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不動産投資家・大家にとってためになる「マンション管理士」の知識

賃貸経営/資格 ニュース

2022/10/22 配信

不動産関連資格の試験シーズンを迎えている。宅地建物取引士の知名度や存在感をはじめとして、近年では賃貸不動産経営管理士が話題になることも多い。

ここで取り上げる「マンション管理士」もれっきとした国家資格の一つで、令和4年は11月27日(日)が試験日である。

過去の試験において問題数が割かれた割合の高い出題分野として、「区分所有法」と「マンション標準管理規約」が上位に来ていることが特徴的である。

一見すると当資格はマンションの区分所有者以外には縁遠く思えるが、内容を紐解くと区分マンションオーナーのみならず不動産投資・大家業全般における事業リテラシー・マインドセット向上にも役立つ点があると考えられた。

そこで今回は、公益財団法人 マンション管理センターからの提供資料やマンション管理士試験内容の一端を紹介しながら、具体的事例と共に物件の資産価値向上への寄与を考察してみた。

マンション管理士の業務についてのアンケートより(平成30年実施)。資格取得者の属性に「会社員」との回答が多いが、大家目線の割合はいかに?
マンション管理士の業務についてのアンケートより(平成30年実施)。資格取得者の属性に「会社員」との回答が多いが、大家目線の割合はいかに?

「特別決議事項」扱いで1年遅れた修繕積立金の改定の例

都内のマンション管理組合Aでは管理業務を管理会社Bに委託している。令和3年の通常総会において、修繕積立金改定の議案が「特別決議事項」として否決された事例を紹介する。

区分所有法において、特別決議事項とは「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」の賛成で可決されるもの、と定義されている。そしてその特別決議を要する議案のひとつに「規約の設定・変更・廃止」がある。

ここで、管理組合Aの規約がどのような記載かを見てみる。

第50条(総会の会議及び議事)

1. 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する

2. 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項に関わらず、組合員総数及び議決権総数の4分の3以上で決する。

一. 規約の制定、変更又は廃止

二.  (以下略)

とある。確かに上記の第50条2項では、区分所有法に則った標準管理規約の記載として「規約の制定、変更又は廃止」が特別決議事項として扱われている。

管理会社Bは当初、これが修繕積立金改定にも当てはまるものと早合点し、特別決議事項として議案に挙げてしまった。その結果、賛成率70.5%を得たものの、4分の3に達しなかったことから否決という顛末を迎えた。

しかしながら管理会社Bはその後、以下に示す別の第51条も併せて見返すことで、翌令和4年には新たな解釈で総会の決議に臨むこととした。

第51条 (議決事項)

次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。

一. 収支決算および事業報告

(中略)

四. 管理費等の額並びに賦課徴収方法

五. 規約および使用細則等の制定、変更又は廃止

六. (以下略)

この第51条によると、上記赤字の通り「管理費等の額」に関する事項は「規約の制定、変更又は廃止」と切り離されていることが判明した。

管理会社Bはこれを根拠として、翌年には修繕積立金改定を「特別決議事項」でなく「普通決議事項」として議題に挙げ、今度は過半数の賛成をもって可決を得られた。

「マンション管理士試験」の内容と照らして考察する

実際にマンション管理士の本試験でも、四択から正答を選び取るためには、例えば以下のような記載を正確に理解しておく必要があるだろう。

・標準管理規約における総会の普通決議事項においては、「出席組合員(書面や代理人で議決権を行使する者も含む)の議決権の過半数」で決する

・建て替え決議の承認を得るには特別決議事項が必要とされ、「組合員総数の5分の4以上、及び議決権総数の5分の4以上」で決する

これらの例で、普通決議事項と特別決議事項では可決に必要な分母からして異なる表現になっていることからも分かる通り、特別決議事項はより多数の賛成によって慎重に可決されるように設計されている。

前述の修繕積立金改定の事例においてもし読者が、修繕積立金改定に賛成の立場だったとしたら?

まさに特別決議事項のハードルの高さが足かせになったことが読み取れる。だが、残念ながら理事会メンバーの中からも、管理会社Bの当初の解釈に対して疑義は挙がらなかった。

自らに区分所有法や標準管理規約の体系的な知識があり、かつ積極的に管理組合に関与する姿勢があれば、令和3年の時点で管理会社Bに助言をすることができたかも知れない。

不動産投資・大家業はやはり情報戦であり、絶えず知識武装する姿勢が必要だ。また、不動産会社の言い分を鵜呑みにしてはいけないという点が物件の売買に限らず管理面においても当てはまった例だろう。

「マンション管理士」創設の経緯と併せて考察する

当資格を司る位置づけとしての法律「マンション管理適正化法」自体が制定されたのは、マンションの資産価値を守り、快適な住環境が確保できるように、との目的からである。

また、同資格が創設された経緯が示された資料にはアドバイザーの必要性も記載されている。

資料「マンション管理の知識」より
資料「マンション管理の知識」より

マイホームとして購入した区分所有者においてもさることながら、快適な住環境を提供する側の不動産投資家・大家においても肝に銘じるべき記載とも言える。

物件を所有する以上、自らの”商品”に対して自ら適正なアドバイスができる専門家になる必要がある、と言い換えられるのではないだろうか。

マンション管理士の本試験範囲は冒頭で触れた「区分所有法」「マンション標準管理規約」以外にも、「民法」「その他法令」「マンションの実務・会計」「建築・設備・維持保全」「建築関連法規」など多岐にわたる。

コンパクトシティという流れに向かう人口減少の日本において「マンション」をより広義の「集合住宅」に読み替えれば、これらの専門的知識習得は消費者としても事業者としても役に立つと言えそうだ。

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執筆:三刀流大家

中島さん(三刀流大家)

■ 主な経歴

健康関連業界で都内に勤務する現役サラリーマン。ヨーロッパ駐在を経て帰国したのち、副業テニスインストラクターとしても活動。兼業大家でもある”三刀流”ライター。
趣味・ライフワークは、読書、映画、献血、テニス、日記、ワイン、高カカオチョコ、コーヒー、モーツァルト、CHAGE&ASKA、キン肉マン。

北海道大学卒業。薬剤師免許、バイヤー向け資格CPP-A級(Certified Procurement Professional)保有。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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