不動産市場は長期間にわたって低金利という恩恵を受けてきた。実際に自分で住むための家を買うときや、人に貸す賃貸物件を買うときに資金調達しやすい環境が続いてきた。
しかし、アメリカやヨーロッパでは、インフレ経済が深刻になり、金利政策の軸足はインフレ抑制に向けて利上げに踏み切った。このような中で、日本だけ低い金利政策を続けていることで日米金利差により円安が急速に進んでいる。
来年に日銀の総裁が新しく変わることを機にゼロ金利が解除するのではないかとの見方も報道されている。
これからの不動産投資の世界で成功するためには、さまざまな要因を踏まえての賃貸経営が欠かせず舵取りは難しさを増している。人口減少の本格化により、空き家の数は820万戸とされるが、すでに1000万戸を優に超えていると思われる。
コロナ禍が賃貸住宅の世界観も変えた。「都心の物件で入居者が決まりにくい」(渋谷区内の不動産会社)といった声はあちらこちらで聞かれ、東京都内でも空室が多くなっている。
コロナで将来不安の増加、不動産投資も増加
コロナ禍で将来不安が増した。どんなに大手の会社であっても安心感は得られない。特にコロナ禍では、航空会社や旅行会社、ホテル・旅館、飲食・サービスに従事する人はそれを実感している。
外国人観光客の門戸をコロナ前と同じように開放し、アフターコロナに向けて動き出そうとしているが、そうした業種・業態を離れた人が戻ってきていないことで慢性的な人手不足に陥っている。「コロナの直撃により経営が行き詰まってリストラに会ったことで、今は他業界に転職して仕事をしている。ホテル業界に戻ることは考えていない」。
こうした社会不安は、証券口座数の新規開設が急増しているという形で映し出されている。不動産投資家が増加したのも同じような理由だ。終身雇用制度が崩壊し、年金制度も当てにならない、特に若年世代が自ら資産形成しなければと動く。
とはいえ、これから不動産投資することは容易ではない。家余りの中で、どの場所でどのような物件を購入するかなどの判断は厳しさを増している。個々では、判断しづらい。
そこで不動産会社がより良いパートナーとなり得るのかがカギの一つだが、大手の会社だから安心、小さな聞いたことがない会社だから不安、ということは一概に言えない。
会社のブランドではなく、個々の営業マンの力量が左右するのが不動産業界である。それが優良な資産形成に直結する。どうすれば、より良い営業マンに出会えるのか。実際に会うことでしかわからない。
自ら不動産投資している営業マンを探せ
年間の家賃収入が3000万円超というメガ大家のA氏に営業マンの良しあしについて聞いてみると、
「まず結論を急がない。決断を急かさない、煽らない、分からないことは率直に認めて知ったかぶりをせずに調べる。返信や折り返しの電話が迅速である」
など基本的なところから営業マンを観察すると良いようだ。
結論を急ぐタイプは、自分の営業成績のことばかり考えて顧客の資産形成については考えていない。
「この物件を購入したいという人は他からも連絡をいただいているので、早く決めないと売れてしまいますよ」、こうした営業トークに出会った個人投資家は多いと思われる。
高く売りたい売り主ベースにならず、買い主の意向を汲み取れるバランス感覚も必要だ。また、実際に不動産の仲介営業マンは投資用物件の経験が豊富な人が意外に少ない。
これら加えてメガ大家A氏の評価が最も高くなるのが、営業マン自らが不動産投資をしている営業マンだ。
自分の経験上からの判断を顧客にアドバイスとして伝えられると思われるからだ。複数の運用物件を持っているとなお評価が高い。「ただ、不動産投資歴がどの程度か、どのような物件をどのくらい保有しているのか、といったキャリアによって力量も異なるため、そのときは詳しく聞いていく」と話す。
情報武装をして営業マンと会う経験を積む
いずれにしろ、質の悪い営業マンに引っかからないようにするには、さまざまな営業マンに話を聞いてみないと分からないことも多い。
その営業マンに会う経験、不動産投資のキャリアを積んでいくことが営業マンの良し悪しを見分ける能力を養うことにつながる。その能力が付く前に痛い目に合わずに済むようにするためには、不動産投資に関するさまざまなジャンルの本を読み込んで情報武装をしておくことだ。
メガ大家A氏は、「私は20冊ほど読み込んだが、流されずに自分の投資スタイル、投資物件の軸を固めておくこともポイントだと思っている。
その軸としては、種別(区分・一棟・戸建)、エリア(首都圏・地方)、築年数(築浅・築古)、利回り、積算重視か利回り重視か、などになる」とアドバイスする。
新たな不動産投資を考えているサラリーマンなど個人投資家予備軍には、不動産営業マンを「コワ〜イ人たちばかり…」との印象を持つ人がまだいるかと思うが、周囲に不動産投資をしている知り合いなどを通じていろいろと話し聞いてみたり、セミナーに参加してみて様子を見るのも一考であろう。昔のような不動産屋とは違う一面が見えてくるかもしれない。
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健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))