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本が人間関係の媒介に。住宅でも使われ出した「ブックマンション」という仕組み

賃貸経営/空室対策 ニュース

2020/10/26 配信

本を媒介にした関係作りが広がっている。以前から本を置いて図書室として住み開きをする、本をキーワードに人を集めるなど兆候はあったが、2019年7月に武蔵野市で中西功氏が始めたブックマンションの仕組みが広く注目を集め、同様のやり方をする場所がじわじわ増えてきているのである。

小さなビルの地下を利用、最初に登場したブックマンション。仕組みが秀逸で、それが広がった理由だ
小さなビルの地下を利用、最初に登場したブックマンション。仕組みが秀逸で、それが広がった理由だ

では、まず、ブックマンション(設置場所によって名称は微妙に異なる)とは何か、である。簡単に言えば一箱書店の店主になりたい人を集めた空間である。自作の手芸品などを置くレンタルボックスという仕組みがあるが、それの書籍版と言っても良いだろう。毎月なにがしかの場所代を払うことで一箱分のスペースを自分の書店とするのである。

だが、この仕組みがレンタルボックスと大きく違うのは書籍という品が持つ力である。世の中一般的には本は売れてない商品であり、斜陽産業とすら言われるが、それでも手芸作品との差は歴然とある。

まず、書籍は会話の糸口になる。電子書籍では何を読んでいるかが分からないが、書籍はカバーをかけている場合以外ならタイトルが分かり、相手の興味関心が分かる。人となりがある程度推測できると言っても良い。それがきっかけになるのであれば、互いに似たような興味関心を持っていることが分かり、スムーズに会話が始まりやすい。しかも、年齢、性別その他を超えてこうした関係が作れるのが書籍のすごいところである。

そのため、レンタルボックスでは隣に場を借りている人との間で会話が生まれることはあまり見ないが、ブックマンションでは本の入れ替え時などに隣の人、行きあわせた書店主同士で会話が始まることも多々あるとか。コミュニケ―ションツールとして非常に有効なのである。

また、本は他の商品と違い、貸し借りが容易である。最近は神経質に他人の書籍を敬遠する人がいないではないものの、子どもの頃から図書館という存在に馴染んでいるからだろうか、ある意味、書籍は共有物という意識がある人が少なくないのだ。

一方で読んでいる人を邪魔しないようにという意識も働く。本を介するとほど良い距離感を取りやすいのである。

それに何より、多くの人は書籍に対して知的な関心、敬意を抱いているようで、自分の書店を持つということに関心を持つ。一軒の店となると大変だが、一箱くらいなら好きな本、趣味の本などを集めれば埋められる。だからだろう、ブックマンション以降何カ所かで募集について聞いてみたが、いずれの場所でも募集早々に埋まったという声を聞いた。

この力に注目、ブックマンションには自分たちでもやってみたいという人も多く集まっていると聞いた。書店が無くなってしまったまちに新たに書店を誘致するのは難しいが、10人、20人と複数人が集まって場所を借りて始めるなら、一人当たりの負担を少なく、本とそれを通じたコミュニケーションのある場を作ることはできる。実際、ブックマンション以降、いくつかの場が生まれているのである。

こちらは西日暮里のブックアパートメント。駅のすぐ脇の建物の1階にある
こちらは西日暮里のブックアパートメント。駅のすぐ脇の建物の1階にある

当記事でも紹介したのが西日暮里駅の脇にある複合商業施設西日暮里スクランブルの中に作られたのが西日暮里ブックアパートメント。棚を眺めて見ると有名な著述家の棚などもあって驚かされる。

本を媒介に様々なアイディアで賑わいの創出が考えられている
本を媒介に様々なアイディアで賑わいの創出が考えられている

最近では西日暮里駅構内で新たに旅する本棚なる仕組みも誕生した。自分の本をブックアパートメントを経由して構内に陳列、知らない人に読んでもらう仕組みで、自分の手を離れた本があちこちの人へ渡って旅することを想像することで、人とのつながりが感じられるというものである。

bookstudio_本棚
ブックスタジオの本棚。開いている日が限られる分、人に会う確率も高まるという

住宅街の中に誕生した例もある。東急池上線池上駅周辺では2017年にリノベーションスクールが行われて以降、空き家対策、産業振興などの地域課題をテーマにした地域主体の活動が続けられており、2020年秋以降、空き家を利用した新しい場が次々と生まれている。そのひとつにブックスタジオが作られたのである。

舞台となったのは設計事務所と動画配信スタジオが共同運営するまちに開かれたギャラリー&イベントスペース「ノミガワスタジオ」1階で、金・土の13時から5時間だけオープンする。書店主になった人たちは順番に店番をすることになっており、その日には店内にある大きなテーブルが使える。面白いのはその場を利用して、ワークショップをやってみよう、何かの展示をしてみようと書店主たちが自らイベントを作り出しつつあること。場があれば、やってみたいことがある人は意外に多いのである。

大谷田団地の「読む団地」のブックリビング。リモートワークもでき、それも人気の要因のひとつ
大谷田団地の「読む団地」のブックリビング。リモートワークもでき、それも人気の要因のひとつ

さらに住宅に取り入れた例も出てきた。足立区の大谷田団地7号棟1階に誕生した「読む団地」ジェイヴェルデ大谷田である。ここは元々足立区が所有、かつては保育士の寮として使われていたそうだが、その後、倉庫となり、さらに公募を経てシェアハウスに生まれ変わった。駅からは距離もあり、若い人に魅力的な場になるようにと本をツールとして使うことに。

廊下の壁にも本棚が。入居者が自分の本を置くなどしており、どんな人なのか、興味関心が透けて見える
廊下の壁にも本棚が。入居者が自分の本を置くなどしており、どんな人なのか、興味関心が透けて見える

といっても書店主になるという仕組みではなく、建物内のあちこちに本があるという形である。リビングには壁一面に本が置かれ、廊下にも入居者が自分の好きに本などを置けるような棚が設えられているのである。本好きばかりが入居するわけではないそうだが、本が身近になると読むようになる人もいる。2020年3月に入居が始まって半年余というのに、すでに入居者間にはコミュニケーションが生まれているようで、本の持つ力を感じた。

駅からは多少歩くが、その分、住環境に恵まれた大谷田団地。入居者にも評価は高い
駅からは多少歩くが、その分、住環境に恵まれた大谷田団地。入居者にも評価は高い

同物件では本以外にも住環境や充実した設備等住みたいと思わせる部分が多く、そうした複合的な要因からだろうとは思うが、駅からの距離では不利な物件ながら人気は高い。今後、在宅勤務などで駅からの距離の優先度が相対的に低くなっていくであろうことを考えると、気持ちよく過ごせる物件を作ることはこれから選ばれる物件にとっては大きなポイントだろう。

これまでいろいろな物件を見て来たところでいえば、本以外にも食や趣味など触媒になりそうなツールはあるものの、広範な相手を対象にできる、食などに比べて管理その他のコストが比較的かからないなどと考えると、本には大きな可能性がある。参考になるのではなかろうか。

健美家編集部(協力:中川寛子)

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