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所有してるマンションで管理費滞納が発生したら価値が下がる?悪質な管理費滞納の実態とその顛末

賃貸経営/トラブル ニュース

2023/01/15 配信

「マンションは管理を買え」という言葉がある。専有部分の賃貸管理で当てはまる方もいれば、共用部分の建物管理で思い当たる方もいるだろう。

専有部分はもちろんのこと、共用部分に起きる修繕やトラブルなどを処理し切れるかどうかも、資産価値を司る重要なファクターの一つだ。

今回、区分マンションの共用部分に係る毎月の管理費・修繕積立金の滞納トラブルに対して、管理組合の代表である理事長が債権回収すべく奔走した事例に迫った。併せてオーナーとして留意すべき点についても、投資家の方からの解説をもらうことができた。

区分所有者が「共同の利益に反する行為」を起こしたとき、管理組合はどう対処するか?(写真はイメージ)
区分所有者が「共同の利益に反する行為」を起こしたとき、管理組合はどう対処するか?(写真はイメージ)

督促を無視し続けた滞納者へついに訴訟の提起

都内のとあるマンション管理組合では、区分所有者Aが数年に渡り毎月の管理費・修繕積立金を滞納し続けているのが悩みの種だ。建物管理会社を通じてコンタクトを試みるも、区分所有者Aは留守を決め込み、時間だけが過ぎる時期が続いた。

以下に督促記録の一部を示す。

2021年1月某日:内容証明郵便送付 返送 宛所不明

2021年1月某日:住民票取得

2021年1月某日:電話督促 留守

2021年2月某日:住民票取得 戸籍の附表

2021年2月某日:内容証明郵便送付 返送 保管期間経過

2021年3月某日:書面督促 通知書をレターパックにて郵送

2021年3~6月:電話督促 留守

2021年8月某日:訴訟の方向で弁護士より提案

2021年8月某日:理事会および管理会社にて訴訟について協議

しかも、この区分所有者Aの滞納は初めてではない。数年前にも同様な滞納期間があり、今回は”再犯”なのであった。いよいよ堪忍袋の緒が切れた理事長は、債権回収にかかる費用も覚悟した上で管理会社に予算立てを依頼すると共に、「1円単位で絶対に回収しましょう」と理事会の場で決意を口にした。

その後も滞納を続けた区分所有者Aの債務は、2022年8月時点で内訳として、滞納管理費等元金:約75万円、遅延損害金:約31万円、弁護士費用等:約34万円となり、請求すべき総額は140万円を超えている。

不動産投資家の依田泰典氏から、管理組合が留意すべき着眼点や滞納が管理組合に与えるダメージなどに関して、解説をもらった。

「管理費や修繕積立金の滞納問題に悩む管理組合は少なくありません。管理組合の財政状況や滞納金額にもよりますが、長期間に渡る滞納が解消しなければ、管理組合の日常の運営にさえ重篤な支障を与えかねません。

滞納者に対しては、管理会社からの督促等初動がとても重要になります。まだ、数万円と油断をしていると、あっという間に数十万円の滞納になってしまいます。債権回収を依頼する弁護士費用も合わせると洒落になりません。

したがって、管理組合としては、毎月送付される月次レポートを確認し、長期滞納につながりそうな兆候を感じたら、すぐに管理会社と密接に連携をして督促をしてもらう必要があります。

管理会社の担当者によっては、滞納問題への対応に慣れていないこともあります。担当者が、滞納者に対して電話や手紙、訪問によって督促をしても、滞納者にとっては『蛙の面に水』というケースも多く、往々にして、他の返済がある場合等は放置されがちです。結果、管理組合への返済がどんどん後回しになってしまい、滞納金額が膨れ上がってしまうこともあります。

そして、最悪の場合、それを見ていた管理組合の他の組合員が、『自分も滞納しても何もお咎めがないだろう』と勘違いしてしまい、別の滞納につながってしまうこともあり得ます。

将来、物件を売却したいときに、管理組合全体の滞納金額が多いと、金融機関からの融資評価にも悪影響を及ぼし、資産価値の低下につながりますので要注意です。」

共用部分のパフォーマンスも物件の資産価値を決める重要なファクターだ。
共用部分のパフォーマンスも物件の資産価値を決める重要なファクターだ。

区分所有者の義務、そして管理者の訴訟追行権

区分所有法では管理者の訴訟追行権として、「規約、または集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために原告または被告となることができる」旨が定められている。そして区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合の最も重大な措置の一つが「競売請求」である。

条項にもなぞらえて呼ばれる「59条競売」を請求するには、「義務違反者にあらかじめ『弁明の機会』を付与した上で、集会の特別決議(区分所有者及び議決権の4分の3以上)を経て必ず訴訟上で請求する」を満たすことが必要だ。

過半数による普通決議でなく4分の3以上の特別決議が求められるのは、専有部分の競売がそれほど重大な影響がある事象で、慎重な判断が求められるからに他ならない。

その後、2022年に入ってから訴訟提起を進めた結果、区分所有者Aの債務に対する判決が確定した。

管理組合は59条競売を申し立てるために、まずは債務者へ判決の確定を通知すると共に「弁明の機会」を付与した。その結果、ようやく本人からの連絡を受け取ることができた。

「滞納分は支払いをしたうえで売却をしたい。その際には任意売却を希望します。」との内容だった。

しかしながら、理事長の怒りは収まっていない。管理会社に対しては以下のようなコメントと共に対応を依頼した。

「そもそも長期間に渡り区分所有者の義務を怠ってきたことに加え、督促も無視してきた。あまりにも不誠実すぎます。A氏の言う任意売却などという生ぬるいことは聞かず、予定通り競売請求を進めましょう。」

前述の依田氏は以下のように解説する。

「滞納者への最終手段である、『59条競売請求』は、管理組合としても避けたいものです。築年数が経過している古い物件の管理組合では、特別決議の承認を得るのに一苦労することもありますし、管理組合には大規模修繕等議論をするべき事案がたくさんあります。

管理組合として、常日頃から、滞納があった場合には厳しく対応をするとともに、管理会社とも予防策について、事前によく話し合っておくことも重要です。

特に、物件が収益用不動産の場合、組合員同士はまず面識がないため、何か問題が起こっても、誰にどう相談をして良いのか見当がつかず、結果として無関心になりがちです。自身が保有する専有部分の収益のみならず、建物全体の運営に関心を寄せることが大切なのです。

管理組合の運営状況に関しては、年に一回総会議案書が送付されます。通常、管理組合にとって重要な意思決定は議案化されますので、ひととおり目を通してみると良いでしょう。また、総会に参加をして管理会社や組合員とコミュニケーションを取っておくこともおすすめします。」

こと管理組合による滞納管理費等の回収は、専門的な知識・ノウハウを有する金融機関の債権回収とは異なり、手間や時間などの回収コストが膨大となり得る。

そのため、管理費等の滞納においては管理規約に定めがなくても法定利率による遅延損害金の請求ができるし、消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定することもでき得る。

マンションのオーナーにとって自らの義務を果たすのはもちろんのことだが、積極的に管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努めることで、資産価値の維持・向上という観点でも新たな気付きがあるだろう。

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執筆:三刀流大家

中島さん(三刀流大家)

■ 主な経歴

健康関連業界で都内に勤務する現役サラリーマン。ヨーロッパ駐在を経て帰国したのち、副業テニスインストラクターとしても活動。兼業大家でもある”三刀流”ライター。
趣味・ライフワークは、読書、映画、献血、テニス、日記、ワイン、高カカオチョコ、コーヒー、モーツァルト、CHAGE&ASKA、キン肉マン。

北海道大学卒業。薬剤師免許、バイヤー向け資格CPP-A級(Certified Procurement Professional)保有。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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