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不動産と福祉が合体。住居+コミュニティスペース+地域医療拠点の多世代型アパートが賃料、地域の価値を上げる?!

賃貸経営/まちづくり ニュース

2021/02/08 配信

ノビシロハウス亀井野全景。左が既存アパートを改修した部分で、右側が新棟
ノビシロハウス亀井野全景。左が既存アパートを改修した部分で、右側が新棟

いずれも人を相手にする仕事でありながら、最近まで不動産と福祉は互いにどこか遠い存在だった。だが、その両者が協業することで新たな価値、チャンスが生まれる可能性がある。2021年1月に藤沢市亀井野に誕生したノビシロハウス亀井野はそのひとつの試みである。

空室は地域の価値を毀損するという危機感

ノビシロハウスの企画、運営、管理を手掛ける株式会社ノビシロは不動産、福祉、ITなどそれぞれに異なる分野の専門家が集まって一昨年9月に設立された。孤独死や認知症が懸念されるとして住宅が借りにくい高齢者の問題を協業によって解決していくことが目的だ。

内覧会で。右があおいけあの加藤氏。左は不動産会社を経営、ノビシロの代表取締役でもある鮎川沙代氏
内覧会で。右があおいけあの加藤氏。左は不動産会社を経営、ノビシロの代表取締役でもある鮎川沙代氏

その専門家の一人に株式会社あおいけあの加藤忠相氏がいる。あおいけあ、加藤氏で検索をかけると著書や映画、出演したテレビ番組や数多くの記事がヒットする、介護の業界ではよく知られた存在。その加藤氏の経営するグループホーム、小規模多機能型居宅介護施設は藤沢市亀井野にあり、このまちはもともと加藤氏のホームグラウンドでもあるのだ。

そこへ昨年秋、アパートを購入しないかという話が舞い込んだ。建物は2004年築の2階建てで全8室。それほど古いわけではないが、入居者がいるのはわずか2室のみ。賃料は4万円台前半と賃貸経営として考えると惨憺たる有様である。

この背景には学生頼りに賃貸住宅を建ててきた地元の問題がある。この地の最寄り駅、小田急江ノ島線の六会日大前にはその駅名の通り、日大および日大藤沢高校などが集まるキャンパスがあり、大半のアパートはその学生目当てで建設、経営されてきた。

ところが、一昨年にはアメリカンフットボール部の悪質タックル問題で日大が嫌われ、昨年はコロナ禍。立て続けに学生の姿が消える事態が出来、この物件に限らず、空室が増加することになったのである。

加藤氏はこの状況を地域の価値が落ちる問題と考えた。この地に不動産を所有しているものとしては深刻な事態である。

では、それを防ぐためにはどうすればよいか。ヒントになったのは加藤氏の運営する施設に入りたい、働きたいと全国から集まってくる人がいるという事実だ。

日本国内のみならず、世界的にも知られる加藤氏の施設だが、地元密着で経営されているため、この地域の住民にならなければ入所はできない。そこで、この地域に引っ越してきてでもという人がいるのである。人気の施設や学校などがある地域に人が集まるのは知られた話だが、福祉施設でも同じことが起きているのだ。

であれば、高齢者がこの地に住める賃貸住宅を作ればどうだろうと考えるのが一般的だ。だが、加藤氏はちょっと違うことを考えた。高齢者が住めるのはもちろんだが、だからといって高齢者向けではなく、若者が住みたくなる住宅を作ろうと考えたのである。

内覧会では建物そのものについてはもちろん、この住宅に込める思いも語られた
内覧会では建物そのものについてはもちろん、この住宅に込める思いも語られた。メンバーにIT関係者がいるため、見守りのための機能も充実している

「高齢者が若者を育てる住まいを考えました。そのため、購入後改装したアパートの2階の2室は朝出かける時に建物内の高齢者に行ってきますと声をかける、月に1回のお茶会に参加、手伝うことを条件に家賃7万円(管理費1万円)の部屋に半額で住めるようにしました」。

月に1回のお茶会はフランスで行われている隣人祭りを参考にした。

これは高齢女性が周囲に知られることなく亡くなったことにショックを受けた人が1999年に始めたもので、現在ではフランス全土はもちろん、日本を含む世界で開かれるようになったイベント。中庭などに集まって一緒にお茶を飲むだけと内容は至ってシンプルながら、これがきっかけとなつて周囲に目を向ける、交流が始まることも多いのだとか。

すでに将来はソーシャルワーカーになりたいという高校2年(!)男子が母からの紹介で入居申し込みをしているそうで、高齢者を含め他者と関わりたい、それを仕事にと考える若い人たちは意外に多いのである。

隣接した駐車場に新棟を建設、複合的な空間に

ノビシロハウスは加藤氏が購入、改装したアパートとその隣に新設された、やはり2階建ての2棟からなる。

1階の車いす利用も想定して作られた住戸。といっても車いす利用者専用というわけではない
1階の車いす利用も想定して作られた住戸。玄関、廊下などが広くなっている。といっても既存アパート利用のため、車いす利用者専用というわけではない

アパートは20u前後のワンルームで1階は車椅子利用になっても暮らせるようにと玄関、廊下、水回りを広く取る改装が行われた。トイレは介助者がいるなどの場合でも使えるように広く取られており、便器も介助者と正面から目を合わさないような向きに配されている。キッチンには車いすでも使えるようなスケルトンタイプが採用されている。元々室外にあった洗濯機置き場は室内に作られてもいる。

手すりを設け、広く作られたトイレ。一般的には入口側に向けて便器が置かれるが、それだと介助者と目が合いやすい。それを避けるための配置だという
手すりを設け、広く作られたトイレ。一般的には入口側に向けて便器が置かれるが、それだと介助者と目が合うことも。それを避けるための配置だという

ただ、既存のアパートの改装になるため、どうしても段差はある。高齢者だけ、身体に不自由がある人だけが入ることを想定しているわけではない普通のアパートで、車椅子利用になっても可能な範囲で配慮があると考えるのが妥当だろう。

ただ、それ以上に特徴があり、面白いのは新築された棟の使い方である。これがあるからこそ、ノビシロハウスは他のアパートと違うと言える部分で、医療、介護、コミュニケーションのハブとなる建物になっているのである。

これからカフェ、ランドリー(それぞれ別の事業者)が入る予定の1階のスペース
これからカフェ、ランドリー(それぞれ別の事業者)が入る予定の1階のスペース

まず、1階には内覧会でも使われた広い空間があり、ここにはカフェ、ロースタリー(3月から稼働予定)が入り、ランドリーも入る計画。前述のお茶会はここで開かれる予定で、さらに月に1回はドクターに気軽に健康面での不安や日々の相談できるくらしの保健室も開催される。

血圧、熱を測りながら雑談するような緩い感じの場が想定されている。ちょっと立ち寄って洗濯をしている間、お茶をし、そこにいる人と会話する。そんな空間になるというのである。

2棟を繋ぐ階段、廊下スペースから入口方向を見たところ。出入りには顔を合わせる作りになっている
2棟を繋ぐ階段、廊下スペースから入口方向を見たところ。出入りには顔が合いやすい、それぞれを感じる作りになっている

2階には訪問看護事業者とクリニックが入る。クリニックは在宅医療に取り組む医療法人社団悠翔会が入る予定。近くに加藤氏の経営する前述2施設もあることを考えると、ここに住む人は地元の医療、介護体制を心強いものと感じるのではなかろうか。

2階の事業者が入るスペース。開放的に作られている
2階の事業者が入るスペース。開放的に作られている

さらにここならではのポイントがある。それは新棟は商業施設という位置づけではなく、地域の居場所、高齢者のための仕事の場として使えるように用意されたということ。

「地域の高齢者の働く場としてカフェの事業者運営のもと、ランドリーを使用した家事代行サービスやロースタリーでコーヒーの袋にラベル貼りをするなどの軽作業を高齢者に行ってもらう予定です。同時に新棟1階全体で地域の多様な人たちが交流、居場所となるよう様々な活動も行います」。

地域にもっとノビシロハウスを

こうした住宅があれば高齢者はもちろん、身体に不安のある人や会話のある暮らしをしたい人、介護や医療に関心のある人など幅広い人が関心を持つことだろう。加藤氏もすでに近隣で物件を探しており、どんどん広げていきたいという。地域でのワンルームの賃料相場は4万円ほどで、今は賃料を下げてもなかなか決まらない状況が続く。そのまま貸し続けるよりは加藤氏、ノビシロのノウハウを生かして改装、学生以外の高齢者も含む幅広い層をターゲットにするほうが賢明だろう。

南向きの明るい住戸。奥まで日が差しこみ、気持ちが良かった
南向きの明るい住戸。奥まで日が差しこみ、気持ちが良かった

投資の観点でいえば新棟部分の土地はもともと加藤氏が所有、駐車場として使われていたものだが、1棟は新築、アパートは購入の上で改装と費用はかかっているが、それでも家賃は1.5倍になり、都内での一般的な投資よりは回るという。今回、モデルとなる物件ができたことで、周囲のオーナーにもアピールしやすくなる。これまで縁のなかった福祉と不動産が結びつくことで、新たな、そして収益のあがる不動産の使い方が生まれることを期待したい。

健美家編集部(協力:中川寛子)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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