物件のリフォームでお金がかかるところといえば、水回りのお風呂や洗面所、台所だ。大家さんによっては、水回りをほとんど直さなくて済む物件ばかりを買って、高利回りをたたき出している人もいる。
しかし、所有物件の老朽化に関しては修理しなければならない。退去後の状態によっては、ユニットバスやタイルの既存風呂を丸ごと新しい設備と入れ替える必要も出てくる。そうなるとリフォーム代は高くなり、工期も長くなってしまうのが難点だ。昨今は、廃材の処分費が高騰しているのも頭が痛い問題だ。
ところが、浴室を壊さずに、新品のようにきれいにリフォームできる手法があるという。どんな手法かというと、既存の浴槽や浴室を撤去せず、不具合部分だけを補修するリフォームだ。
工期も短く、内容によるが1日から3日で工事が終わる。壊さないから廃棄物も出ない上、騒音も少ない。そして、新品の入れ替えと比べるとリフォーム代は約半額近くで済むという。この斬新な手法を取り入れている株式会社バスシステムデザイン研究所の代表、日吉孝夫氏お話をお伺いした。
【施工例1 Befre】
浴室が全体的に薄汚れ、浴槽内にはクラック(亀裂)が入ってしまったユニットバス。通常の清掃では汚れが落ちなかったそうだ。
【施工例1 After】
亀裂をFRPライニングで補修してから、浴室全体を塗装。費用は約10万円〜。(シャワー水栓等の交換費用は別途)
【施工例2 Befre】
壁がサビて、茶色くぶよぶよになったユニットバス。
【施工例2 After】
サビてしまった塩ビ鋼板の一部を除去し、補修してから新たに巾木を施工。そして、浴室全体を塗装。費用は約10万円〜。
【施工例3 Befre】
どう使ったらここまで汚れるのか…。ドロドロになったユニットバス。
【施工例3 After】
汚泥を除去してから、浴室全体を塗装。約10万円〜。
【施工例4 Befre】
築27年の戸建ての浴室。全取り換えしなければいけないほどではないが、時代を感じるタイルの壁や床、浴槽に汚れが付着している。
【施工例4 After】
タイルの壁と床に浴室シートを貼り、浴槽全体を塗装。費用は20万円〜。
■浴室専門のリフォーム会社による独自の技術
どうやって補修しているのか気になったので、同研究所の日吉孝夫社長に詳しく聞いてみた。すると、「浴室吹付塗装(ヌリフォーム)」「浴室パネルを貼る(パネリフォーム)」「浴室シートを貼る(ハリフォーム)」の3種類の独自技術を組み合わせて補修しているそうだ。
例えばビフォー1のように、浴槽にクラック(亀裂)が入ってしまった場合。
ユニットバスはFRPという素材で作られていることが多い。亀裂にパテや塗装しただけでの補修では、硬度が足りず、再び亀裂が入ってしまうという。(株)バスシステムデザイン同研究所では、亀裂の上から新たなFRP層を形成し、硬化させてから、パテと塗装をしている。



ビフォー2のように、ユニットバスの壁の低い部分がサビで膨らんでぶよぶよになった場合。
この原因は、ユニットバスの壁や天井で使われている「塩ビ鋼板」が錆びてしまうからだそうだ。塩ビ鋼板は鋼(鉄)の板に塩ビシートを貼った素材なので、本来は水に強い。
しかし、浴室の床の「床パン(FRPなど)」と、壁の塩ビ鋼板の接続部分のコーキングが切れたり、表面の塩ビシートが傷ついてしまうと、鋼板に水が浸透して裏側から錆びて膨らんでしまうのだ。補修方法は、錆びた部分の塩ビ鋼板を除去し、FRPなど錆びない素材で壁を再生する。その後、コーティング塗装するか、浴室用シートやパネルを貼ると綺麗になる。


■壊さない『エコバスリフォーム』は、
ホテル業界の要望から始まった新工法
元々、浴室を壊さずに美しく再生する同研究所の「エコバスリフォーム」を早くから導入していたのは、ホテル業界だという。新品のような美しい仕上がりで低コスト、工期も短く、騒音が出ないことが高く評価された。
近年はハウスメーカーや不動産管理会社からの依頼や、賃貸マンションや分譲マンション、戸建て住宅のオーナーからのリフォームも手掛けている。さらにUR都市機構の指定工法としての認定を受け、築年数の古いUR団地の浴室改装も請け負っている。今は東京と大阪を中心に年間4,000室以上の浴室を施工し、累計では約31,000室の施工実績を持つという。
その他、水回り専用のシートやパネル、床材等を製造している大手メーカーと、新素材の共同開発も携わっている。
例えばDIYする大家さんであれば、古びた台所の壁に、ホームセンターで買ってきたキッチンパネルを貼り付けたことがあると思う。あのパネルはとても重く、丸鋸で寸法通りにきれいに切っても、貼る際に角をぶつけてしまうと割れやすいなど少し施工が難しい。
同研究所はメーカーにその不都合を訴え、カッターでも切ることができる、軽量で施行しやすいパネルを開発した。浴室に貼る床シートも、メーカーが販売していた柄よりも、高級ホテルや温浴施設の要望にも合うような高級感のある柄の開発をリクエストしたそうだ。
■浴室リフォームを依頼した大家さんの感想
実際に浴室リフォームを依頼したことのある、関西を中心に580名以上の大家さんを会員に持つ「がんばる家主の会」の松浦昭会長のお話をお聞きすることができた。松浦さんの物件は築30年超のファミリー用のRC物件で、ユニットバスだ。
「壁のサビ補修や巾木の取り付け、浴槽の亀裂の修復、浴槽や浴室全体の塗装など、退去後の状態によって3件依頼しました。塩ビ鋼板の腐食補修は大変きれいに仕上がったのでとても良かったです。全体的に手を入れるリフォームよりも、部分的な補修が費用対効果が高く、おススメだと思います。リフォーム前には細かく工事内容を相談しました。工事後、私が想定していた仕上がりではなかった部分があって、やり直しを依頼した時はしっかりと対応してくれました」
管理会社経由ではなく大家さんから直接リフォームの相談を受けた場合や、賃貸マンションの複数室を同時に工事をする場合などは割引などもあるようだ。
浴室リフォームに悩んでいる人は1度問い合わせしてみてはいかがだろうか?特に、浴槽に吹き付け塗装する「ヌリ フォーム」は職人の技術が大きく左右する工法で、塗装後はまるで新品のようにピカピカと輝いていた。
健美家編集部(協力:野原ともみ)