• 完全無料の健美家の売却査定で、できるだけ速く・高く売却

×

  • 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集

ギャンブル依存症の生活保護受給高齢者が家賃滞納「太田垣章子のトラブル解決!」

賃貸経営/トラブル ニュース

2021/12/18 配信

最近、生活保護受給者の家賃滞納が増えている。家主側からすると、家賃分ももらいながら滞納はあり得ないと思うだろうか。ところが家賃保証会社経由で依頼がある場合、その3割が生活保護受給者なのだから『あり得なく』ないのだ。

ギャンブル依存症

73歳の女性が滞納し始めた。家主や管理会社の担当者が何度訪問しても、彼女とは会えない。居留守を使われるか、もしくは外出しているか。
3987933_m

脚が不自由なので、行動はいつも自転車。自転車がなければ、彼女は外出しているのだ。73歳になって、連日どこに行っているのだろう。ただ逃げ回っているということは、少なくとも自分が家賃を滞納して、督促で訪問されたということは認識している。

緊急連絡先の娘さんと連絡がついた。開口一番「もう縁切ってるんで」という言葉だった。なぜそうなってしまったのか。聞いてみると、原因は賃借人のギャンブルだと言う。

物心ついた頃から、母親が家に居たことはない。いつもパチンコに行っていたという。お金がなくなると、借りてまでパチンコにのめり込んでいた。家に借金取りが来ることもあった。早く自立したくて、社会人になってからは極力実家とは関わらずに生きてきたと言う。

彼女が結婚した時に、母親は借金取りに追われ、仕方なく同居した。「もう二度とギャンブルはしない」と約束をしたからだ。同居間もなくから、また母親のパチンコ屋通いが始まった。

それですぐに同居を解消。母親は生活保護を受給して、現在は一人住まいをしている。この一件から「縁を切った」と言う。

家賃滞納はその後も続いた。この間、本人とコンタクトを試みたが、まったくダメだった。緊急連絡先の娘さんも協力してくれて、毎日のように会いに行ってくれるものの居留守を使われる。

役所に連絡してみると、役所も本人とは会えていないと言う。そこで苦肉の策で、生活保護費を振り込みではなく取りにきてもらって現金支給するということを試みてもらった。これなら本人と会って話せるだろうという、役所の考えだった。案の定、本人は元気な様子でお金を取りに来た。

家賃は役所が払ってくれているものだと思っていた

本人は役所の担当者に「役所から直接家賃は支払ってくれているものだと思っていた。だから自分は滞納した覚えはない」と平然として言う。

今まで役所から直接家賃を払ったこともないし、自分で家賃を支払った月もあるのにだ。認知症の傾向があるのか、それともしらを切っているのか。

担当者は「家賃を支給しているにも関わらず払わないなら、今回の転居の費用は役所は払わない。自分で何とかするしかないよ。払ってないんだから、追い出されてしまうのは当然だよ」そう本人に伝えた。すると「じゃ、私が死ねば全て解決するんだね」と言って、話し合いにもならないと言う。

結局役所の担当者とは、このまま事務的に訴訟手続きは進め、明け渡しの判決が出た頃に、この先どうするか話し合うことになった。

いったんシェルター的なところに入所してもらうのか、それとも老人用の施設なのか、それとも民間の賃貸物件なのか……。どちらにしても私たちの血税が使われてしまうことは、間違いなさそうだ。

役所の担当者も「高齢者のこの手の問題が多くて困っている」と嘆いていた。

生活保護の家賃分は、直接役所から家主に支払われる「代理納付」が原則になった。しかしそれは新規に生活保護が支給される人が対象で、今までの人は本人が「同意」すれば代理納付してくれるが、「同意」しなければそのまま本人に支給されてしまう。

「同意」する生活保護受給者は、ほぼいないと言う。振り込みの手間を考えたら納得するものだと思ってしまうが、やはり少ない額が振り込まれるのは嫌らしい。

これから高齢者の生活保護受給が増えてくる、と私は考えている。もし役所から打診があったら

①必ず代理納付をしてくれること
②入院等で、もはや部屋に戻ってこない場合には、部屋の明け渡しをしてくれること
(そうでないと家賃は二度と入ってこない)
③入院、施設入所の場合には、必ず情報を開示してくれること
④家賃保証会社をつけること
最低でもこの辺りを、きちんと役所の担当者と確約しておいた方がいい。

空室を何とかしたい、高齢者は部屋を借りたい。そこは相互でマッチするのだが、今の高齢賃借人のトラブル対応をしていると、そう簡単なことには思えない。もちろん生活保護を受給しながら、きちんと家賃を払って生活している人たちも多くいることも分かっている。

ただ受任件数だけで判断していくと、高齢者に部屋を貸すことに消極的な家主がいても仕方がないようにも思えてくる。この先増えてくるであろうこの問題、なんとか解決策を見つけていきたい。

執筆:太田垣章子(おおたがき あやこ)

執筆:太田垣章子(おおたがきあやこ)

太田垣章子

■ 主な経歴

OAG司法書士法人 代表
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2,000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。

■ 主な著書

  • 「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)
  • 「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

アクセスランキング

  • 今日
  • 週間
  • 月間

不動産投資ニュースのライターさんを募集します。詳しくはこちら


ニュースリリースについて

編集部宛てのニュースリリースは、以下のメールアドレスで受け付けています。
press@kenbiya.com
※ 送付いただいたニュースリリースに関しては、取材や掲載を保証するものではございません。あらかじめご了承ください。

最新の不動産投資ニュース

ページの
トップへ