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高齢者は手堅い入居者。アミックス、賃貸見守り契約で高齢者入居後の孤独死懸念を払拭。戸別訪問で関係構築も

賃貸経営/商品・サービス ニュース

2022/01/17 配信

人口減少に加え、コロナ禍でワンルーム等に居住していた若い入居者が退去、空室に悩んでいる人も多いのではなかろうか。

足立区、葛飾区、江戸川区をメインに木造アパート約1万戸を管理する管理会社アミックスは満室が続いていた3年ほど前からこうした事態を想定、何をすべきかを検討してきたという。その結果が2021年12月1日からスタートした株式会社OAGライフサポート(以下OAGライフサポート)との業務提携だ。

提携にあたってのサービスの概念図
提携にあたってのサービスの概念図

具体的には同社の賃貸見守り契約を導入することで日常的な安否確認に加え、入居者に何かがあった場合でも契約の解除、残置物の撤去など、これまで高齢者入居で懸念となっていた事項をスムーズに解決できるようにした。これによって同社では安心して高齢者の入居を進められるようになるという。経緯と今後の展望について聞いた。

満室時からスタートした将来の空室対策

同社が3年ほど前に将来の空室について対策を考え始めた時、思い浮かべたのは高齢者などの、いわゆる住宅確保要配慮者の入居である。一度入居すれば転居はほとんどなく、家賃に関して交渉が入ることも少ないなど、高齢者等はある意味手堅い入居者である。その一方で入居中の不測の事態その他への懸念もある。

「そこで高齢者等、一般には賃貸住宅への居住が拒否されがちな方々を入居対象として考えた際に何が障壁になるのかを勉強しようといろいろな活動を始めました。地元の議員さんに相談、行政の担当者に話を聞いたり、地域包括支援センターに相談に行く、弁護士さんと入居者が亡くなられた場合のリスクヘッジをどうするかなどと具体的に話しあいもしていました。

そんな中で当初思っていたのとは違う問題も見えてきました。新たに高齢者に入居してもらう場合の懸念だけでなく、すでに入居している人の高齢化です。40代で入居された方が20年住み続けると60代、実際にはそれ以上の方もいらっしゃる。所有者も同様に高齢化している。所有者の物件の価値をどう維持するか、いろいろ考えるべきことがあると思うようになりました」とアミックス賃貸事業本部の深澤成嘉氏。

そんな時に知り合ったのが今回提携をしたOAGライフサポートの太田垣章子氏だ。太田垣氏は賃貸トラブル解決のパイオニア的存在であると同時に家族に頼れない・頼らない「おひとりさま」の老後とその先に関しての総合的な支援事業を模索してきた。それが結実したのが今回提携に至った賃貸見守り契約である。

背景にはコロナ禍の2つの変化

現場からも見守りなどのサービスの必要性を指摘する声が挙がっていた。その背景のひとつがコロナ禍で増加した入居者の自殺である。

「1万人以上の入居者がいるため、毎年、ある程度の数はありましたが、コロナ禍でそれが増加、この2年で16人の方がお亡くなりなりました」(深澤氏)。

中でも関係者にショックを与えたのは築30年の物件をリノベーションした部屋に入居、わずか2週間で命を絶った24歳の入居者の件だ。所有者にとってはもちろん、管理会社にとっても痛恨の出来事だった。それを受けて同社の管理業務部顧客サービス課の金子佳太氏が深澤氏に尋ねた。

「何か、予防する方法はないのでしょうか」。

孤独死対策として分かりやすいのは見守り機器の設置だが、既入居者に新たに機器を導入してもらうためには入居者に直接コンタクトを取り、説明をした上で納得してもらう必要がある。かなりの手間だが、幸いなことに、ちょうどそのタイミングでもうひとつの、コロナ禍で増えた問題が改善されていた。騒音クレームである。

アミックスでは社外にコールセンターを設けており、各種クレームはそこで一度受けることになっている。だが、たいていの場合、コールセンターでは問題は解決せず、トラブルは管理業務部に持ち込まれる。

そのため、コロナ禍で騒音クレームが増え始めた時期には電話が鳴りまくり、管理業務部のスタッフはただただ目の前のクレームに対処することで追われていた。それでは自殺も含め、入居者のケアのために人員を割くことは難しい。

そこで、同社ではコールセンターである程度のクレーム処理ができるようにと業務の改善に取り組んだ。トラブルが管理業務部に持ち込まれた場合にどう対処しているかを伝え、コールセンターで解決する部分を増やす努力をしたのである。その結果、2021年1月には管理業務部が対処すべきクレームは激減。ようやく入居者への対応ができるようになったのである。

人生100年相談室を作り、訪問を開始

といっても、それまで付き合いの無かった管理会社がいきなり入居者を訪問しても不審がられる。そこで深澤氏が声をかけたのが長年コミュニティを重視するコミュニティ賃貸に関わってきた久保有美氏である。

人生100年相談室の案内。これをまずDMで送付、その後に訪問を始めた
人生100年相談室の案内。これをまずDMで送付、その後に訪問を始めた
不在時に訪問した時にはこうした挨拶文を投函する。季節に応じて内容を変えたものを用意、健康への留意点などを伝えた
不在時に訪問した時にはこうした挨拶文を投函する。季節に応じて内容を変えたものを用意、健康への留意点などを伝えた

不動産事業者としてだけでなく、社会福祉士としての顔も持つ久保氏は「アミックス人生100年相談室」と名付けたチームを作り、まずはDMを送付した上で戸別訪問をするというやり方で入居者へのコンタクトを始めることを提案した。DMには「漠然と今後が不安」「家賃の支払いが今後不安」「もしもの時どうしよう」などと高齢者が気にしているであろう文言も入れた。

話を伺った右から深澤氏、金子氏、阿比留氏
話を伺った右から深澤氏、金子氏、阿比留氏

DM送付後、前述の金子氏、同じ賃貸管理部顧客サービス課の阿比留政和氏など100年相談室のスタッフが入居者宅の訪問を始めた。電話をしても出てもらえないだろうし、アポを取ってお邪魔するという話でもない。だとしたら、直接行ってみようという判断だ。

まずは年齢が高い人から訪問することにした。そこで最初に訪問した女性2人の対比が忘れられないと金子氏。

「お一方は私たちの訪問時、福祉サービスを受けていらっしゃり、一人で生活はしているものの近くにお身内もいらっしゃって見守られているご様子。ところが、もうお一人はドアも3分の1しか開けてくださらず、部屋へはもちろん入れていただけない。私たちはこうした方々に積極的に関わっていかなくてはいけないんだと思いました」。

たまたま、更新時期が近かったこともあり、金子氏は後者の女性宅に1週間に1度くらいの頻度で何度か通い、室内には入れてはもらえないものの、ドアを開けて飲み物を渡されるなど関係を構築していった。

ところがある日、知り合いという人から彼女と連絡が取れないという通報があった。利用している生協の宅配が玄関先に置かれたままという状況を聞いて、金子氏は急ぎ、彼女宅へ。想像した通り、すでに亡くなられており、金子氏は報告のための電話に声が出ないほどのショックを受けた。

「見守りその他のサービスの必要性を強く感じた出来事でした」。

高齢者はサービスを知らない

訪問を始めて分かったのは高齢者が福祉サービスなどについての知識がないということ。

「助けてもらえることを知らないので我慢してしまい、SOSを出せない人が多いのです。身体が動きにくくなって生活に不便していても、それを手助けしてもらえることを知らないのでずっと不便なままに暮らしている人も多数います。困っていることはありますか?と聞いてみたら、入居した時点からずっとエアコンが壊れていたという人も。

その一方できちんと情報を提供すれば地域包括支援センターはいろいろな手助けをしてくれます。そこを繋いでいくのが大事と考えています」と阿比留氏。

阿比留氏は以前、室内で転んでしまった70代後半の入居者からの連絡を受け、救急車を呼ぶとともに地域包括支援センターに連絡、以降、同センターの面倒見の良さに驚いた経験がある。

「管理会社は高齢入居者の情報を持っており、それを福祉サイドと共有できれば入居者にとっては安心です。それに加え、こうした連携は孤独死などを防ぎ、建物所有者の財産を守ることにもなります。そう考えると資産管理という観点からこれは管理会社がやるべき仕事といえます」。

こうして高齢者と接するうちに契約を利用してくれる人も徐々に出始めている。また、長らく住んだ部屋から移動する人も出てきた。

「2棟ある物件で2階に居住する高齢者が足が悪く、辛そうだったので隣の棟の1階に引っ越しませんかと提案しました。とても喜んでいただき、引っ越しを楽しみにされています」と金子氏。

1階への引っ越しで今後も住み続けてもらえるようになったことに加え、管理会社にとっては長期居住者の部屋のメンテナンスができるようになることもメリットだという。

「長期に居住、部屋に入れていただけない高齢者のお宅はモノがびっしり貯まった、いわゆるごみ屋敷に近くなっていることもあります。また、居住者宅は設備その他の更新、メンテナンスができず、建物全体としてみるとあまりよくない状況。それを適宜移動していただくことで入居者に喜んでいただき、建物を良い状態に保てるとしたら、所有者の資産価値にはプラスになると考えています」と深澤氏。

一般に管理会社はクレームを恐れて入居者と関わりたがらないが、関わることによってメリットも大きいのである。

サービスを前提に高齢者入居を促進

現在同社では既入居者宅を訪問、お困りごとを聞くと同時にサービスを説明、契約を進めている。訪問時に会えない場合も久保氏が考案した季節ごとの生活の注意事項の書かれた挨拶状を投函するなどの細かい工夫で入居者との距離は確実に近づいており、これまでクレームをまくしたてられる一方だったスタッフはこの仕事で初めて感謝の言葉を聞いたとうれしそう。クレーム対応から一歩進んだ入居者ケアは管理会社の仕事の質向上にも寄与しているようである。

また、今後は新規の高齢者等の入居も促進していくという。

「しばらくの間、高齢者入居についてはお身内の方と契約するという形を取ってきていました。そうすれば亡くなられた時の契約解除、残置物の処理その他の問題を回避できたためです。ですが、このサービスを前提にすれば高齢者ご本人との契約が可能になり、お身内には頼りたくないという人の入居を促進できます。

同時に保証会社ともやり取りを重ね、お身内、連帯保証人がなくても保証をしてもらえるような仕組み作りに取り組んでいます。この仕組みがうまく行くようになれば、安心して高齢者に入居いただくことができるようになるのではないかと考えています」(深澤氏)。

利用料金は契約時に69歳までが1万1000円、70歳代が2万2000円、80歳代が3万3000円(以下も含め、すべて10%税込み。契約時に一括払い)で、月額2200円を口座振り込みする形になっている。

見守り契約を紹介するパンフレット。訪問してみると気にはしていたが、具体的に何をすれば良いかが分からなかったという高齢者もいらっしゃるそうだ
見守り契約を紹介するパンフレット。訪問してみると気にはしていたが、具体的に何をすれば良いかが分からなかったという高齢者もいらっしゃるそうだ
入居時にここまでのことが契約できていれば年齢に関係なく入居してもらえるのではなかろうか
入居時にここまでのことが契約できていれば年齢に関係なく入居してもらえるのではなかろうか

高齢者入居に当たってはいくつかの懸念があるが、そのうちでも大きな孤独死とそれに付随する契約解除、残置物処分の問題が入居時の契約で回避できるのであれば入居を考えて良いという建物所有者も増えるはず。同社の取組みの動向によっては追随する管理会社も出てくるのではなかろうか。今後の推移を見守りたい。

健美家編集部(協力:中川寛子)

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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