融資が厳しく、少額な区分や戸建に注目が集まる今、目を向けたいのが団地である。9年前に自宅用に団地を購入してから団地の魅力を知った団地生活デザインの山本誠さん。計8戸の団地を購入してきた。団地は、安く購入できるため、ポイントを押さえたリフォームや客付けを行うことで高い利回りを出すことができる。そんな知られざる団地投資の実態について聞いた。
●首都圏で3DKが300万円以下で購入可能
一般的な不動産サイトで検索
東京や埼玉、千葉の団地のなかには、3DKの広さがあっても、300万円程度のお手頃価格で入手できるものが少なくない。広さは 46 ㎡から 70 ㎡以上のものもある。どこで安い団地を探すことができるのだろうか?
「一般的な不動産サイトで団地が売られています。中古マンションのなかに団地が含まれ、安い順に並びかえると見つけやすいですね。団地の場合、エレベーターが義務づけられない5階建てが多く、安く売りに出ているものの多くは5階です」
埼玉県の入間市や狭山市の団地に目を付けた山本さん。近くに畑を借りて野菜を育てるなど、豊かな自然に囲まれて暮らすことができるのも大きな魅力だ。最初に購入したのは1974年築(購入当時は築36年)、5階の3DKで、350万円だった。
その後も3LDKを190万円で購入するなど、9年間で8戸購入。団地のNPOや管理組合の仕事をするうちに、団地の住民から、売買や活用の相談をされることも増えてきた。
「団地の住民に話を聞いていると、団地を売りたいけれど、どこに相談しにいっていいか分からないという人が多い。不動産屋さんよりも先に、そんな情報を川上でもらえるようになると市場に出る前に安く買うことができます」
【これまでに山本さんが購入した団地一覧】
2010.11 自宅3DK 350万
2012.07 投資用3LDK 190万 →シェアハウス
2015.07投資用3DK 300万 →ファミリー向け賃貸
2016.08投資用3LDK 240万 →ファミリー向け賃貸
2017.12投資用3DK リノベ転貸 →ファミリー向け賃貸
2018.04投資用3LDK 400万 →シェアハウス
2019.05投資用3DK 100万以下 →モデルルーム に
2019.06投資用3DK 150万 →リノベ中
●融資を頼らず、ほぼ現金買い。
オリジナリティのある空間にセルフリフォーム
安い団地の多くは、駅から離れており、築 30 年以上の古いものが多い。中には、100万円以下で購入できた物件もあるが、だいたい300万円程度で購入している。山本さんが融資を使ったのは1戸だけ。公庫の創業支援向けの融資を利用したが、それ以外は、お金を貯めては現金で購入する。
購入後はセルフリフォームをする。もともとバイクのメカニックをしていたため、DIYが得意だ。もちろん、水道やガスなどの工事は専門業者に依頼する。電気工事に関しては、最初は業者に依頼していたが、今は第二種電気工事士の資格を取得したため、自ら行う。3カ月ほどかけて床を貼ったり、システムキッチンを自作するなどして、オリジナリティのある部屋に仕上げる。
「リフォームで力を入れるのは、目を引く場所であるキッチン。イケアやホームセンターで、1.5万円ぐらいの陶器のシンクや天板を購入してきて、収納スペースを作るなどして、使い勝手のいいキッチンを自作します。リフォームは100万円以下で収めるようにしています」
●最初は客付に苦労するも、
入居者の特徴を理解してから常に満室に
気になるのは、団地の場合、客付に苦労するのではないかということだ。
「最初は不動産屋さんに仲介を依頼しようと思ったのですが、家賃が安く、駅から遠くて古いなどスペックが悪いため、ホームページや物件のブログを作るなどして、自力で埋めました。シェアハウスは3戸埋めるのに1年ほどかかかりました」
入居者の特徴は、30~40代の社会人で、団地の近くに務めている人や、フリーランスの人が多い。団地名で検索している人が一定数おり、彼らの多くがインターネットで部屋を探しているため、インターネットに絞って客付を行うことに。
「主に使っているのは、地元の掲示板ジモティやシェアハウスのポータルサイトであるコリッシュ。シェアハウスの場合、私が所有する団地がある入間市や狭山市では、数が少ないことから、問い合わせが多く、空室がでるとすぐに埋まるようになってきました。シェアハウス以外は、ファミリー向け賃貸にしています。狭山や入間に住みたいファミリーは多く、団地の雰囲気が好きな人が必ずいるので、そんな人に、自分の物件が刺さればいいと思っています」
1戸あたり、ファミリー向け賃貸なら6~7.5万円。シェアハウスの場合、9~11万円の家賃が確保できている。
●利回り37%。稼ぐ団地は、とんがった魅力があること
建物の管理が行き届いていること
上記の間取りの団地の場合、400万円で購入した3LDKで、リフォームに100万円、シェアハウスにして家賃11万円入ってくる。単純計算して、利回りは26%。ちなみに、一番、利回りが高いものは、190万円で買った団地で、リフォームに100万円かけ、月9万円で貸しているもので、利回りは37%である。購入金額が安く、リフォームも安く抑えることで、高い利回りを確保することが可能だ。
最後に、稼ぐ団地の探し方を聞いた。
「駅から徒歩何分とか築年数とか、スペックは無視! 実際にやってみると、そんなの関係なく、入居者は見つかります。大事なのは、どこか1つ、とんがった魅力があること。たとえば新狭山ハイツという団地なら、田舎っぷりがたまらない魅力。そんな環境が好きな人に、いつかたどりつけます」
山本さんが手掛けた部屋に住んで、気に入って購入したいという人もいる。そんな人に売却してもいいと考えている。
「100年続く団地を作ることをモットーに、団地を再生しています。あまり売りたくはないのですが、出口戦略という点では、賃貸で住んで気に入った人に売る方法もあります。団地を購入するうえで、注意すべきは管理面。外壁がボロボロにはがれていないか、きちんと修繕されているかどうかはよくチェックすべき。修繕積立金と管理費が極端に安かったり、それぞれの割合がおかしなケースも注意したほうがいい」
今後、団地も、団地に住む人も高齢化が進み、空き部屋が増えていくことが予想される。しかし、アイデア次第で、このような高利回り物件となる可能性がある。
健美家編集部(協力:高橋洋子)