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太田垣章子の「トラブル解決!」今までで最もひどいゴミ屋敷。精神疾患の入居者のケース。

賃貸経営/トラブル ニュース

2020/02/20 配信

最近多くなってきたと感じるのは、精神疾患を抱えた賃借人のトラブル。これが本当に一筋縄ではいかない。心を病んでいるので、こちらのサポートが届かない。そして何よりご家族の協力がほとんど得られないのだ。

ゴミ屋敷だと思います! 何とかしてください

家主が事務所に駆け込まれた時は、部屋がゴミ屋敷になっているのではという懸念だった。持ってこられた写真には、ヒビが入った窓ガラスとその向こう側に物が溢れている様子が写し出されていた。

しかも割れたガラスの状態を見せてもらえないとのこと。毎年、配管の高圧洗浄の協力も得られない。つまり入居者は、部屋に立ち入ることを断固拒否。その理由が「対人恐怖症で他人が入室するだなんて耐えられない」ということだった。

さらに入居者は顔を合わすどころか、電話も出ない。書面にも反応しない。年に数回、滞納を詫びる内容や病気で対応できない旨の書面がくる程度だった。家賃も滞納気味。根気強い督促を続けて初めて入金される、そんな状況が5年ほど続き、家主も疲れ切っていた。

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「たぶん部屋の中もゴミ屋敷だろうし、退去して欲しいのです」

滞納ではすぐに明渡判決はでるが、それ以外の理由で判決を取得することは難しい。退去してもらいたければ、督促をしてはいけなかったのだ。滞納状態を作って、その上で手続きをする。これがいちばん確実で早い。しかしながら適切に根気よく督促をしてしまったおかげで、残念ながら「滞納」での訴訟はすぐに提起できなかった。

配水管洗浄等に協力しない信頼関係破綻で、訴訟提起をする選択肢もあった。ただここでも家主はミステイクを犯していた。賃借人の反応がないという苛立で、書面がとても攻撃的だったのだ。これでは裁判官の心象も悪くなり、証拠として使えない。賃借人に出す書面は、絶対に感情的になってはいけない。裁判官の目を意識しながら、端的に家主側に同情してもらうような内容にしなければならないのだ。この2つのミステイクで、すぐには訴訟提起できない状態だった。

娘の部屋には行ったことがありません

この賃貸借契約、賃借人は40代前半の女性。東日本大震災の後、わざわざ東北から通信での大学進学のために東京に転居してきた。無職なので、生活費はすべて親からの仕送りだ。連帯保証人は、賃借人の父親がなっていた。

本人が「対人恐怖症」と宣言しているならと思い、連帯保証人に連絡をとってみた。
すると親の反応は「そうです、治療を受けています」とあっさりしている。事情を話し、このままでは訴訟手続きになることも伝えた。通信制大学なら、東京に住む必要もない。実家に戻れない事情があるなら、せめて会おうと思えばすぐに会える距離に住み替えるのもいいのでは?と任意退去を促してみた。

ところがその意見はすぐさま却下された。理由は彼女が東京に住むことを希望しているので、ということだった。

ではいちど親御さんも交えて、賃借人とともに話をしてみないかと持ちかけてみた。ところがここでも「娘の部屋には行ったこともないし、そんな必要もないと思っています」。

親元から離れ、精神疾患を患い、このまま一人住まいをしていて、病気は治るのだろうか。家族の愛が必要なのではと説得してみたが、まったくもって協力は得られそうになかった。

連帯保証人の協力も得られないことも確実になったので、仕方なくここから証拠を積み重ねて訴訟提起をした。ようやく明渡の判決を得て、強制執行を申し立てたのだが、これが強烈だった。何が強烈かと言うと、部屋の中が想定以上にゴミ屋敷だったのだ。

玄関からゴミで、室内まで立ち入ることができなかった。ひどいアンモニア臭で、執行官は「もういいから」と室内に立ち入らず、公示書をドアの室内側に貼ってその日は終わった。

室内の感じからすると、入居者の精神状態はかなり悪いように感じた。あの室内で生活できる神経がおそろしい。もう一度……そんな願いで彼女の両親に手紙を書いた。執行での様子と、彼女が立ち直るためには親御さんの協力が必要だということ。一生懸命に書いた。それでも連絡が来ることはなく、断行(強制執行で荷物を完全撤去する)の日が来た。

彼女はすでに親が準備したワンルームに転居済み。残された部屋は、さらにゴミが高く積まれ、マスクしてもアンモニア臭が半端ない。彼女はトイレではなく、室内で大も小もそのまま排泄していたのだ。ゴミの下に小は流れ、大はそのままゴミの上に無数に乗っかっていた。今まで見た中で、いちばんの異様な状態であったことは間違いない。

この数年、急激に精神疾患を患う賃借人が増えた。その大半が、家族の協力も得られない。最悪の場合、事故物件になる可能性もある。今回はなんとか退去してもらえたが、初期の段階で適切な相談ができる専門家を得ておくことが必要だと改めて感じた。

執筆:太田垣章子(おおたがき あやこ)
章子先生
【プロフィール】
司法書士・章(あや)司法書士事務所
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。著書に「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)がある。

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