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出口戦略不要の投資とは?築56年ビルをフルローンでリノベーション、複数用途で満室経営

賃貸経営/リノベ ニュース

2017/12/11 配信

再生されたイマケンビル。視認性の良い、開放的な作りだ
再生されたイマケンビル。視認性の良い、開放的な作りだ

築年数の古い物件には銀行は貸さないというのが常識だ。だが、築56年のビルにフルローンが付き、建築家の山崎裕史氏により一棟のフルリノベーションが行われた。1階には「1階づくりはまちづくり」をコンセプトとするグランドレベルが企画提案・運営するランドリーのあるカフェ「喫茶ランドリー」がオープンし、2〜3階にオフィス、住宅などが入ったビルは竣工後には満室。

従来の不動産投資は出口戦略を前提としたものだが、「これからは建物を長く持たせ、長く保有するほうが投資効果は高い」というのは同物件の不動産コンサルティングを担当した創造系不動産の高橋寿太郎氏。それは一体どういうことなのか、現地で聞いてきた。

■多額を長期に投資するより、短期回収が良いケースもある

リノベーションが行われ、再生されたイマケンビルがあるのは墨田区千歳。

最寄り駅都営新宿線森下駅からは歩いて数分。元々は住宅と工場、倉庫などが点在した街区の一画にあり、周囲では近年賃貸も含め、新築マンションが増加。共働き世帯が増えているというエリアである。

長らく手袋等の梱包作業の場として使われてきた3階建て・RC造の同ビルにはメガバンク経由で建替えを提案する営業が多数来ていた。ただ、投資額、規模は違えどもいずれも建替えて住宅にするという提案ばかり。

他にやり方はないのかと思ったオーナーは建築家の山崎裕史氏に相談。建築計画を開始する。だが、建築的な観点だけではなく、不動産的な観点も必要と考えた山崎氏は冒頭の高橋氏に不動産コンサルを依頼した。

山崎氏と高橋氏はまず、建替え案とリノベ―ション案の比較をオーナーに提示したという。

「2億円、6億円の建替え案2案とリノベーション案で比較を行ってみると、6億円投資する場合には投資した額が回収できるのは25年近く経ってから。2億円でも20年かかる。ところが、リノベーションだと10年前後で回収でき、その後は利益になります。

3案を図化したもの。投資した資金がいつ回収され、収益を生み始めるかがよく分かる
3案を図化したもの。投資した資金がいつ回収され、収益を生み始めるかがよく分かる

もちろん、その後も含め、30年で見ると多額に投資すればするほど収益は上がりますが、その分、リスクも高くなる。30年後の市況、ニーズは読めないし、早い時期に回収し終わって、それからどうするかを考えるほうが選択肢が増える。

リノベーションなら15年後の大規模修繕時までには回収が終わり、利益が出ていますから、その時点で建替えるという手もあります。

また、近年周辺でハウスメーカーの新築が増えていることを考えると、同じものを作って15年後、30年後に競争力を保てるかという問題もあります。そうした事情を説明、大きなリスクを取るより、身軽に状況に合わせて投資を考えたいというオーナーの選択で、最終的にはリノベーションで行くという話になりました」。

一般にハウスメーカーは投資額と収益は提案してくれるものの、個人の条件は考慮されていない場合が多い。20代のオーナーにとっての30年後と、50代のそれとは全く意味が違うし、収益の高さよりも借入を少なくしたい、安全を重視したいという人もいよう。

本来、投資は個人の事情も含めて考えるべきもの。不動産会社などからの提案は自分の年齢、将来想定される家族や仕事の事情などを考えながら見ることが大事である。

■建築、不動産、2つの観点から金融機関の不安を解消

次の問題はローンだ。メガバンクはもちろんダメ。そこで地元の信用金庫2行にあたり、2行ともからフルローンの内諾を得たという。

高橋さん自身「まさか、2行ともOKを出してくれるとは思っていなかったので、非常にうれしかった。このやり方で行けると確信しました」という。

なぜ、フルローンを引き出せたのか。

「金融機関が不動産投資で個人に貸す場合には、キャッシュフローが健全であるかどうか、オーナーの年齢と収入、代替わりとその先などと言った点を気にしており、それらについては意外に良く見ています。

ただ、見ていない、見られていないのが建物。未だにRCは47年、木造は23年で価値ゼロなどと思っているケースもありますが、今回はまず建物の性能を担保するために山崎氏は耐震補強を行い、is値(耐震指標)を現行の建築基準法と同等まで引き上げました。

同時に収支計画をはじめとする事業計画をきっちりと作り、金融機関が納得できるものとしました。つまり、建築面、収益面、2つの金融機関の不安を解消でき、彼らを味方につけることができた。それがフルローンに繋がったと思います」。

■古いモノに価値があるなら、出口戦略は不要

これまで不動産投資では出口戦略が大事と言われ続けてきた。身も蓋もない言い方をすれば、出口戦略とは、建物は古くなれば価値が落ちる、だから、最大の利益が見込めるタイミングで他人にそれを押し付けてしまおうというものだ。

階段などの共用部はあえてほとんど手を入れていない。だが、古さが味になっている
階段などの共用部はあえてほとんど手を入れていない。だが、古さが味になっている。全体の建築設計はヤマサキアトリエ・山崎裕史氏

だが、古くなっても融資が受けられ、貸し続けられるのであれば出口戦略を考える必要はない。古いモノに価値を認める、価値観の転換が今、起きていると高橋氏。

1階全景。天井、壁その他を見ていただければ既存建物の使える部分はそのまま使っていることが分かる
1階全景。天井、壁その他を見てどう反応するかで、年代差が分かるようだ

「イマケンビルは父と息子2代によるプロジェクトでしたが、同様に私達がお手伝いする不動産再生プロジェクトでは、リノベーション完成後も親世代にはまだ工事中にしか見えず、息子世代にはカッコ良く見えるという現象がよく起こります。30〜40代に断層があるようで、その辺りの年代から下では古くても良いモノは良いという価値観があります。それを考えると、建物を長く持たせ、保有し続けることが最も投資効果が良いと考えられます」。

ただし、建物を長く持たせるためには3つ、大事なポイントがあるという。ひとつは建築的な技術である。具体的には耐震補強など建物の性能を維持することに加え、その時々のニーズに合わせたデザインだ。

次のポイントは前述した金融機関をいかに味方につけるかという点。そしてもうひとつは不動産的な収益を見る目。これら3点から不動産を経営することができれば出口戦略は不要というわけである。

■市場調査の重要性

ランドリー部分。カフェからは一段高くなったスペースでガラス戸でなんとなく仕切られている
グランドレベルが企画提案・経営するランドリーカフェ全景。内装設計はブルースタジオ+石井大吾

最後に再生後の建物を見て行こう。以前と比べて開放感のある作りになった1階にはランドリーのあるカフェ「喫茶ランドリー」が入る。ここはグランドレベルの田中元子氏、大西正紀氏のオフィスでもあるそうだ。マンションが増え、暗くなった周辺に比べ、この一画だけが明々と目立ち、道行く人が不思議そうに覗いていく姿が散見された。

ここ2年ほどでランドリーは急増、一部には飽和状態という声もあるが、実際には足りていない地域も多い。高橋氏は周囲1キロ圏にはクリーニング店が少ないこと、その一方で共働き世帯、子育て世帯が増えていることから、一定のニーズがあると踏んだ。

ランドリーから店内全体を見たところ。ランドリーを待つ間にお茶でも、という使い方を想定した
ランドリーから店内全体を見たところ

また、グランドレベルの分析より、そうした世帯が気軽に集える場がないという提案を受け、カフェとの併設という形になったという。

建築家の山崎裕史氏のデザインによる2階、3階はオフィスと賃貸住宅。創造系不動産もここにテナントとしてオフィスを構えている。どの仕事でもいざとなったら自分たちが運営する、入居すると考えているそうで、その辺りの責任感がクライアントから信頼される要因のひとつだろう。

1階には高くなっていたり、低くなっていたりする部分があるが、それを上手に利用、高い部分はランドリーに、低い部分はソファ席になっている
1階には高くなっていたり、低くなっていたりする部分があるが、それを上手に利用、高い部分はランドリーに、低い部分はソファ席になっている

2017年12月頭にお披露目のパーティーが開かれたが、その時点で1階はもちろん、2階、3階の4室も入居が決まっていた。しかも、プロジェクト開始当初に想定したより高い賃料で貸せているそうで、当初目論見より早く回収できるかもしれないとのこと。建替えではなく、リノベーションを選択した結果は吉と出たようだ。

健美家編集部(協力:中川寛子)

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