自主管理をしている不動産オーナーもいれば、管理委託契約をして管理会社に任せている不動産オーナーもいる。後者においては、「管理の質」が問われる時代になっている。
ではどうやって、管理会社を選べばよいだろうか。それはもちろん、「これまでの地域の信頼」と「10年先20年先の未来」ではないだろうか。
今回は、これまでの信頼だけでなく未来が大事。そこで「事業継承」というテーマで、管理会社を選ぶというときのポイントについて考察したい。
■永年世話になってきた不動産会社
でも10年後、20年後の後継ぎがいない
管理会社を選ぶ際、大切なのは、ひとつには「地域」での「信頼」だ。手抜き工事があったり、異常に高い見積もりで修繕をしたり、仕事が遅かったりする会社は、地域のオーナーから信頼されず、永くは続かない。
大手であるとか、CMもやっているとか、そういったことよりも「長く地域社会に根付いて仕事をしっかりやってきた会社」であれば、たとえ小さな会社であっても、これから先もしっかりやってくれるだろう。
しかし、そう信頼して来た管理会社の社長が、かなり高齢になってきた。物件も歳をとってきたが、管理会社の経営者も歳をとってきた。経営者ばかりでなく社員も高齢だ。この先大丈夫だろうか。
■最近の入居者の変化や
若い人の流行に敏感か?
部屋を借りる人の多くは、若者である。もちろん、老若男女様々な入居希望者はいるものだが、賃貸市場では、若年層が親元を離れで、進学・就職・結婚・転勤などで部屋を借りる。
となると、建物が古くなる一方で、管理会社も高齢者ばかりだと、「最近の潮流」や「流行りの色」などがどうしてもズレてしまう。
「もう少し若い人も雇ったら?」と言うと「最近の若いもんはすぐにやめちまって・・・」とのセリフ。その「最近の若いもん」が借り手に多いのに、賃貸管理や仲介を任せておいて適格な設備強化や、募集が出来るだろうか。
特に最近は、「ネット無料物件が増え」「オンライン授業やテレワークなどで室内に滞在する時間も増え」「スマホやネット動画などを観る」など時間の使い方も変わっている。
こうした変化に対応するためにも、若い人がいるのかは重要なポイントであろう。同様に「男性ばかり」だと「女心は理解できているか」といった点も気になってしまう
■経営者になにかあったとき、
誰が管理物件を見守っていけるのか
ここで「事業継承」は重要だ。永年、信頼を得ていた社長は、何歳で社長になったのか。創業30周年で、今、60歳の経営者だと言われれば、当然、ベテランで百戦錬磨ではある。しかし、本人は30歳で社長になっていたと考えると、そろそろ30代の経営者候補がいないと心配になる。
賃貸経営はこれからも続く。今、築10年で10年間、そのベテランの経営者にお世話になったとしよう。
では、10年後は築20年、20年後は築30年。さて、売却か建て替えか、大規模リフォームかというとき、80歳の社長で大丈夫なのか、この会社。というか、明日、社長がもし亡くなっても、事業は変わらず継続できるのだろうか。
■管理会社に行って、
なんとなく年齢構成を想像してみよう
例えば、小さな地元の会社に管理をお願いしているとしたら、ちょっとこんな組織なのかなと図をかきながら、見た目年齢でいいので、ちょっと年齢を書いてみよう。
すると、この図のようになっていたとする。ふむふむ、社員Aさんが入居者にはウケがいいな。管理は、ベテランがいて頼もしい。多少、新入社員はいないようだが、今は大丈夫だ。そう今は大丈夫だ。しかし、管理を委託する物件は、あと10年も20年も、出来れば30年も頑張ってほしい。
■不動産DXや
電子契約は?
この年齢構成だと、「いつまでも紙とFAXではダメで、不動産DXとか、電子契約の取り組みはどうする?」と不動産会社に聞くと「そういうのはちょっと難しいし苦手だ。
他社の様子を見てから」などと言うかもしれない。時代は管理業法制定だとか、アスベスト対策が必要になったとか、インボイス制度が始まるといっているのに、40歳の社員Aくんがリーダーになったものの、諸先輩はこれまでと変わらない日常、ということも考えられる。
人気設備の強化をすることもなく、「古くなってきたので、家賃を下げましょう」だけの提案ではこれからは戦えない。もっとネット掲載したらなどと聞くよりも、もう、管理会社変更を検討したほうが大切な物件のため、なのかもしれない。
■管理会社に行って、
なんとなく年齢構成を想像してみよう
とはいえ、これまでよくやってくれた。あえて変えるまでもない。であれば、今は当面満室で問題もないということもある。
そこで、この「見た目年齢」に「20を足してみよう。」
そうすると、この先20年後は、こうなってしまう。
これでは築年を経た、大切な物件を将来に託せない。仮に、社員Aさんが、社長の息子と言っても、まだ存命の親がいるほうが厄介かもしれない。仮に社員Aが社長になっても、自分より年上の先輩社員をマネジメント出来るのだろうか。
とりあえず、管理替えも視野に入れて、他の会社の話も聞いてみるか・・・、と考えても不思議ではない。なにしろ「最近の若いもんはすぐやめてしまうとなかなか採れない」と言っているのなら。
■建物の相続対策というなら、
会社の相続対策はしたのか
こうした際に、「そんな先のことは、また先に考えればよい」だろうか。
実際には収益物件オーナーは、自身が亡くなった時の相続対策まで考えて、今の手持ち物件にリフォーム投資をして満室にするのか、売るのか、建て替えるのか、と未来を考える。こうした相続対策の相談相手であるべき管理会社が、未来のことを考えていていないのでは、心配なるというわけだ。
会社の事業継承もちゃんと出来ていないようでは、大切な資産の相続の相談に乗れるはずもない。
■まずは、次の社長はだれか、
今の社長に聞いてみよう。
物件の将来が心配なように、管理会社の将来もオーナーは関心を持つべきである。
ならば、「もし社長になにかあったら、次の社長は誰?」と社長本人に聞いてみてはどうだろうか。
例えば、創業社長が息子や娘に譲るつもりであると語っているのであれば、一安心かもしれない。
経営のバトンは親族につながれ、大家さんと物件が歳を取っても、パートナーたる不動産会社は若返りを計画にしていくだろう。小さい頃から親の仕事ぶりをみていた親族が、しっかりと経営を学び、経営を引き継いでくれるのではないか。
ならばその親族にもしっかり管理してもらおう。こちらは大切な資産の管理を託すのだから。
また、管理会社の経営者に不慮の事故等があった時にも、社内にしっかりした大番頭さんのような存在がいたり、奥様が不動産経営に参加していたりすると安心だ。
二代目が育つまでの期間は、大番頭さんと奥様がしっかりとタスキをつなぎ、二代目につないでくれる安心感があれば、末永く、賃貸経営のパートナーとなるのではないだろうか。
「そこまで考えなくても」という意見もある。管理変更すればいいだけなので、確かにそういう面もある。しかし、大切な資産の管理。その会社の未来も、客観的に把握していく事も大切ではないだろうか。
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執筆:
(うえののりゆき)