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トラブルメーカーの入居者が10ヶ月の滞納後、『強制退去執行』。追い出し完了までの軌跡

賃貸経営/トラブル ニュース

2022/10/16 配信

筆者は、これまで孤独死、夜逃げ、逮捕、火事ボヤなどを経験してきたが、精神的に苦痛だったのは、強制退去だ。手続きが辛かったというより、その入居者がアパートにいることが、ストレスとなっていた。今回、ようやく強制退去執行となったので、その内容を簡潔に紹介したい。

生活保護者として入居した、問題児

その男性は、生活保護者として入居した。
年齢は40代、K氏とする。

筆者の他の物件でも生活保護者は複数、入居している。
国から家賃が支給され、とりっぱぐれがない点は、大家にとって望ましい属性の一つでもある。

保証会社の審査も通過、入居することになったが、直後から注文が相次いだ。

「部屋のここを、新しくしてほしい!」
「部屋のあそこを、修繕してほしい!」
「エアコン2台と聞いていた、もう1台つけてほしい!」

内見し、条件に納得して入居したわけだが、そんなことはおかまいなしだ。必要と考える修繕は対応したが、修繕後も、管理会社への連絡がとまらない。

仕事もなく、1日中時間があるからだろう、毎日、管理会社に電話をかけてくる。1時間という長電話もザラ、これでは担当者の仕事に支障がでてしまう。

ほどなく、他の入居者からの話も、耳にはいった。

「作業をやるからバイト代をくれと、言われた!」
「わがもの顔で駐車している!」

入居させてはいけない人間を、入居させてしまった、と悟った。

■警察沙汰がおきた

そんな矢先、警察沙汰がおきた。

K氏が、同じアパートの入居者と、もめたのである。
被害をうけた入居者が通報し、夜に警察が駆け付けたと聞き、驚いた。

被害者からの通報で警察が駆け付けた
被害者からの通報で警察が駆け付けた

管理会社から報告をうけた内容(対被害者へのK氏の行動)は、下記だ。

・駐車方法等でイチャモンをつけた
・イチャモンの延長で、夜に玄関のドアをたたいて威嚇した
・玄関のドア越しに、大声でどなりつけた

気に入らないことがあったのだろうが、夜に玄関のドアをたたいて威嚇するなど、完全に常軌を逸している。

被害をうけた入居者は、若い女性だった。
夜に男性から、玄関のドアをたたいて威嚇される、どれだけ怖かっただろう。

結局、被害女性は、入居後わずか5日で退去することになってしまった。大家として、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

管理会社経由で、K氏の話を聞いたが、被害女性と対立する言い分だった。事実関係がはっきりしない以上、下手に動けない。

K氏を刺激して、被害女性に2次被害が及ぶリスクも勘案し、ヒアリングするにとどめた。そして今後、何か問題があれば、管理会社に連絡してもらうよう伝えた。

■客付けができない

5日で退去した入居者の件が尾を引き、その後、客付けが進まない。せっかく入居しても、K氏が、同様の事態を引き起こすかもしれない、そう思うと、客付けする気持ちになれない。

そこで、K氏を追い出すまで、客付けはしないと割り切った。
大きな機会損失になるが、被害女性が味わった辛い思いを、他の新規入居者にさせるわけにはいかない。

どうやったら追い出しができるか、事例含め、先輩大家、複数の管理会社へヒアリング、その可能性を探った。

ただ法律上、どうやっても借主が守られてしまう。
話し合いに応じるタイプの人間ではなく、逆上する可能性が高い。滞納が続いて、訴訟に持ち込むぐらいしか、現実的な事例も見当たらない。

「こんな入居者でも、うまく付き合っていくしかないのか?」
「客付けもできないし、このままだと収支があわなくなる。。」

しばし、途方に暮れた。

■滞納がはじまった

このままではらちがあかない、次に問題を起こした時、退去を促すそうと心に決めた。

時を同じくして、K氏の滞納がはじまった。

「滞納が続けば、追い出すことができるかもしれない!」
一筋の光が見えた。

K氏は、働きだしたらしく、生活保護の対象からはずれていた。保護対象外ゆえに、滞納になったと言える。

滞納しても家賃は振り込まれ、かつ、追い出しも対応してもらえる。保証会社のおかげで、不安は感じなかった。大家にとって、本当に有難い存在だ。保証会社がなければ、新たな苦痛のはじまりとなっていただろう。

滞納後、幾度となく、電話連絡、内容証明郵便の督促、現地訪問を実施したが、音沙汰無し、むろん支払い無しだった。

滞納するべくして滞納、そんな印象をうけた。

■訴訟提起~強制退去まで

滞納が3ヶ月以上続いたため、本格的に追い出すべく、管理会社、保証会社、弁護士と打合せをした。

そのときのメモが下記だ。

1)賃貸借契約の解除
2)明け渡し請求の訴訟提起 ※委任状提出
3)訴訟提起から1~1.5ヶ月後に裁判
4)建物明け渡しの判決言い渡し
  ※任意で退去ならここで終了

  ※任意で退去とならない場合
5)強制執行の申し立て
6)催告(執行官が物件の専有状況確認) ※断行日決定
7)断行(強制退去の実施) ※鍵の交換を実施

訴訟委任状
この訴訟委任状をもとに訴訟提起
判決
実際の判決文
控訴状
K氏からの控訴状

※控訴があれば、控訴理由書を確認し、反論
※強制執行停止申し立てがあれば、反論
※控訴や停止の申し立てによる、時間稼ぎも多い
※強制執行まで、半年以上かかるケースもある

打合せ後、
委任状を書いてからは、気が気でない。現実的に、いつぐらいに追い出しが可能か、常時、全容把握に努めた。

K氏の場合控訴もあり、非常に長い期間を費やすことになった。結果として、最初の滞納から10ヶ月かかり、ようやく強制執行日をむかえた。

当日、保証会社から連絡を受けたとき、本当にホッとした。
「これで、ようやく客付ができ、まともな賃貸経営ができる」

■遅延損害金を差し押えするか?

もうひとつ、遅延損害金の請求をどうするか、という課題が残っていた。

建物明け渡しの判決とあわせて、遅延損害金の判決もでており、法律上、損害金を差し押えすることが可能だ。
K氏が居座ったことにより、1年近く客付できず、実損を被っている。その機会損失額は、数十万円。

K氏を懲らしめる意味も含め、遅延損害金の請求を検討した。
差し押えをするには、銀行口座か、勤務先をおさえる必要がある。

弁護士からヒアリングをした内容は下記のとおり。

■実施面
銀行口座の差し押え
・銀行本店に該当者の銀行口座がないか確認
・該当口座があれば、支店まで特定できる
・口座を特定できても、残高がなければ差し押え不可
・口座ではなく、手元にCASHを置いている可能性もある。
・照会時に残高があっても、差し押え時に残高があるかは不確か
・照会後、差し押えまでに約2週間かかる(裁判所と銀行のやりとり)

勤務先の差し押え
・勤務先がわかれば給料の差し押えが可能
・勤務先は法律的に調べることはできない(尾行等が必要)

■費用面
・弁護士費用として、着手金と、成功報酬が発生
・口座確認は1行あたり、7,000~8,000円
・口座特定まで、想定する銀行を全てあたる費用が発生

勤務先がわかれば話ははやいが、見つけるハードルは高い。新聞配達を一時期していたが、すでに辞めているという情報もはいった。

一言でまとめると、差し押えするには、かなり確かな情報がないと無駄骨に終わる可能性が高い。

■深追いはやめた

管理会社、友人大家、そして妻、色々な方に相談した結果、遅延損害金の請求はやめておくことにした。

本来は、懲らしめる意味でもやりたいが、管理会社の方にこう言われた。

「K氏を懲らしめる意味でやったところで、ひびく確率はゼロ、また同じことを平気でやりますよ。むしろ、逆恨みされる可能性大です。それに、全く差し押えできない可能性も高い。最低限出ていったたわけで、それで良し、じゃないですかね」

この言葉を聞いて、退去で手打ち、と考えるようにした。

■問題児の入居を防ぐには?

空室期間が長くなると、「だれでもいいから入居してほしい」と考えがちだが、この1件以降、慎重に考えるようにしている。

1人の不良入居者によって、アパート全体の住環境、ひいては価値が大きく下がってしまう。断固として、問題児を入居させてはいけない。

では、問題児をどうやって判断するのか?

保証会社の審査を通過することは言うまでもないが、筆者の場合、現場を尊重し、管理会社の判断に委ねている。

実は、

「問題児を入居させた時の管理会社」と、

「現在の管理会社」 は、全く、異なる。

旧管理会社は、家賃横領をするとんでもない会社だった。そんな会社だから、問題児入居が発生したと言っても過言ではない。

無論、その管理会社を選定、任せてしまったことは、筆者(大家)の責任であることも痛感している。腸が煮えくり返る、旧管理会社のことは別の機会に共有したい。

今は、非常に信頼のおける会社に管理をお願いをしている。
あらためて大家にとって、優秀な管理会社は必要不可欠、最重要なパートナーであると強く感じている。

最後に、感謝の気持ちをこめ、新管理会社が客付を決めてくれたことを、付け加えたい。

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執筆:石橋 仁 (いしばし ひとし)

富士山

https://twitter.com/hitoshi1114

■主な経歴

経済的自由を獲得したい、子供との時間を一緒に過ごしたい(幼稚園の送り迎え等)一心で、不動産投資をスタート。2015年に1棟目のアパートを購入、キャッシュフロー重視で物件を購入し、現在9棟98室を保有(返済比率37%・残債利回り18%)。大家歴8年目。通称「親バカ大家」

趣味は食べ歩き、旅行、そして子供と遊び、成長を見届けること。
米国株、仮想通貨にもアクティブに投資している。
座右の銘は『出来るか出来ないか、ではなく、やるかやらないか!』

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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