不動産投資家はさまざまな物件に投資する。区分マンション、一棟マンション、一棟アパート、戸建て住宅、商業店舗などで、しかも新築からボロ戸建てと築年数も幅広い。
新築ではなかなか利回りが出にくいものの入居者が付きやすい、高めの家賃設定がしやすい、耐用年数などの面で安心感を購入する側面が強い。その反面、築古の格安物件は入居者や家賃設定が新築ほど期待できないものの高利回りに魅力を感じて運用している。
築古物件を購入して、それを取り壊して新たにマンションやアパートを建てる例も少なくない。特に東京23区内では、新たに魅力的な土地が出てくるケースが少ないことから、既に好立地にある物件を地上げして新築を建てる。
好立地には住宅や店舗などが建っているのが普通だ。投資用物件を開発・販売する会社は、こうした手法で賃貸マンションを開発・販売している。
都内の不動産会社A社は先日、東京都江戸川区で古民家を購入した。敷地30坪弱にある古民家を解体して賃貸マンションの開発を計画している。最寄り駅から5~6分ほどの立地で周辺に商店街や商業施設が充実していたことで独身や夫婦二人などカップルの需要が見込めると考えてのことだ。
その古民家の所有者は、都内の別の城西地区に住んでおり、1カ月に1~2回ほど見に来て植栽の手入れをしたり、雨戸を開けて家の空気の入れ替えをしたり、周囲に迷惑のかかるような問題空き家にならないよう努めていたというが、定年が5年後に迫り、老後人生を考えるようになって老後の資金等に充てるために売却することを決めた。
解体費用を含めて古民家を購入
ただ、老後人生のためだけでなく、親の介護費用も必要なため、なるべく高値での売り出しを希望。古民家代は約8000万円、これに解体費用が加わり、資材価格も値上がりしている。地上4~5階建ての賃貸マンションを建てるとすれば、投資家に販売するときに、その販売価格は3.5億円以上が想定される。
解体費用は売り主が持ち更地状態で引き渡されることも多いが、なぜ解体費用も引き受けたのか。この土地の購入希望者が他に3社ほどいたこともあり、売り主の要望に応える形となった。
解体費用をどれだけ抑えられるかは投資のポイントとなる。この手の相場情報は、不動産価格の相場情報とは違って一般的に目にすることはが少ないが、建物の規模や構造によって違ってくることは容易に察することはできる。建物の解体と廃棄物処理がコアのコストである。
建物が建っている地中に埋設物が残っていたり、敷地内に浄化槽にある、木が植えてある、建材にアスベストが使われている、などの特段の処置が別途必要となれば解体関連費用が増加する。
建物が密集している地域なのか、そうでないのかも影響する。狭くて重機が搬入できずに人手をが多く要する場合などはコストがかさむ。東京なのか、大阪なのか、名古屋なのか、といった地域性によっても価格が変動する。
数社から見積もり依頼で業者を決める
一般的な木造住宅の解体では100万~200万円かかるとされるが、相場情報が一般に少ないだけに、解体工事の一括見積サービスを運営するクラッソーネ(愛知県名古屋市)は複数の事業者から見積もりを依頼することが重要だとの視点で事業展開している。
クラッソーネのサービスを使い解体事業者を探して依頼した個人投資家は、東京・墨田で延床面積が約30坪の木造2階建て住宅の解体費用は200万円弱だったという。
これが高いのか、相場価格なのか、お値打ち価格なのかを筆者として判断できないが、利用者した当人は「相場よりも1割ほど安い」と説明を受けている。これが鉄骨造であれば15%前後、鉄筋コンクリート造になると3割以上のコスト高になるという。
ちなみに縁起の良い話ではないが、不動産仲介会社によると、建物が火災に遭い全焼して炭状態の柱が残る状態での解体費用は手間が省けると思いきや、「むしろ焼け残った建物の解体費用は大幅に増加する」と教えてくれた。
取り壊すのにもコストがかかるが、資源高の影響で各種エネルギー価格が上がっていることで解体業界も他業界と同様にコストプッシュの波が押し寄せている。
便乗値上げにも目を光らせる必要があり、適正費用で解体するためには、数社から見積もりを取り寄せてサービスの内容を聞いて判断することが重要だ。
また、固定資産税の課税判断は1月1日時点でなされる。このため、解体工事はそれ以降に行うことが欠かせない。1月1日時点で更地となっていれば固定資産税が6分の1になっている特例が外れて税額が急増することを避けるためだ。
不動産投資家にとっては、解体に関する知識をためておくことも無駄ではなさそうだ。
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健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))