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“不動産売買のババ抜き”でジョーカーを引かないために必要な中古物件購入前のアスベスト調査

収益物件購入・売却/物件選び ニュース

2023/05/21 配信

「調査でアスベストの使用されている建物だということが明らかになり、1棟分丸ごと除去しようとすると億を超える費用が発生する場合もあります」。こう語るのは、アスベスト調査を手がけるアスマップ(東京都江東区)の南出高志氏だ。

アスベストとは天然鉱物の繊維状の総称で髪の毛の5000分の1と非常に細く、目に見えづらい。それを混ぜ合わせた建材を製品化し、1950年ごろから利用されていた。

建物の内部で見られがちな吹き付けられたアスベスト
建物の内部で見られがちな吹き付けられたアスベスト

耐熱、耐火、防湿、伸縮性、吸音などに優れる上に材料費が安いため、高度成長期に一気に広まった。特に鉄骨造やS R C造などで耐火被覆材として積極的に採用されてきたものが非常に危険だという。

RC、S R C造の屋根やエントランス等の天井でも、“一見はただの塗材と思われるが実は危険”なものが使用されている場合もある。

固められたアスベストが経年劣化や解体などで飛散すると、マスク越しでも人が吸い込んでしまう可能性がある。肺に突き刺されば、20~30年後に肺がんを引き起こしてしまう恐れがあるのだ。

アスベストの危険性は作業レベルごとに分けられており、レベル1、レベル2は飛散性が高い。レベル3は飛散性が低く、「世の中でアスベストが使用されている建物の約97%がレベル3で、手を加えなければそのまま生活していても問題はない」と南出氏は話す。

調査義務は「解体・改修工事の際」であることが落とし穴

2021年4月からはアスベスト関連法令の一部が改正され、元請会社と自主施工者にアスベスト調査の実施と報告が義務化された。2006年9月1日以降に着工した建物はアスベスト調査を実施しなければならなかったため、対象となるのはそれ以前までに着工した建物の解体・改修工事の際だ。

建材から一部をサンプリングするのみでアスベスト調査は可能なので、建物の大きさに関係なく、かかる調査費用は20~30万円程度だ(レベル1、2のみの調査の場合)。

レベル2までのアスベストが使用されていないことが分かれば不動産取引後に大きな影響はないが、使われていることが分かれば、解体・改修の際に除去する工事が必要になる。

一棟分の場合、除去の費用は冒頭でも紹介した通り、億を超える金額になることが珍しくない。特別管理産業廃棄費用が発生する上に、周囲に飛散しないように対象部分を完全に隔離養生した上で行うなどの細やかな作業が必要になるためだ。

調査・報告の義務はあくまで建物の解体・改修工事の際で、売買の際の調査は必要になっていない。実は、ここに不動産投資家を罠にはめる落とし穴がある。

この事実の裏で既に始まっているかもしれないことが“不動産売買のババ抜き“だ。

アスベストの使用が判明した上で解体・改修を行うには除去作業が伴う。一棟丸ごとなら億単位の費用が発生する。

室内のリノベーションを行う場合は、改修前に㎡あたり4万円~5万円の除去工事が追加で必要になる。1室のアスベスト除去作業だけでも2ヶ月ほどかかり、当然その間は入居者を獲得できない。

持っていればいつかは法外な費用がかかってしまうなら、売ってしまう方が楽だ。すると、悪意のある所有者は調査をせず何も知らないフリをして売り抜けようとするかもしれないのだ。

購入を決める前に調査は必須

そのため、まず着工日が2006年9月1日以前の建物の売買を行う場合は、アスベストの調査を行なっているかを必ず確認する必要がある。

売主が「していない」「しない」と答えた場合は、購入希望者側が負担してでも調査をしてもらった方がいいだろう。調査を拒否されたら取引はしなければいい。調査をしてレベル2以上のアスベストが使われていなければそのまま取引を続行できる。使われていた場合は取引をやめるか、除去費用がかかることを踏まえた値下げ交渉が可能になるかもしれない。

「最近は相続予定の建物にアスベストが使われているかどうかを調査し、レベル2以上のアスベストが使われていた場合は相続を放棄するという方の依頼もあった」と南出氏は話す。

一度アスベストを含有する建物を所有してしまったら、オーナーは管理の責任が生じる。どちらにせよ、不動産を購入する際はアスベスト調査を行うことが資産防衛につながるのだ。

取材・文:土田絵理(つちだえり)

土田絵理

■ 主な経歴

取材記者、クリエイター、アーティストなど様々な肩書きを持つ。
アメリカ・ニューヨークでの広告営業経験をきっかけにライター業を開始。投資家向け(IR)資料作成業務や不動産専門の新聞社でのデスク経験等を経てフリーの取材記者へ転身。不動産業界の取材数が多く、業界に太いパイプを持つ。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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