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苦境に立たされる民泊。北海道の民泊の状況は?

賃貸経営/民泊・旅館業 ニュース

2021/04/01 配信

コロナ禍が続く中、インバウンド需要が蒸発した現在、全国の民泊事業者の苦難は現在も続いている。全国で3番目の登録を誇る札幌の状況を調査した。

?民泊写真

観光庁の宿泊旅行統計調査(令和3年2月26日)の報告書によれば、令和2年12月の延べ宿泊者数(全体)は、2,786万人泊で前年同月比▲40.9%だった。また、令和3年1月は、1,681万人泊、前年同月比▲61.0%であった。

日本人延べ宿泊者数は、12月は、2,736万人泊、前年同月比▲27.9%で、1月は、1,637万人泊、前年同月比▲51.1%だった。

そして当然ながら外国人延べ宿泊者数は、12月は、50万人泊で前年同月比▲94.5%で、1月は、45万人泊、前年同月比▲95.4%の実績だった。

この数字を見ても民泊全体の数が大幅に落ち込み、民泊事業者の窮状が手にとるようにわかるのである。

※国土交通省観光庁(令和3年2月26日)資料 延べ宿泊者数の推移のグラフ
※国土交通省観光庁(令和3年2月26日)資料 延べ宿泊者数の推移のグラフ

これを見るとコロナ禍による緊急事態宣言が発令された3月から急激に宿泊者数が減り5月が底だったことがわかる。

※国土交通省観光庁(令和3年2月26日) 延べ宿泊者数推移表
※国土交通省観光庁(令和3年2月26日) 延べ宿泊者数推移表

この表を見ると平成21年の外国人述べ宿泊者数は1829万人だったのが、平成31年・令和元年は1億1565万人と、6倍以上の数にまで増えていたインバウンド需要が、令和2年には平成21年と同じ位の1803万人に激減している事がわかる。
そしてその影響を最も受けた都市の一つが、インバウンド人気の高い北海道である。

※国土交通省観光庁(令和3年2月26日)都道府県別延べ宿泊者数(令和2年12月)と前年同月比
※国土交通省観光庁(令和3年2月26日)都道府県別延べ宿泊者数(令和2年12月)と前年同月比

前年比宿泊者数の減少幅トップ5は以下の通りである。
大阪府 ▲67.3%
北海道 ▲63.7%
東京都 ▲60.0%
沖縄県 ▲53.3%
京都府 ▲48.1%

■苦境にあえぐ札幌の民泊事業者

3/2の日本経済新聞によると、北海道で民泊の廃業が止まらず、札幌市内だけで廃業件数は1000件を超え、民泊大手のTAKE(札幌市)が札幌地裁に破産を申請するなど事業者の民泊離れも目立ち、新型コロナの終息後の観光インフラ不足が懸念される事が書かれている。

実際にこの一年で新たに民泊の営業を届け出た件数が400件に満たない一方、廃業件数は参入を大きく上回っている。
2021年2月8日時点で1393件の廃業で、更に3月9日時点で廃業件数は1422件にのぼっている。

約一年前の2020年2月12日時点で事業廃止を届け出ていのは361件に過ぎず、既に1061件増えたことになる。

札幌市の民泊の宿泊実績によると、20年10~11月の延べ宿泊者数は前年同期比76%減った。インバウンドの激減で日本人の割合は28%から約95%に急増したが実数は減っており、インバウンドの減少を補えていない。

事実札幌を中心に東京、大阪などで約150件程度の物件を運営し、2019年5月期には約2億5800万円の売上をあげていた民泊運営業者「TAKE」は、負債2億2300万円で札幌地裁に破産を申請した。
そして民泊に見切りを付けた事業者も目立ち始めている。

2021年3月2日の日本経済新聞記事では、「北海道で約180件の物件を運営するマッシブサッポロでは、新型コロナ感染拡大前は利用客の9割以上がインバウンドで、全国を対象にした緊急事態宣言の影響で20年4~6月には売上高が9割以上落ち込み、運営する物件数も最も多かった時と比べれば60~70件少ない水準になっている。

そこで同社は不動産仲介などでしのぐ方針で、民泊物件はコスプレの撮影会やパーティー会場としてレンタルスペース代わりに使う手法も提案し、敬遠されがちだった郊外物件の需要が増すなど、コロナ禍ならではの変化も起きている」という事が書かれていた。

そこで、実際の声を更に聞こうと民泊の企画・運営にも携わるマッシブサッポロ(札幌市)の川村健治社長に話を伺った。
上記で触れた民泊運営業者「TAKE」の破産申請により、札幌市の民泊事業者が加盟する「住宅宿泊管理事業者連絡協議会」の代表幹事に4月から就任する川村社長は1978年生まれの現在42歳である。

マッシブ札幌川村社長
マッシブ札幌川村社長

廃業数1393件について

実際に民泊の廃業届を出して初めて廃業とカウントされる。

「だから実際にもう辞めて「もう賃貸にした」としても、廃業届けを出さなかったら、当局としては、廃業をしてないカウントになる。つまり廃業届を出してないけどすでに辞めている民泊施設が相当数あると予測できる」との事だ。

そして実際には、民間賃貸アパートを借りて民泊を運営している「転貸民泊オーナー」の廃業が多いという。カラ家賃が発生するので、それが負担になって解約してる数が多いと川村社長は予測している。

民泊廃業の波

民泊廃業の第一波は2020年の3月から5月に掛けてである。この頃はだんだん「コロナのやばさ」が分かってきた時期。まだ2月はオリンピックがあると信じられていたが、3月に入り「オリンピックはないぞ」となり転貸オーナーの解約・廃業が増えたとの事だ。

同社では約30室の転貸物件の殆どを解約をしたのがこの時期である。

川村社長は「大変申し訳なく心苦しく思っていますが、当社も生き残るために苦渋の選択をさせて頂いた」と語った。

次の第二波は2021年の1月から2月だ。
この時の廃業は自分の所有物件で民泊をやっているオーナーだ。ちょうどこの時期、一般賃貸の繁忙期でもあるので、民泊をやめ一般賃貸で貸そうとなったのだ。

そして4月以降は廃業件数はまた少し減少すると予測している。
3月までの繁忙期に一般賃貸への転用を行わないと判断したオーナーの中には、民泊の市場回復を待つオーナーもいるという。

民泊から居住用賃貸への転用

実際に民泊許可を取っている物件を普通にアパートで貸すときには、廃業届けを提出するだけの手続きでよい。部屋のホテル用備品などを撤収すれば貸せる。

また今後一般賃貸に戻した物件をまた民泊にするのは、一旦消防法をクリアしているので簡単にできるようだ。

現在の民泊の稼働状況

マッシブ札幌は、2021年3月27日現在札幌圏で134室、札幌近郊都市(小樽等)で22室、他道内地方都市、(帯広・旭川)などで4室、その他に道外で横浜8室と別府で30室、その他東京、大阪等も合わせて195室を運営管理している。

日経新聞では約180件となっていたが、現在は増加して約200件の運営になっている。

増加している要因は、同業他社が受託している物件で「もう管理を他社に任せたい」と移管された物件や、破綻したTAKEからの移管も数件あったそうだ。

3月時点での札幌市内の民泊物件の稼働率は非常に厳しく2割もいかない状況とのこと。
実際に札幌市内の簡易宿所型ホテルは、既に民泊を辞めて介護事業所が借り上げている物件もある。

「コロナ前、北海道の民泊は6月ぐらいから宿泊が増えてきて、7月8月が一番の繁忙期だった。
コロナ禍の去年7月は、宿泊実績は悪かったがGoToトラベルキャンペーンなども控えておりまだ希望があった。しかし今年の7-8月は、民泊事業としてはネガティブを想定している。最悪を想定しているのでオリンピックでの需要も期待しない前提で事業計画を策定した」

と川村社長は語った。

GoToの恩恵は僅かだった

理由はAirbnbのGoToトラベルキャンペーンへの参画が2020年10月27日だったからだ。

一般の旅行サイトのGoToトラベルキャンペーンへの参画は9月の初めだったので約2ヶ月遅れだった。

そしてスタートした途端に緊急事態宣言になった。「あれはがっかりした。その後雪まつり中止も決まり非常に辛かった」と当時を振り返った。

マイクロツーリズムの始動

札幌の稼働は上がらなかったが、都市周辺の地方都市では、希望も見えてきたようだ。

運営する小樽の物件は50%以上の稼働があり、横浜や別府は50-70%の稼働をしている物件もあるとの事だ。

「小樽が50%程度の稼働率を維持できているのは、札幌から近い距離にあって、マイクロツーリズム、つまり自宅から片道1-2時間圏内の旅行先として選択されていると思う。札幌市の端の手稲区や、石狩市の厚田、小樽の朝里とかの郊外が稼働が良かった」と教えてくれた。

例えば、宿泊募集サイトに「バーベキューできます」などと書いたら、夏場はほぼ満室で稼働したそうだ。特に郊外型戸建てが好調だったようだ。

3つのキーワード

今後の宿泊業の3つのキーワードはマイクロツーリズム、アウトドアブーム、三密回避だ。

例えば同社が運営管理する別府は、福岡県在住者からみたらマイクロツーリズム圏内で、横浜も東京から見たらマイクロツーリズム圏内にあたる。

これと同じような現象が、同社に限らず起こっているのではないかと思われる。
実際昨年の夏場、キャンプ場やゴルフ場、海沿いでバーベキューできる海岸などはとても混んでいた。
これも、マイクロツーリズム・アウトドアブーム・三密回避の現れのようだ。

レンタルスペースなどに活用

ただ、札幌のような都心での民泊は、先に述べたように2割を切る稼働状況である。

そこで、今チェレンジしているのは、民泊の部屋をレンタルスペースやマンスリーマンションなどに用途を変えて稼働率を高める事で、手応いを感じているそうだ。

マンスリーマンションは事業者に借り上げをお願いしているのと、マンスリーマンションのポータルサイト「POROKARI(ポロカリ)」というサイトに自ら載せて募集している。

今後の民泊の未来

川村社長は「コロナはいつか終わる。その時に必勝の体制をどこまで構築できるのかを今考えている」と語った。

国立人口問題研究所の日本の将来推計によれば、203年には1億1912万人と予測され、現在の日本の人口1億2557万人からは約1400万人以上減る予測である。

「1400万人というと、九州の全人口にも匹敵。北海道の人口が520万人。それがこれから減ることになる。その時に国は外国人に来てもらうしかない。働き手としてのインバウンド、旅行者としてのインバウンド。国を今後10年20年と成立させるためには待ったなしだ」と語った。

そして「インバウンドが復活すると、国単位での外国人労働者の取り合いになるが、もう日本の経済力は落ちてきていて、賃金ベースでは働く場所として、日本の魅力は落ちてきている。

外国人労働者を呼ぶためのリクルーティング活動は競争である。韓国などは、海外から来たくなるような施策を沢山やっていて、日本は外国人労働者が来るのに、試験も大変、来るにもお金がかかり、来てからも生活環境は決して良くない。そこの一助に弊社の民泊事業がなればと言う自負がある」と語った。

同社は2022年4月にはインバウンドが戻り始めると計画を立てている。

シェアリングエコノミーの代表として、民泊はもてはやされた。
しかし世界中の誰もが予測できなかった「コロナ禍」によって、世界中で人の移動が消えてしまったなか、国内でも最大・最速で影響を受けたのは事実だ。

しかし今後このコロナ禍によって発見された新しい働き方、リモートワークやワーケーションによって、新しい使われ方が定着してきている。

そしてワクチンの接種が進み、国内はもとより国をまたいでの人の移動が解禁される遠くない将来、インバウンドが急激に戻る時に備えて準備をし続けられるかが、各民泊事業者に問われているのでないだろうか。

執筆:J-REC教育委員 原田哲也

【プロフィール】
2010年より、一般財団法人日本不動産コミュニティー(J-REC)の北海道支部を立上げ、不動産実務検定の普及に尽くし、多くの卒業生を輩出。2018年よりJ-RECのテキスト編集、改定などを担当する教育委員に就く。
また自身が主宰する北海道大家塾は既に62回の開催を数え、参加人数も述べ3700人を超える。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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