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太田垣章子の「トラブル解決!」裁判所も唖然!切なすぎる「家族は他人の始まり」

賃貸経営/トラブル ニュース

2020/07/16 配信

賃貸トラブルの対応をしていると、そこに家族関係の歪みが壁となることが多い。例えば精神疾患。実家に戻り正しい治療を受けないと回復していかないのでは? そう素人ながら感じることも、「戻ってきてもらっては困る」と家族の協力が得られない。

息子の滞納を延々と支払ってきた連帯保証人の親が、ある日突然「年金生活でもう払えない」と支払いを止めることもある。若い子が滞納しても、親は「子どもが家出したまま会ってもいないから」と突き放し、高齢者の親の滞納を「遠い昔に縁を切ったから」と子ども世帯が知らぬ顔をする。

賃貸トラブルに携わって18年になるが、私が関わった滞納者の家族関係は、希薄さを年々増している。日本はどうなっていくのだろう……そう危惧してしまうほどだ。

兄弟姉妹は他人の始まり

妹の契約していた物件に兄が住み、既に20年。兄の滞納が始まったので、手続きの依頼を受けた。

建物は築50年を過ぎ、かなり老朽化している。入居者も40代後半。この家で生まれ育ち、結婚で一旦出たものの離婚で戻ってきた。もともとの賃借人である親が既に亡くなっていたので、入居者の妹が契約者になっており、妹の結婚と同時に兄が入れ替わりで移り住んできたという訳だ。そう考えると、家族の結束が強いように感じていた。

写真はイメージ
写真はイメージ

契約者は妹、入居者が兄。そんな状況だったので、比較的スムーズに退去まで進むのではと楽観視していたことが、ことごとく外れてしまった。

契約者の妹は、結婚と同時に兄との縁を切ったという。理由は兄からの暴力。交通事故で九死を経験した入居者は、それが原因なのか急に暴力的となり離婚したという。怒鳴る、手が出るで、妹も一切に近づかなくなった。

「兄が滞納しても私には関係ありません。関わりたくもありません、他人です」そう言う。気持ち分からなくもないが、契約者である以上、全く無関係という訳にもいかない。結局妹を説得して、賃貸借契約を解除してもらい、入居者に退去を促すことにした。

親から「ずっと住んでいい」と言われている

賃貸借契約が解約となり、滞納もあることから、入居者に退去するようコンタクトを取ってみた。すると彼の言い分は「親からずっと住み続けていいと言われている」と言う。

ここは自己所有の物件ではないと説明しても、ただ「親父がそう言っていたから」と話しにならない。交渉もできそうにないことから、訴訟手続きを提起した。訴訟能力(裁判できるだけの知能)に多少の不安はあったものの、一般的な会話はできるし、何らかの仕事をしていることは明らかだったので踏み切った。

訴訟になっても入居者の主張は変わらない。ならばなぜ以前は家賃を払ってきたのか、と聞いても「親父が住んで良い」を繰り返すばかりだ。裁判官も書記官も司法委員も、多少の精神能力の低さを感じていた。

本人が同意してくれれば、福祉の援助を得ることもできる。一人で行くことが不安なら、私が同行することだってできた。それでも本人が拒否すると、私にはなす術もない。

入居者には3歳年上の兄がいて、まだ現役世代。本人がこの状態で新居を借りることは難しいと判断し、裁判所は兄に援助要請の電話をした。

しかしながら電話に出た兄は「弟とは関係がない。頭おかしいのは分かっているけど、関わりたくもない。好きにしてくれ」そう怒鳴って電話を切ってしまったという。

裁判所ですら、契約の当事者でもない兄にこれ以上を求めることはできない。契約者である妹も、「兄を出してください。部屋探しには協力しません。関わりたくありません」そう断言。結局、入居者は孤立した状況のままだった。

物件は築50年。今にも崩れ落ちそうなほど老朽化している。司法委員と私は、まだ働いている間に引っ越しした方がいい、と根気よく説得を続けた。

3度目の期日でようやく、2ヶ月の猶予を持って退去することに入居者は渋々同意。ただそのまま突き放しても、任意退去してもらえそうにもない。そこから私の現地通いが始まった。既に契約者である妹の電話番号は変更され、連絡がつかなくなっていた。もう身内を頼ることもできない。

入居者はバイクの事故で生死の境を彷徨った経験をしながら、バイクが好きで3台も所有していた。「強制執行になれば、このバイクも持っていかれるよ」そう言うと、初めて「それは困る」と反応したのだ。あ、突破口はこれしかない! 直感的にそう感じた。そこからバイクのことで入居者を急かすことにした。

それが功を成したのか、最終的に強制執行ギリギリのところで、入居者は任意に退去していった。

人生の折り返しを経て、兄弟姉妹から絶縁され、この先ちゃんと生きていけるのか。家族が手を差し伸べなければ、それは国や行政が面倒みることになるのか。家族の気持ちもわからなくはない。それでも家族は面倒で、仕方がないところもある。解決したものの、複雑な思いが残る事件がとても増えたと感じている。

執筆:太田垣章子(おおたがき あやこ)

章子先生
【プロフィール】
司法書士・章(あや)司法書士事務所
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。著書に「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)がある。

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