臭いは五感のうちでも最も脳にストレートに伝わるもの。しかも、所有者、不動産会社など、その臭いに日常的に触れていると感じなくなるものでもあり、客観的に感じにくいもののひとつである。
だが、内覧してもらう部屋に入った途端に「何か、臭う」と思われては入居は決まらない。そこで試してみて頂きたいのが、水回りを中心にこれ1本でほとんどの悪臭対策になる塩化ベンザルコニウムである。
これは医療の現場では珍しくない薬剤のひとつで、病院の玄関にある手指消毒剤、市販のウエットティッシュ、おしぼり、お手拭きやコンタクトレンズ洗浄液、制汗・デオドラント剤などに配合されている。無色・無臭で役割はずばり、消毒、殺菌である。
そのため、注意したいのは汚れを落とす力、つまり洗浄力はないということ。掃除をした後に使うのが基本である。

具体的な使い方を見ていこう。日本薬局方のベンザルコニウム塩化物液(逆性石けん液)として「オスバンS」という商品名の殺菌消毒剤が市販されているので、まずはこれを手に入れよう。600ml入りで800円程度で購入できる。

使う際にはこれを200〜500倍に希釈して使う。200倍にする場合には水1Lに5mlを薄めるが、これで200mlのスプレーボトルで5本分にもなる。それだけ作って金額的には7円程度だから、消毒用エタノール等と比較すると非常に安価である。
基本的な使い方としては、布等にスプレーしたもので拭くか、直接噴霧する。ただ、次亜塩素酸ナトリウムほどではないものの、退色や変色のリスクが全くないわけではないので、最初は目立たないところで試してからの方が安心だ。使用時はゴム手袋等もはめておいた方が無難でもある。
また、必ず薄めること。原液または濃度の高い液が皮膚に付着すると、炎症を起こすこともある。もし、付着した場合にはすぐ水で洗い流すこと。もちろん、目に入るなどした場合も同様だ。
もうひとつの注意点は一度希釈した水溶液はできるだけ当日中に使い切るようにすること。誤飲などすると命にかかわるので、注意したい。
以下、場所ごとにどう使うかを見ていこう。
●トイレ
通常の清掃を行った後、便器に座ったときに背中となる側の壁、床の奥までにスプレーした後、拭き取る。こうすることで大腸菌、ブドウ球菌などを殺菌、消臭できる。
●風呂場
通常の清掃を行った後、壁、風呂蓋(特に浴槽側)にスプレーし、他の洗剤などで汚染されていない新しいスポンジなどで塗り広げ、シャワーなどですすぐ。天井はスプレーを含ませた新しい雑巾で拭く。殺菌、消臭に加え、カビ予防にも効果的だ。
●キッチン
閉め切った食器棚、食品庫、シンク下収納などはスプレーを含ませた新しい雑巾で拭く。消臭、カビ対策となる。
●エアコン
フィルターにカビが散見される場合はスプレーを吹き付け10〜20分置いた後、風呂場などで洗い流す。ただし、内部清掃は専門業者に任せるのが無難。カビ臭いような場合は内部での繁殖が懸念されるが、素人ではどうにもならないためだ。
●押入れ、クローゼット、下駄箱などの玄関収納
スプレーを含ませた古タオルなどで拭く。拭いたものは廃棄する。消臭、カビ対策になる。
●その他
賃貸住宅ではあまり想定はできないが、脱衣所の足拭きマットや雑巾、部屋干しで臭いの酷いものなどは200倍〜500倍希釈した液体に漬け込むのも手。時間は30分から2時間ほど。その後、もう一度普通に洗って乾燥させれば、臭いは落ちているはずだ。
健美家編集部(協力:中川寛子)