大阪在住の大家「みかりん」さんは、20数件の戸建てを中心に所有している。1990年に大阪で開催された「国際花と緑の博覧会」ではパビリオン・コンパニオンを務めたほどの美人で、周りの初心者大家さんが悪徳業者に騙されないようアドバイスもしてあげる親切な女性大家さんだ。
10年以上前から不動産賃貸業を営むベテラン大家さんなのだが、今回、初めて家賃を滞納した入居者に「昼逃げ」されてしまった。「夜逃げ」ではなく、昼に堂々と逃げた入居者とは?逃げられた物件の対応はどうしたのか?を聞いた。
入居希望者の審査はGoogleマップで!
ストリートビューの画像でチェックする
大家みかりんさんはいままで、対応に困るほどひどい入居者に当たったことがなかったという。「ちょっとやばいかも、と感じる入居希望者さんの場合は、断るようにしていたからだと思います」
彼女のチェック方法は、仲介業者さんから入居希望者さんの資料が来ると、勤務先と現在住んでる場所をGoogleマップで検索し、ストリートビューの写真を見るそうだ。書かれている住所が嘘ではないのか、ちゃんと会社の看板が出ているのか、住んでいる家は実在するのか?など。
入居理由や引越ししたい理由も、仲介業者さん経由で聞いてもらうという。以前、3LDKの戸建てに入居の申し込みした人が、ファミリーではなく、独身男性1人で住むと聞き、断ったことがある。
「3LDKの戸建てに一人で住みたいというのが不思議だったんです。ちょうどその頃、『自宅で大麻栽培をしていて逮捕された』というニュースがありましたから。私の物件を『静かな環境で気に入りました』と言ってくれたそうなのですが、それだけの理由だけで、戸建てに一人で住む積極的な理由には思えなかったので…。仲介会社さんから断ってもらいました」

引越しの理由が不思議な人も却下している。
「生活保護の方も受け入れていますが、『ペットがいるからどこでもいい!』などの理由は遠慮しています。『どこでもいい』というような入居者さんの場合、ご本人の生活態度があまり良くない可能性があるからです」
大家として、引っ掛かる点がある入居希望者さんは断るというスタンスだ。
ちなみに、入居申込書の字が汚い人も良くないという噂もあるそうだ。しかしみかりんさんの場合、自分の家族の字があまりキレイではないので、そこはOKにしている(笑)。

また、Googleマップで検索するのは入居者本人だけ。連帯保証人についてはチェックしていない。
では、昼に逃げた入居者はどうだったのか?
「実は、この人の勤務先をググった時に、住所地のビルに会社の看板が出てなかったんです。ペーパーカンパニーかも、と疑いました」
普段なら、マイルールに乗っ取って断るつもりだった。しかし、たまたま他の大家さん達と話していた時に、仲介会社から紹介してもらった入居希望者を無下なく断ると次回から紹介してもらえなくなるかも、とアドバイスをもらう。マイルールが厳しすぎるのかもしれないと思い直し、今回は受け入れてみた。
会社の看板のことを除けば、3LDKの戸建てに夫婦と小さな子供達3人で住むのはおかしくない。家賃は6.9万円、敷金・礼金は無し。ちなみに、以前は敷金・礼金はもらっていたが、最近は他の大家さん達が敷礼ゼロにしているようなので変えた。AD(仲介会社への広告料)も以前は1.5ヶ月分だったが、最近は他の大家さんに倣って2ヶ月分にしている。

家賃が遅れがちになり、催促の電話をかける。
そして、保証会社の代位弁済が続く…。
入居してから1年ぐらい経つと、家賃の入金が遅れ始めた。電話をすると、翌月まとめて払うと言われたので待った。すると約束通り、翌月まとめて振込みがあった。
しかしその翌月、また家賃が遅れたので二度目の催促をした。今度も2ヶ月分まとめて払ってくれた。3回目に遅れが発生した時、みかりんさん自身が忙しくて催促が遅れた。しばらくして、いつものように電話をしたが、入居者が電話に出なくなってしまった・・・。
家賃保証会社に連絡すると、既に1ヶ月以上遅れた滞納家賃分は保証できないとのこと。しかし、滞納から1カ月未満だった分の家賃は家賃保証会社が代位弁済してくれた。
「でも、1カ月分の家賃がもらえないままでは悔しかったんです。そこで、代位弁済してもらえなかった1か月の家賃を回収するために、電話に出ない入居者にCメールしました。『代位弁済してもらえなかった分の家賃を振り込んでくれなければ、裁判します』と。すると、振り込んでくれました(笑)」
その翌月も入居者から振込がなかったので、保証会社に連絡し、代位弁済が続いていた。
「でもなぜか途中で、入居者さんから2ヶ月分の家賃振込がまとめてあったことも。その分は家賃保証会社には申請しませんでしたが、その後も滞納は続き、代位弁済の手続きを継続しました」
ご近所は見た!
堂々と昼に逃げた入居者
ところが、ある日物件を見に行くと、物件がもぬけの殻に!
「実は、滞納が続くので、いつか夜逃げしてしまうんじゃないかと疑ってました。ですから、時々物件の様子を見に行きましたが、まだ住んでくれているんだなと思っていたのです」
しかし、その日は天気が良かったのに洗濯物が干されていない。窓も全部締め切って、入居時に取り付けたポストもなくなり、宅配の不在票も地面にたくさん落ちていた。

ついに夜逃げをしたと感じ、ご近所さんに聞きこみをしてみた。すると、昼に堂々と逃げていたという!
奥さんと子供3人の姿はなく、旦那さん1人が、お友達らしい人と、他府県ナンバーの軽トラックに家具類を積み込んでいたという。
ご近所さんが声をかけると、家族は引っ越しますが、僕だけここに戻ってきて単身赴任で住むんです、と言い残して去っていったという。
しかし、ご近所さん曰く、荷物を全部積み込んでいたのでそれは嘘だなと思っていたようだ。
入居者さんが昼に逃げたことが発覚後、みかりんさんは保証会社に連絡した。その後ずっと、家賃は保証会社からの代理弁済が続いている。今後は保証会社が入居者を見つけ出して、裁判を仕掛けるようだ。
「私の場合は、保証会社に入居者さんが『昼逃げ』したことを報告しましたが、そこまで伝えた方が良かったのかどうかは今もわかりません。滞納が続いていることだけ報告すれば良かったのかもしれません。他の大家さんにお聞きすると、そこまで報告しなくてもいいと思う、というご意見もありました」
ちなみに、ご近所の方からのタレコミで、バイクに乗ってきた2人組みが物件の様子を外から探っていたらしい。多分、保証会社の人が調べに来たようだ(笑)。
保証会社によって代位弁済をいつまで継続してくれるかなど保証内容が異なるので確認が必要だ。
ところで、みかりんさんは大家なのに、まだ自分の物件に入ることができない。保証会社との裁判が終わり、強制執行が断行されないと、物件が大家の元に戻ってこないからだ。
「物件の中がどうなっているのか、生モノが放置されていないか、万が一、人が亡くなっていたらどうするの?ってすごく心配なんです」
家賃は代位弁済されているものの、大家にとって心配の種は尽きない。
昼逃げを発見してから数か月後、保証会社から裁判の依頼を受けた法律事務所から、裁判予定日の連絡があった。
そしてみかりんさんは、裁判予定日までに合法的に自分の物件に入ることができる妙案を思いつく。
さて、どんな妙案なのか。続きは次回の記事にてご紹介しよう!
健美家編集部(取材協力:野原ともみ)