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息子がまさかの夜逃げ?母親である連帯保証人は賃貸契約を解除できる?できない?

賃貸経営/トラブル ニュース

2019/02/21 配信

先日若い子の夜逃げの案件を受託した。賃借人は21歳の専門学生の男の子。富山に住む母親が、連帯保証人だった。賃借人はかれこれ半年ほど家賃を払わず、現地に行っても会えない。

ポストの郵便物は溜まり、ドアノブの埃もびっしり付いている。長い間、ドアから誰も出入りしていないのだろう。状況からみて、夜逃げの可能性が高かった。

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本人の携帯電話はすでに使われておらず、母親が住む自宅に電話しても、呼び鈴鳴るだけで誰も出ない。留守番電話にメッセージも残せなかったので、仕方なく母親には連絡くれるよう手紙を送り、明け渡しの訴訟手続きを進めていくしかなかった。

連帯保証人は賃貸借契約の解除権者ではない

裁判所から訴状が届いた頃、母親から電話があった。どうやら体調を崩し入院していたとのこと。退院して家に戻ったら、うちからの手紙やら、裁判所からの不在通知やらがポストに入っていて、驚いて連絡したというのだ。

この親子、母子家庭。母親は専門学校の授業料と生活費を送るのに、昼間は事務の仕事をし、夜は飲食店で働いて、身体を壊してしまったとのこと。書面を見て慌てて本人に電話したが、既に使われていないコール。

母親息子間でも、携帯番号を知らないのか。母親は学費を稼ぐためにこんなにがんばっているのに。ドラ息子は、専門学校にも通ってないようだった。

「賃貸借契約をもう解約させてください」

携帯番号すら分からない息子に、ただ送金だけする訳にはいかない。母親の申し出は、至極真っ当だ。ところが法的には連帯保証人は、賃貸借契約の解除権者ではない。

そもそも賃貸借契約は、家主と賃借人との契約。連帯保証契約は家主と連帯保証人との契約。
契約そのものが別物。解約という法的行為は、契約の当事者だからこそできることで、部外者がすることはできない。

こうなると夜逃げの場合、とにかく本人を探し出して解約させるしかなくなってくる。あるいは王道の明け渡しの判決を得て、強制執行するかだ。

母親は退院してやっと家にたどり着いたと思ったら、この騒動。連帯保証人では契約を解約できないと知り、意気消沈した声はますます元気がなく小さくなっていった。

どうしたものかと思案していたら、母親は「合鍵で部屋の中に立ち入ってもいいですか?」と聞いてきた。契約時、富山にいる母親は緊急時に東京まですぐに行けないので、千葉に住む賃借人の叔父(母親の兄)に鍵を1本預けているとのこと。

まずは本当に本人が居なくなったのか、合鍵を使って中に立ち入り確認しますとのこと。もともと持っている鍵で入るなら、何の問題もない。私も同行して、一緒に確認することになった。

解約するなら必ず保身のための一筆をもらおう

善は急げで電話の翌日、鍵を持った千葉の叔父さんと現地で合流。挨拶もそぞろに鍵を開けて中に立ち入った瞬間、中で無数に動く音がした。ネズミ……。

なぜか天井に穴が開いていて、ここから出入りしていたのだろう。
部屋の中は食べかす等は散乱していたが、家電や洋服もなく、明らかに夜逃げした状態。叔父さんは「こんな状態で出て行くだなんて、甥っ子ながら恥ずかしい」と心底腹を立てている様子だった。

そして「住んでないのは明らかだから、こちらで全責任持って対処しますから、どうか部屋を解約させてください」と嘆願された。

聞くに母親の体調も、あまり良くないとのこと。部屋がこのままだと、気の休まる日が来ないと妹を気遣う思いが伝わってきた。電話の母親もしかり、この妹思いの叔父さんもしかり、常識的すぎる方々だったので私も腹をくくった。

本来は連帯保証人は賃貸借契約を解約できないが、今回は賃借人の母親という立場。解約の書面には「本来は連帯保証人は賃貸借契約を解約できないところ、親という立場もあり、賃貸人にお願いして解約してもらいました。

今後何があっても、全責任を負います。万が一賃借人が戻ってきても、すべて親族で解決し、家主側には一切迷惑をかけません」の文を入れた。

中に立ち入った後、連日のように千葉の叔父さんは物件の掃除に通い、最終的にはとてもきれいな状態で明け渡してくれた。

滞納分も、全額一括で支払われた。このお金は、賃借人の祖父母が出してくれた。母子家庭の母親は「いつまで経っても親に頭が上がりません」と言っていたが、これが連帯保証人の良さでもある。

いまの時代、親族での連帯保証人はそう望めない時代になっているが、せめて緊急連絡先でも親族と繋がっておこう。上手に関係性を築ければ、親族は賃貸トラブルを円満に解決する特効薬になるからだ。

執筆者:太田垣章子(おおたがき あやこ)

【プロフィール】
司法書士・章(あや)司法書士事務所代表
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。著書に「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)がある。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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