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滞納者には滞納者の友。大家側にはノーサンキューな「負」の「ルイトモ」連鎖

賃貸経営/トラブル ニュース

2019/07/18 配信

横須賀の物件で、夫婦が滞納を始めた。現地に何度か足を運んだが、夫婦に会えることはなかった。置き手紙をしても、訪問しても、電話をしても、夫婦には会えなかった。

訴訟期日まで、夫婦から答弁書が出ることもなく、家賃が支払われることもなく、あっさりと「明け渡し判決」が言い渡された。残念ながらその後も連絡が取れなかったので、完全に常習者と思った。

一般的には、住んでいる人が強制執行で追い出されることは少ない。執行より前に、自分で退去した方が必要な物を持ち出せるし、何よりも費用面も安く上がる。

強制執行になると、執行官が荷物を撤去して、裁判所指定の倉庫で保管。期限までに来なければ、売却されるか廃棄される。いったん倉庫に保管されてしまうと、段ボールに梱包されているので、必要な物を探し当てることは難しいし、何より倉庫から次の部屋に荷物をまた運んで行かなければならない。そんな手間をかけるくらいなら、必要な物を持って退去していった方がずっと安上がりなのだ。

催告の日(執行官が強制執行の手続きで室内に立ち入り、○月○日に荷物を完全撤去すると公示書を貼る)、珍しく夫婦は室内にいた。執行官が事の成り行きを説明し、1ヶ月後の断行の日(荷物を完全撤去する日)口頭で伝え、そして公示書も貼った。

今まで全く連絡が取れなかったのに、ここから滞納夫婦の必死の嘆願攻撃が始まった。連日のように事務所に電話がかかってきて、なんとかこのまま住み続けたいと言う。もちろん滞納額の支払い見込みはない。

流石にここまできてしまうと、賃貸借契約継続和解の話し合いはできないよと伝えても、引き下がらない。

滞納額も家賃も払う経済的基盤はないけれど、ただ「追い出さないで」を連呼するだけだった。どこまでいっても話しは平行線なので「転居先探してくださいね。電話切らせてもらいますね」と仕方なく話しを途中で打ち切らざるを得なかった。それでもまた翌日、嘆願する電話がかかってくる。その繰り返しをしている間に、いよいよ断行の日が来てしまった。

執行官を前にしても、夫婦は「このまま住み続けたい」と食い下がった。執行官は「生活が厳しければ行政を頼るしかないよ」と言い、夫婦の部屋から荷物が撤去され始めた。ここまで来て初めて、夫婦は必要な物を持って部屋を後にした。

「何だかんだ言っても、追い出されることはないと思っていた」
それが夫婦の言い分だった。

それから2ヶ月ほど経っただろうか。同じ横須賀で滞納の事件を受託した。滞納者は単身の50代後半の男性。物件は、家賃5万円の45uほどの小さな戸建だった。仕事はタクシー運転手。仕事しているなら、十分に払える賃料だった。

滞納イメージ
写真はイメージ

現地に行ってみると、玄関の引き戸が僅かに開いていた。呼び鈴を鳴らしたが反応がなかったので、声をかけながら引き戸をさらに開けてみた。

すると中から出てきたのは、驚くべき執行ギリギリまで食い下がったあの滞納者夫婦だった。

ここの契約書上の賃借人ではない。なぜここにいるのかと聞いたら「行くところがなく、友人の家に転がり込んだ」とのこと。滞納者同士が友人関係であることに、驚いた。やはり類友ということなのだろうか。

この家の滞納者と一緒に夫婦も住んでいると言う。他にも金銭的に困窮している人が、複数出入りしていると言う。

判決は取ったものの強制執行できなければ意味がないので、仮処分申請をした。これはこれから先、物件に出入りする人が入れ替わったとしても、全員を強制執行で退去させることができる手続きだ。

不特定多数の人が出入りしている場合、一定額のお金を供託しなければならないが、有益な手ではある。

仮処分申請を経て、明け渡しの訴訟を提起すると、今後は賃借人本人から連絡があり「色々と言いたいことがあるので、裁判の期日に行きます」と連絡があった。
期日当日、本人は宣言通り出廷してきた。

「転がり込んできた夫婦に弱みを握られ、お金を無心されてきた。だから家賃が払えなくなった」

衝撃的な内容だった。司法委員を交えて賃借人と話しをしたが、最終的にこのまま明け渡しの判決を言い渡し、強制執行で夫婦を追い出そう。賃借人本人は別の町で収入の少ないことから、行政の力も借りて転居しようと言うことになった。

そもそもこの賃借人と例の夫婦は、どこで知り合ったのか。
賃借人曰く、ギャンブルの世界と言うことだった。一番知りたかった強請られるほどの弱みは、最後まで分からなかった。

結局、賃借人は執行の前に転居し、残された夫婦がまた執行で追い出される結末となった。

知り合い同士の滞納者たち。こんな入居者を入れないために、家主には何ができるのか。

この家主たちは、口を揃えて「賃貸業は家賃を得ること」と言う。類友ということなら、家主と賃借人も同じであるはず。家主自身もお金だけではなく「生活の場を提供している」その意識が求められるのだろう。

執筆:太田垣章子(おおたがき あやこ)

【プロフィール】
司法書士・章(あや)司法書士事務所代表
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。著書に「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)がある。

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