2年ほど前から、賃貸DIYをしたい入居者向けにサポート活動を行っているすけさん。自宅をリノベーションしながら、「自分らしい暮らしを作る」という視点で、家具や住まいのDIY事例や作業のコツをブログ「99%DIY」で紹介しているが、「素人でスタートした自分のように、道具の使い方やどんな建材を選べばいいか、というようなDIYの入口の部分がわかれば、もっと気軽にDIYが楽しめるようになるんじゃないか?と感じたことが、サポートを始めたきっかけ」だと話す。
入居者DIYは、賃貸という制約がある中でも「自分らしい暮らし」が実現できることに加え、大家側にとっても空室対策になるというメリットがあると感じているという。

自分でやる楽しさを後押し
すけさんのところに来る依頼は、「TVを壁掛けにしたい」「収納棚を作りたい」というような、生活の不具合を解消し利便性を高めるような内容が多く、基本的にはすけさんのDIY事例やインテリアテイストに共感する人が多いという。
手順としては、まず依頼を受けると、価格・手間・クオリティについてヒアリングを行うことから始める。DIYのアイデア画像がブックマークされている「Pinterest」などを参考に好みのインテリアテイストを絞り込み、価格とのバランスをアドバイスしながら材料を決めていく。
「寸法がわかればいいので、図面も手書きですし、カットはホームセンターなどのカットサービスを利用。現場での組み立てはそう難しくないので、すり合せ作業が全体の6〜7割を占めています」。

作業の主体はあくまでも入居者。「工務店ではないので、依頼関係になってしまうとクレームや作業が長期化する原因に。自分の役目は、DIYで工夫しながら生活したい、という入居者の想いを具現化するアシスタントです」と話す。
また、DIYのサポートのため、キッチンやトイレなどの水周り設備、電気設備など、専門工事が必要となる部分、基礎工事が発生するような依頼も受けていない。
さらに、「DIY可能かどうか、対応ができるかどうかよりも、楽しいかどうかを重視している」とも。そもそも、DIYは好きでなければ“めんどくさい”こと。
「DIYをやってみたい」と興味を持っているが、知識がなくどうすればいいかがわからないという入居者に対して、道具の使い方やコツをつかんでもらうことが、すけさんが行っているサポート活動の目的だ。
「一度体験すれば本人のハードルが下がりますので、その後は楽しみながらDIYに取り組む人が多い。DIY業務を依頼するのではなく、DIYのスキルを取得するための初期投資と位置づけてもらえればと考えています」
とすけさん。“Do It Yourself”の一歩を踏み出したい人の背中をそっと押してあげるサポート役、と自らを位置づけている。


大家にとってもメリットあり
このサポート役の存在は、大家にとってもDIY可能物件にするかどうかの判断にも大きく影響するといえる。大家が感じる「どうなってしまうかわからない」「原状回復できるのかどうか」という不安に対して、サポートが入ることで完成後の状況を事前に伝えることができ、安心してもらうことができる。
「大家さんにも作業現場を見てもらえれば、無茶な工事をするのではないんだ、と理解してもらえますし、大家さん自身のDIYに対するハードルが下がるきっかけにもなります」。
また、大家自らがDIYをしている例も増えているといい、「大家DIYならば、壁1面だけクロスに変えるだけでもアクセントになって、差別化につながります」と話す。
いろいろな賃貸DIYをサポートしてきたすけさんが考えるポイントとしては、@工具の用意、A大家側の一部費用負担―の2点。
入居者側のニーズとしては、壁紙の変更や棚、間仕切りといったちょっとした生活の向上が多く、また賃貸物件ということで最初から膨大な費用を掛ける大々的なDIYをするというよりは、ちょっとした金額で利便性を高めたいというニーズが多い。
最初からすべての工具を揃えるのは費用がかかり過ぎるため、もし可能ならば、丸ノコやドライバーなどの電動工具を用意する、あるいはすけさんのようなサポーターに来てもらう、というようなフォロー体制があるとやりやすい。
また、費用の一部補助についても「最初から補助付きをうたい文句にしなくても、DIYの内容を確認した上で補助を出すという形でも構わないと思います。工事すべき部分を入居者が代わりにやってくれ、さらに仕上がりがよければ退去後もそのまま募集をかけられるので、いい差別化につながります」とする。
ちなみにすけさんが手伝った入居者の場合、半数以上が体験後に自分で工具類を買い揃え、DIYしながら生活しており、現在のところ誰も引っ越していないという。
「DIYすることによって住まいに愛着がわき、長期入居につながっています。結果として、入居者DIYが空室対策になっていると感じます」。

入居者DIYへのアドバイス
さて、自宅のDIYから賃貸DIYのサポートまで手掛けるすけさんが、一番雰囲気が変わるDIYのアイデアとして挙げるのは、ズバリ「照明」。
よく初期に設置してある丸いシーリングライトをスポットライトやペンダントライトに変更したり、部屋の隅にフロアランプを置くだけでも、部屋のインテリアのポイントになり、印象も大きく変わるという。「工具を使わずに気軽にできるので、手始めにやるにはうってつけ」(すけさん)。
また昔に比べ、原状回復を意識したDIYパーツが増えていることも、「気軽に楽しみやすくなっている」とも。バネの力で支柱を立て、壁面に棚を付けることができる「ディアウォール」や「ラブリコ」は、2×4材など規格材を利用し、釘打ちやペンキを塗ることもできるため、いまや賃貸DIYでは欠かせないアイテム。
壁のDIYには貼り付けも撤去も楽にできる「はがせる壁紙」、床材にはクッションフロアや、質感がよく敷くだけのフローリングがお勧めで、大体この3つが、すけさんの考える賃貸DIYで必須のパーツだ。
クッションフロアは賃貸物件でよく使われている床材だが、「賃貸特有のテカテカした合板フローリングの見た目がいやだ、という入居者が多く、取り替えニーズはかなりあります。今はクッションフロアもいろいろな種類が出ており、端部を両面テープでしっかりと留めれば簡単にはがれないなど、かなり使い勝手がいい」とすけさん。
カフェ風の板材などを利用したこともあるというが、「意外と反ってしまい、またつなぎ目の処理が必要になるので、フローリング材などを使ったほうが仕上がりはきれいだと思います」とアドバイスする。
健美家編集部(協力:玉城麻子)