優良物件は都心部以外にも点在
注目すべきは“田舎の都会”
いざ不動産投資を始める際、安定的に家賃収入を得ようとしたら、立地や建物には気を配るはず。王道を挙げるなら、首都圏で最寄りの駅からほど近いアパートやマンションをイメージするのではないだろうか。
人口が多くて賃貸ニーズのあるエリアを絞り込んで、ファミリーが多いなら間取りの広い物件、単身者が多いならワンルームといった具合に物件を取得していくに違いない。
こういった戦略は成功の確度が高く、多くの不動産オーナーが思い描く投資の理想形と言えるだろう。とはいえ、都心部の物件は価格が高く、ライバルもたくさん。融資や客付けに苦労することは珍しくない。もっと、異なる視点でうまく方法はないだろうか。

そんな疑問に対して「ありますよ」と答えるのが、前回、不動産投資の極意についてお話を聞いた(9月18日掲載) 、 IT会社勤務でサラリーマン大家の、富沢ウメ男さん(通称ウメさん)。元お笑い芸人で不動産会社の営業マンを経て、不動産投資家になったという異色の経歴の持ち主だ。

現在は首都圏を中心に100戸以上の格安物件を持ち、年間の家賃収入は5000万円超、キャッシュフローは約3000万円という、驚異の高パフォーマンスを実現している。
そんなウメさんは、一体どういった物件を所有しているのだろうか。さっそく尋ねてみることに……。
――ウメさんは東京や神奈川に多くの物件をお持ちだと聞いています。そう聞くと都内であれば23区内を考えますが、どうなのでしょうか。
ウメさん:もちろん、23区内にいくつも物件は持っています。港区の白金や麻布といった、いわゆる高級住宅地のマンションは、まさにそれ。とはいえ、築年数が古かったり諸般の事情があったりするので相場より安いのが特徴です。こういった物件をリフォームして貸し出しています。
それこそ麻布の1棟マンションなんて外観はボロボロでひどい有様ですが(笑)、中はしっかりと修繕。おそらく、大使館関係者など外国人が住んでいます。こういったエリアの入居者は属性が高いので家賃の延滞や近隣トラブルはほぼなく、手間をかけずに自主管理できますよ。
――都心部以外は、いかがですか。
ウメさん:神奈川県なら横浜、藤沢、平塚といったエリアだけではなく、横須賀や三崎にも物件があります。掘り出し物が多く、横須賀なら2戸のアパートを450万円で買い、利回りは19%、地代月5000円の借地戸建ては利回り32%、現金250万円で買った戸建ても利回りは24%、同じく現金150万円で買った区分は利回り30%です。ただグロス金額が低いのでこれくらないと面白みもないですけどね。
――利回り30%?それはすごい! とはいえ、横須賀といえば人口は減少傾向で賃貸経営をするには厳しいエリアだと思います。いくら物件価格が安いとはいえ、不安があるのでは。
ウメさん:そういう見方があることは事実です。ただし、横須賀にはベース(米軍横須賀基地)があり、そこに勤務する方たちの賃貸ニーズがあります。
貸すためには一定の基準を満たす必要がありますが、クリアすれば問題なし。以前は格安物件を買い600万円かけて直したうえで貸し出し、最終的には1600万円で売却できました。
いずれにしろ、ベース物件は安定的に家賃収入をもたらす優良物件であることに間違いありません。このように、都心から離れていても地域特有の事情で入居者に困らないエリアもあるということです。私はこういった場所を“田舎の都会”と呼んでいます(笑)。

田舎の都会にある「蔵」が
商業店舗として大盛況!
――都心部に比べて規模は小さいものの、賃貸ニーズがあるところを見つけ出せば、うまくいくケースもあるのですね。
ウメさん:それと、横須賀や三崎港には居住用物件だけではなく、使い道のなくなった蔵や倉庫が売りに出されていることもあります。じつは、これがねらい目なのです!
――蔵なんて趣があって良さそうですが、借り手はいるのでしょうか。
ウメさん:ええ。例えば蔵であれば、店舗として使いたい人がいるのです。私が横須賀で買ったものは、再建築不可ですが隣にある80坪の土地と100平米の平屋とセットになって20万円でした。それを買って蔵の扉に「挑戦者求む!」とチラシを貼って放置していたら、結構問い合わせがありまして(笑)。
――20万円で不動産を購入できるなんて!!どういった方から声がかかったのですか。
ウメさん:陶芸家の方が作品を置きたいとか、飲食店にしたいとか、もっとも多いのは貸スペースでした。そこは最終的にカフェの店舗として貸しました。
内装などはお任せで、私からの持ち出しはありません。それでいて、こういった場所に蔵を使ったカフェがあるとなれば話題になりますからお店も繁盛しているようで、オーナーの私としても安心です。
他方、三崎港で買った蔵は、テナント側が2000万円かけてリフォームをかけ、人気カフェバーとして営業しています。こちらは物件取得費数百万円に対して家賃は月11万円ですから、すぐに元は取れました。もちろん、そのために用途を限定しないで貸す、内装や設備は相手に任せ、退去時は原状復帰を求めないなど、いくつはポイントを押さえる必要はあります。

――なるほど。両者にとってメリットがある条件で契約を結ぶこともポイントと言えそうです。
ウメさん:倉庫にしても、田舎なので売り出し価格は20〜100万円。田舎だと相続したものの土地や建物を持て余している方も少なからずいて、格安やタダで引き取ってほしいニーズもあります。それを買っておき、借りたい人を地道に待ち、見つかればそれなりの家賃で貸せばいいのです。元が安いだけ高収益物件に生まれ変わります。それと倉庫を持っていると、自己利用で他の事業にも非常に役立ちますよ。

――低価格で買えるなら、ある程度リスクを負うこともできそうです。格安の蔵がお宝物件になるとは、魅力的な話です。思わぬ活用法をお聞きできました。ありがとうございます。
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健美家編集部(協力:大正谷成晴)