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不人気1階の新たな活用!バルコニー、1階3室をシェアマーケットに改修、複数人利用で賑わい、収益増

賃貸経営/リノベ ニュース

2020/02/03 配信

防犯や人の目を気にする人が増えたせいだろう、1階はどんな建物であっても人気にはなりにくい。だが、その1階を住居以外に活用、地域のランドマークとすることで上階への影響を見込むという意欲的な例があり、見学してきた。悩みの種が大きく化けるかもしれない。

使いにくい1階を住宅以外に転用

元々の建物はごく普通のワンルームマンション。その1階が生まれ変わった
元々の建物はごく普通のワンルームマンション。その1階が生まれ変わった

JR南武線、東急田園都市線が交差する溝の口駅から歩いて数分。2019年11月、飲食店街からは少し離れた住宅街の入り口ともいえる場所のマンション・セシーズイシイ10の1階3戸を改装、シェアマーケット「nokuchi-lab〜ノクチラボ〜」が誕生した。

やや奥まったところにはあるが2階以上は満室。1階の3室と駐車場を利用した
やや奥まったところにはあるが2階以上は満室。1階の3室と駐車場を利用した

2階以上は満室というから、マンションとして選ばれていないわけではない。だが、それでも1階は苦戦しがち。同物件でも3年ほど前から3戸のうち、真ん中の住戸は倉庫に、両端の住戸は民泊新法施行前までは民泊で活用してきた。

だが、法の施行で許可が必要になったことから民泊以外の使い方をしようと考えるようになったとオーナーの石井秀和氏

「賃貸として改めて貸すとなると賃料を下げざるを得ない可能性もあり、そうなると上階にも影響が出る。だとしたら、住宅以外でどういう使い方があるか。

ランドリーカフェなども考えましたが、自分自身では運営することが正直難しかった。こうした企画運営を一緒に取り組む、のくちのたね株式会社も当時は溝の口で築90年の医院兼住居を改装したシェアオフィス・レンタルオフィスを中心とした物件・ノクチカのことで忙しく、しばらくはそのままにしていました」。

2017年12月に誕生したノクチカはオープン早々に満室になり、現在は空き待ちが出ているほど。ある程度軌道に乗ったことから次の一手として思い出したのが空いたままのセシーズイシイ10の1階である。ノクチカを石井氏などと共同経営する地元の不動産会社エヌアセットの松田志暢氏が声をかけたのがノクチカの入居者であり、溝の口で地域密着のカフェ・TETO-TEO(テトテヲ)を経営する丸山佑樹氏である。

今回の企画に当たった左から松田氏、丸山氏、石井氏。本当は設計担当者も含めてひとつのチーム
今回の企画に当たった左から松田氏、丸山氏、石井氏。本当は設計担当者も含めてひとつのチーム

丸山氏は地域に根づいたカフェ運営で川崎市の「空き店舗活用アワード事業」で大賞を受賞しており、「店づくりは街づくり」であるとの思いから、街づくり会社tenを設立してもいる。

「丸山さんから、飲食を軸に空間も含め、地域に影響のあることをやりたいという話を聞いていたので、こんな場所があるんだけどどうだろう?と相談してみたのです。ただ、最初の反応は一般的な飲食では難しいなあというもの。でも、考えてみますということで、2019年4月にご提案を頂いたのが、複数の人が店を出すシェアマーケットという業態でした」(松田氏)。

異業種と組む時に注意すべき点は?

それから半年ちょっとでオープンに至るのだが、面白いことにオーナーである石井氏、不動産会社の松田氏にとっては発想からオープンまでが半年は非常に早いと思い、飲食業の丸山氏は「特に早くもない」と評価しているという点。

「不動産を借りるとその時点から家賃が発生します。それなのに営業できていないという状況は避けたい。飲食に限らず、商売で不動産を使う場合はそうしたタイムラグにはシビアで、3カ月くらいが普通。今回もテラス席があることから、本当は10月に開けたかったくらいです」(丸山氏)。

不動産の使い方が広がっている昨今、住宅以外の貸し方を考える際には、業種ごとにこうした常識、考え方の違いがあることは意識しておいたほうが良さそうだ。

実際、ノクチラボの場合には貸す側、借りる側で利益が相反する部分をどうするかという話し合いも複数回必要だったという。出店者側は収益を上げるために安く借りたい、所有者側は逆にできるだけ高く貸したいわけで、さらにそこに改修費用をどう負担するかという話も絡む。

まちに賑わいを創出、それによって2階以上の部屋の価値を上げるという共通の目標はあっても、業種を超えてビジネスパートナーとしての信頼関係を築くには多少の時間、手間はかかるということである。

店頭の看板。個性的な店舗の集合体であることが分かる
店頭の看板。個性的な店舗の集合体であることが分かる

さて、実際の店舗を見て行こう。元々の住戸は21uのワンルーム3室で、そのうち、手前の2室を壁を抜いてマーケットとしており、もう1戸は奥にシェアキッチンのあるシェアリングバーになっている。

シェアリングバーは丸山氏の直営だが、店に立つのは普段は他店で働いている人たち。7人のバリスタ、マスターが日替わりで運営しており、メニューその他も当然、日替わり。同じ店なのに、訪れる曜日によって異なる味、違う人との会話が楽しめるわけだ。

駐車場もキッチンカー利用で無駄なく活用

テラス席。開放的で雰囲気のある空間になっている
テラス席。開放的で雰囲気のある空間になっている

住戸前の公道との間にはかつてバルコニー、駐車場があったが、それを撤去、テラスが設けられている。ただ、奥に2台分の駐車場が残されており、これはキッチンカーの利用を想定してのこと。

キッチンカーは最初の登録さえしておけば、以降はオンラインで予約が可能で、平日500円、土日1000円と電気使用料、売上から平日で15%、土日で20%の歩合が発生する。使われずに空いている駐車場の利用法としては参考になりそうだ。

42uに15店!個性ある店舗で魅力的な場に

店内全体を見たところ。あらゆる空間が無駄なく使われている
店内全体を見たところ。あらゆる空間が無駄なく使われている。右手のカウンターが全体の中央にあたり、その右側にも左側と同じように店舗が並んでいる

さて、店内だが、広さは2戸分で42uで、さほど広いわけではないのだが、そこに様々な店があり、まるでおもちゃ箱のよう。何があるのだろうとわくわくする空間になっている。現在入っているのは15(!)店舗。真ん中のカウンターを囲んでコの字型にカレーや鯖サンド、ピザなどの飲食店が配されており、これが6店舗。仕込みは隣にあるシェアキッチンを使う。各店2時間で作り上げ、店では温めたり、盛り付けたりして供する仕組みである。

天井や壁なども店舗として利用されている。売り場を拡大すると同時に場の雰囲気を良くするものでもあり、賢明な空間利用である
天井や壁なども店舗として利用されている。下がっているスワッグはもちろん売り物だ。それによって売り場を拡大すると同時に場の雰囲気を良くしてもいると考えると、非常に賢明な空間利用である

それ以外に天井や壁、棚などを利用して焼き菓子などのスィーツ類を出している店が4店、雑貨が4店、パンが1店という構成である。そのうち、有人で運営されているのは5店で、残りは品物のみが置かれる無人販売。1カ所、総合レジが設けられており、支払いはすべてそこで行う。平日のレジ業務は一部の出店者が家賃減額を条件に交替で担当しており、それ以外は丸山氏の会社が担当する。

右奥に見えているのが総合レジ。お金の扱いを1カ所にまとめることで効率的に運営されている
右奥に見えているのが総合レジ。お金の扱いを1カ所にまとめることで効率的に運営されている

見ていて楽しいのは他の店にはないだろうと思われるような品が並べられている点。個人的には最初に訪れた年末にまず他店では見たことがないポップなデザインの正月飾りに惹かれた。残念ながら買う時間はなかったのだが、今年末、もし、その店があるなら買いに行きたいと思うほど印象的だった。

溝の口は駅前に丸井やドン・キホーテなどがあり、商店街も。ナショナルチェーンで売られているものはほぼ買えるまちだけに、ここに来ないと買えない品があることは大きな売り。

しかも、そうした店が集まっているのである。買いに来る人がいるのみならず、この集積に目を付ける人もいる。ここに出店している人たちでマルシェを出して欲しいという依頼だ。担当者が1店ずつ出店者を集めるより、すでに異業種がさまざま集まっているノクチラボ全体で出て欲しいというのである。

すでにオープン後すぐには前述の丸井2階でノクチラボが企画する展示販売会が開催されており、川崎市の大山街道ふるさと館での出店依頼もあるのだとか。個性的な店を集めたことで、それ自体がブランド、商品になっているのである。

これからの事業には人脈が重要

出店者のうち、10店ほどは丸山氏が直接声を掛けたそうで、いずれ開業を考えている個人、すでに開業しているものの小規模店でそのサテライト的な店舗となっているようなケースが大半。オープンに当たってはクラウドファンディングを利用、160万円弱ほどを集めているが、そこからの問わ合わせなどもあったという。

どんな事業でもどれだけ魅力的な店を集められるかが肝だが、ノクチラボでは丸山氏の人脈が大きな成果に繋がったわけである。

マーケットスペース内にも簡素なキッチンスペースはあるが、仕込みは隣接するシェアキッチンで。一般的な飲食出店ではキッチンの設備その他も大きな出費だが、ここではその必要はない
マーケットスペース内にも簡素なキッチンスペースはあるが、仕込みは隣接するシェアキッチンで。一般的な飲食出店ではキッチンの設備その他も大きな出費だが、ここではその必要はない

ちなみに賃料は昼だけ、夜だけ、終日と出店する時間帯と有人か、無人かなどで細かく分かれており、最低で3万円〜。自前で店を出そうとすると規模に関わらず、厨房施設だけでも何百万円もが必要だが、ここでなら安価に店を出すことができる。飲食業界は材料費や人件費の高騰などもあって環境は悪化しているというが、そんな中では無理せずチャレンジできる場は求められているようである。

他の場所へのノクチラボとしての出店はこの場所のブランド力アップに貢献する。「あの、ノクチラボのある建物」という認識が生まれてくれば上階のブランド力もアップするはずだ
他の場所へのノクチラボとしての出店はこの場所のブランド力アップに貢献する。「あの、ノクチラボのある建物」という認識が生まれてくれば上階のブランド力もアップするはずだ

収益という点で言うと建物所有者である石井氏は内外装工事費の一部を負担、また、家賃を相場よりも安めに設定、丸山氏に貸している。クラウドファンディング時の見積もりでみると同工事費は1500万円。溝の口エリアのワンルーム家賃はおおよそ7〜8万円ほどだが、店舗、オフィスはそれより2割ほど高め。空室リスクのことも鑑み、約5年で初期投資回収を目安に収益計画を立てた。

1階が建物全体の価値を左右するという発想

「一部屋ごとにお金をかけるより、1階が地域のランドマークになることでその影響が上階に波及することに期待をしています。ノクチカが満室になり、待ちが出るほどの状況であることを考えると、このまちにオフィスへのニーズがあることは明らか。住宅の単価をあげるのは難しいものがありますが、それをオフィスに転換していけば高くできます。空室が出たところから転換を考え、個別の部屋の賃料というより、建物全体で賃料がどう変わるか。そういう観点で今後の経営を考えています」(石井氏)。

これまで自主管理でやってきた石井氏だが、この物件では建物全体の価値上昇を睨んでエヌアセットに管理を委託したという。丸山氏も含め、チームで経営に当たることが価値アップに不可欠という判断である。

人材の問題を考えるとシェアマーケットという業態はそうそう簡単には真似しづらいが、不人気の1階を住宅以外に転用という手は他でも十分真似できる。店舗、オフィスであれば1階は逆に人気で、かつ賃料は高く設定できる。ベランダを壊してアプローチとして作り直し店舗にしている例は他にもあり、立地次第だが、考える余地はあろう。まちによってはオフィスニーズを考えてみても良いのではなかろうか。

健美家編集部(協力:中川寛子)

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