土地勘のないまちでの投資ではそのまちの将来性、居住者層などを考える必要がある。そのための方法としてはまず、人口動態のような公的な統計を参照にするというものがある。
もうひとつ、お勧めしたいのは現地にあるもの、いる人を観察するというもの。以下、どのようなものから、何を読み取るべきかをご紹介しよう。
■ 公共施設:集客装置として重要
賃貸住宅で近隣に欲しいものには2つの理由がある。ひとつにはそれがあることが売りになる、物件概要などに書けるということ。もうひとつは地域にとってその場所が重要である、将来性がある場所であることが分かることである。

そのいずれもの理由にとって重要なのが公共施設である。特に区役所、市役所などといったその土地の行政の中心があるという場合には非常に大きな意味を持つ。
住む人にとっては様々な手続き等に便利であることはもちろん、その自治体の中での中心地であることから来街者等が多く、賑わいが維持されていくことが期待できるからである。

利用者にとって役立つという点からすると、公共施設であっても法務局のような一般の人にはあまり縁のない施設はいまひとつ。やはり、行政関係では市区庁舎、派出所などが望ましく、ファミリー層相手に考えるなら保健所も良い。
図書館や体育館、文化会館などは設備の充実度にもよるが、安価に生活を楽しめるとして幅広い層にアピールできる。周囲に何があるか、現地に行く前に地図、自治体ホームページの施設案内をチェックしておくと良いだろう。
■ 商店街:まちの新旧、居住層をチェック

商店街からは様々な情報が読み取れる。まず、もっとも分かりやすいのが新旧である。
業種によっては高度経済成長期以降、新規開業がほとんどないものがある。そうした業種がある商店街は高度経済成長期以前から住宅街として成立していたことが分かるのだ。

では、どのような業種か。食料品ではおでん種、味噌、豆腐、茶舗、煎餅店や和菓子店、果物店などが挙げられる。喫茶店も古いまちに多く、これがカフェになると若い人が多いまちになる。
どちらにもあるが、品揃えで判断すべきなのがパン屋や花屋、酒屋などだ。
近くに霊園があるわけではないのに、仏花や樒(しきみ)が目立つ花屋があるなら、近隣には高齢者が多いと思われ、山野草などが置かれているようなら若い人が多く、かつインテリアにお金を掛けられる層が居住している可能性がある。
酒屋ならビール、日本酒メインか、ワインなどの酒があるか、いくらくらいの商品が置かれているかを見れば居住者の懐具合もほの見えるというものである。
特定の業種があることからまちの所得層が推察できる業種もある。分かりやすいのは呉服や仕立て屋など。どちらも街中では減少している業種だが、そうした業種が残っているまちには余裕のある層が居住していることが想定できる。
■ チェーン店:有無と位置がポイント
コンビニエンスストアやスーパー、ファストフード店などの場合には有無と位置がポイントになる。
チェーン展開をしている会社の場合、売り上げが見込めそうにない場所、企業イメージに合わないまちには出店しないと考えると、チェーン店の有無はまちが顧客としてどの程度見込まれているかを現す指標になる。
もちろん、多種類が進出しているほど、マーケットとしては有望と考えられているわけで、全くないまちよりも来街者、居住者も多いはず。商品にもよるが、所得層もある程度見込まれている。
位置については商店街との関係で考えたい。商店街は基本、まちでは人が集まりやすい立地にあるが、その中でベストな場所をチェーン店が押さえているとしたら、商店街は衰退に向かっており、いずれ消滅する可能性がある。
まちの将来という観点で考えると、商店街とスーパーその他のチェーン店が競合しているほうが住む人にとってはメリットがあり、選ばれるまちといえる。
■ 公園:売りではあるが、帰路以外がベター

公園、特にある程度知られた公園が近くにあれば売りになる。
だが、注意したいのは昼間は人が集まる場でも夜間は人気がなく、寂しい場所になる可能性がある。それを考えると帰路にあるよりは、行こうと思えばすぐに行けるほどの距離にある程度が良いだろう。
また、場所によっては夜間、人が集まって騒ぐなどの危険もあり、そのあたりは現地で聞いて見る必要がある。
もうひとつ、公園では来ている人たちを観察してみたい。
週末などで家族連れが集まっている場合には様子を見ていれば、地域の人たちの素顔が見られる。自分の物件が対象としている人たちに向いた雰囲気のまちかどうか、それを考えてみることである。
健美家編集部(協力:中川寛子)