判所の執行官のコメントも記載されている。土地の境界について、南側が不明確との記載がある。落札後、賃貸継続で物件を保有し、隣人とトラブルになっていないなら特に問題はないだろう。転売なら測量等が必要になるケースもある。

(4) 物件評価の金額
裁判所から依頼された不動産鑑定士による競売の基準価格は以下である。
2,600,000円
上記の金額は裁判所から依頼された不動産鑑定士によって査定される。この金額は一般流通市場の価格よりも安く設定される。理由は、この金額が一般流通市場よりも高いと誰も入札せず、競売自体が成り立たないためである。
3.落札結果
(1) 落札結果
落札金額は以下である。入札件数は3件であり、法人が落札している。
5,010,000円
(2) 利回り
利回りについて、101号室の賃料10万円と201・202号室の賃借人から賃料5万円を得られると仮定して計15万円の場合、その賃料に102号室の賃料5万円を加えて計20万円の賃料の場合の2つパータンで計算する。
1.賃料15万円の場合
家賃 150,000円/月
落札金額 5,010,000円
諸費用 300,000円(裁判所へ代金納付する際の諸費用(登録免許税など))
利回り 33.8%
2.賃料20万円の場合
家賃 200,000円/月
落札金額 5,010,000円
諸費用 300,000円(裁判所へ代金納付する際の諸費用(登録免許税など))
利回り 45.1%
4.最後に
九州地区にある築31年の店舗物件で利回り33.8%の物件を紹介した。落札後、2階の賃借人と家賃の交渉が必要になり、無償で賃貸を継続することはできない。不動産投資が初めてであり、家賃交渉に対して、どのように交渉すれば良いかわからないなら、この物件の近くの不動産会社に協力を頂き、建物の管理をお願いするとともに、家賃交渉もお願いしても良いだろう。このような物件もあることをご参考頂けたらと思う。
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