コロナで東京の一極集中が見直されているとはいえ、過疎化の進む地方では空き家の増加がまだまだ進行する昨今。老朽化した空き家ではなかなか入居したい人もいないのでは?と思えるが、そんな地方の空き家は“宝の山”と、買い取ってリフォームによる付加価値づけをして再販し、成長している会社がある。
群馬県桐生市に本社を置きながら、2017年には東証一部に直接上場を果たしている株式会社カチタスだ。
購入者は、確かに実需がほとんどでセカンドハウスがちらほらということなので、賃貸入居とは視点が異なるとはいえ、年間販売戸数4305戸(2019年度)と中古再販会社でナンバー1の実績の秘密はどこにあるのだろう。
顧客が魅かれるリフォームは、
はっきりしている
カチタスが展開しているエリアは戸建てがほとんど。平たく言うと、地方で経年劣化した空き家の在庫が多いエリアだ。
しかし販売物件のプロフィールは、平均の建築面積が120 ㎡、土地代込みで1,400万円台と広くて安い。買い取りの際には、築年はあまり問題にしていないが、旧耐震の昭和58年以前のものは耐震補強などに費用がかかるため、買い取り価格を抑えることを考慮はするという。
確かに首都圏など都市圏と比較したら、驚くべき広さと安さだが、購入者は生活圏との地縁のある人が多いので、その部分に魅かれてというわけではないだろう。
今回は、カチタスマーケティング室長の大江治利氏に話を聞いた。
リフォームのどこを見て住みたいという評価をされているのかを聞くと「奇をてらうリフォームはしませんが、水回りの多くは新品で清潔。耐震やシロアリ対策など家の安全性もアピールしています」とのこと。
また、地方住まいの購入者は、平均世帯年収が200~500万円が7割を占める。家族住まいで探していて、何といっても目のつけどころは水回りだという。
新しい2550mmのキッチンとユニットバスがきれいというだけで、評価が高い。とはいえ、全てを新品に変えたら解決、ということではない。ポイントを聞いてみた。
「キッチンは8割入れ替えますが、新品ものがあると既存のものがより古く見えてしまうというところが難しいですね。そのため、床やクロスも変えることは多いのですが、ドアは同サイズで合わすのが難しいのでやらないとか、コスパと見合いながら決めています。内装などは購入された方がDIYでも出来ない事もない部分だと思いますが、戸建てなのでシロアリ対策や基礎のクラックや地下に埋まっている下水管などの、素人では判断できない部分がきちんとしているというのが評価されています」と大江氏。
コロナも影響して
まだまだ伸びしろのある地方マーケット
買い取りからリフォーム、販売までを一人の担当が受け持つという一気通貫。買い取り時のリスク判断、リフォームのコスパ判断、施工管理に販売とすべてを身につけるための教育には力を入れていて、毎年新卒は100人ほど採用するが、店長レベルになるまでは最低でも3年ほどの教育期間がかかるが、一人が全部やるので横展開はしやすそう。
エリアは地方注力で、都心などに出ていく計画はないとのことだが、現在のビジネスパッケージにはまだまだ伸びしろがあると見ている。
地方で現在賃貸住まいの平均世帯年収が200~500万円は330万世帯、今の取り扱いが5,000戸ほどなのでまだまだマーケットがあるというわけだ。こうした地方戦略に基づいて店舗数は100を超えるので、パワビルダーが進出していな所に店舗があるも強みだという。
また、コロナでリモートワークのスタイルや通勤の見直しなどがあり、埼玉や千葉など16号線の外側、電車で1時間から1時間半という立地の物件が人気が出て来ており、都市の狭いマンションより広さを求める志向が感じられるそう。
住まい探しにおける幅が広がる分、まだまだこれからのエリアもありそうだ。
文/小野アムスデン道子
経歴
元リクルート週刊住宅情報関西版編集長、月刊ハウジング編集長を経て、メディアファクトリーにて、世界的なガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集に携わったことから観光ジャーナリストに。東京とオレゴン州ポートランドのデュアルライフと世界中を巡る取材で旅を基軸にしたライフスタイルについて執筆。国内外で物件運用中。ownmedia【W LIFE】で40代からの豊かな暮らし方を発信。