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大家の損害は甚大!「賃借人が亡くなった」と言う相談が急増中【太田垣章子のトラブル解決!】

賃貸経営/トラブル ニュース

2022/03/17 配信

ここにきて「賃借人が亡くなった」と言う相談が急増している。

賃貸トラブルに携わって20年。私の感覚だが、コロナが台頭してきた2020年の5月ごろから、自殺が急激に増えた。コロナウィルスがどのようなものか分からず、先行きの不安を感じ、しかも人との接触が激減して鬱状態になったのかもしれない。毎月5、6件の相談を受けていた。

やっと昨年は減ったと安堵していたが、2022年、また増えてきた印象だ。関東では電車での事故も増えているし、室内での死亡も耳にすることがまた増えてきた。

人が亡くなった部屋は家具やキッチンなどもそのまま放置されてしまう場合も
人が亡くなった部屋は家具やキッチンなどもそのまま放置されてしまう場合も

賃借人が亡くなったら何が困るのか?

今まで様々なところで、賃借人が亡くなった場合、何がいちばん困るのかと声を上げたり文字にもしてきた。ところが最近家主から相談を受けるのは、管理会社が相続人と対応しているにも関わらず、解約の書面を貰ってくれなかったという問題だ。

ここでおさらいしておこう。
賃借人が亡くなったら、何が困るのか? これは賃貸借契約が相続される、残置物も相続される、これに尽きる。そして相続人にとって相続するということは、家主から多額の損害賠償請求をされるということを意味するのだ。

例えば室内で自殺した場合には、清掃代や原状回復費用、事故物件となったことでの空室期間の家賃補填や家賃減額の補填。場合によっては、特殊清掃代もかかる。

一般的には経済的に困窮している人が自殺しやすいので、消費者金融等の借金があることも多い。それらを相続してしまうとなれば、相続人の負担は半端ない。プラスの財産はほとんどなく、大半はいきなり数百万円の支払いを請求されるのだ。家族が亡くなった悲しみより、お金のことでパニックになったとしてもおかしくはない。

一方の家主からすると、事故物件になってしまったことへのショックも大きいが、それによる経済的ダメージは比べ物にならないだろう。だからこそ怒りの中で、何が何でも賃借人の相続人に支払ってもらいたいと思うのも当然だ。

この両者の対立する問題は、相続人の相続放棄によって決着することが多い。つまり相続人は支払うことなく、放棄することで経済的な請求から逃れることを選択するのだ。

そして相続放棄という手続きはall or nothing なので、部屋を片付けることもなく残置物を処分することなく相続人は責任から解放されてしまう。

これが家主側にとっての最悪なシナリオで、「迷惑かけた癖に逃げるのか」という怒りが倍増するしかなくなるのだ。

しかも相続人が放棄することで、終わった訳ではない。責任は次順位の相続人へと移っていくが、当然に皆放棄をしていき、最後誰もいなくなったところで初めて相続財産管理人を選任申し立てする。ここまでで約1年。家主の怒りはどこに向けたらいいのだろう。

賃借人が亡くなったことを常に想定しておく

この問題の解決は、とにかく賃借人が亡くなった瞬間に、相続人から解約の書面と残置物の放棄書をもらうことだ。時間を空けてしまうと、必ずと言って良いほど相続放棄されてしまう。そしてこれは室内で亡くなろうと室外で亡くなろうと、自殺であろうと病死であろうと、変わらない。

「できるだけ早くに部屋を片付けます」そう相続人に言われたことで安心していたら、数日後「相続放棄することにしたので何もできません」と言われてしまったと、家主が嘆いて事務所に飛び込んできた。

とにかく賃借人が亡くなることを想定して、常に管理会社の担当者とシミュレーションすべきだ。お金のことや感情より、まずは書面をもらうこと、これを最優先しようと話し合っておこう。

頻繁に起こるトラブルでもないため、この対応に精通している管理会社も少ない。だからこそ任せっきりにはせず、担当者には自分の意向をしっかり伝えておくべきだ。

昨年2月、国交省と法務省が、賃借人が亡くなった場合、賃借人が予め契約の解約と残置物の処分を第三者に委任しておくこと(死後事務委任)を認めた。逆を言えば、これ以外は認めないということにもなる。

今までもしかしたら相続人が協力してくれないからと、「えいやぁ」で荷物を処分していたかもしれないが、「それはダメなんだよ」と釘をさされたのも同然だと認識しておいた方がいい。

だからこそ、万が一のときにはどうするのか、いざという時にすぐに対処でききるよう家主自身も、管理会社の担当者もしっかり知識を得て、そのシミュレーションに力を注いで欲しい。

せっかく好意的に相続人と対応できたのに、書面をもらわないのは残念すぎる。時間が経てば「相続放棄される」を肝に銘じよう。

執筆:太田垣章子(おおたがきあやこ)

太田垣章子

■ 主な経歴

OAG司法書士法人 代表
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2,000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。

■ 主な著書

  • 「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)
  • 「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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