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20戸の文化アパートを3戸に。思い切った改装でニッチなニーズに対応

賃貸経営/リノベ・修繕 ニュース

2021/03/22 配信

大阪市に隣接、小規模な工場などが多数集まっている東大阪市には昔ながらの文化アパートがあちこちに残されている。4畳半に風呂無し、トイレ共同という木造2階建ての文化アパートを大胆に改装、3戸のメゾネットにした例を見てきた。

好立地に4畳半一間が20戸

大阪難波駅から近鉄奈良線で12分。同線に加え、おおさか東線も利用できる河内永和は都心部への通勤には便利な立地である。その河内永和の駅から歩いて7分。かつて弥生荘と言われていた建物は路地に瓦屋根の長屋などが残る住宅街の中に立地している。

長屋なども残る一画。写真左手に見える白い外観の2階建てがかつての弥生荘
長屋なども残る一画。写真左手に見える白い外観の2階建てがかつての弥生荘

建物は1963年竣工の木造2階建てで、道路に面した玄関を入ると建物中央の廊下を挟んで左右に4畳半一間の部屋が10戸。2階にも10戸あるので計20戸。風呂はなく、トイレは共同という昔ながらの文化アパートである。

近隣にも長屋その他を所有するオーナーが以前の所有者に頼まれて弥生荘を取得したのは3年前。その後の台風で屋根に被害を受け、雨漏りも始まっていた。普通だったら取り壊して建売住宅にするところで、周辺にはそのようにして建てられたのであろう新しい住宅も多数あった。

だが、路地に長屋の集まるまちの雰囲気を急激に変えるのはどうかと考えたオーナーは姿を変えずに再生することを考え、以前から所有する物件の空室対策などで付き合いのあったアートアンドクラフトに相談をした。

建物内に箱を置く。20年前のコンセプトで改装

クラフトスタジオ神路の外観。とても住宅だとは思えない
クラフトスタジオ神路の外観。とても住宅だとは思えない

「そのままの戸数で再生しても埋まるとは思えません。周辺エリアには、弥生荘同様の間取りの文化アパートがあるのですが、入居者は少なく、空室率は高い様子。しかも賃料は1〜万円台くらいで、仮に全戸埋まったとしても収益は低い。だとしたら、違うやり方で再生しようと考え、思い出したのは2001年に手掛けたクラフトスタジオ神路でした」とアートアンドクラフトの枇杷健一氏。

入口から見て左側の白い箱が居住空間。手前にキッチン、バス・トイレなどがある
入口から見て左側の白い箱が居住空間。手前にキッチン、バス・トイレなどがある

クラフトスタジオ神路は材木倉庫を利用した賃貸住宅で、倉庫自体には手を入れず、中に居住空間となる箱を置いただけのもの。キッチン、バス・トイレなどは箱の外である。箱の中だけは冷暖房が使え、普通に生活できるが、それ以外は暑く、寒い。だが、屋根のある広い、自由に使える空間が手に入ることから、バイクや車などを趣味とする人たちを中心に住み続けられてきており、この20年間、入居者が絶えない。

キッチン、バス・トイレはこんな状態。冬場はトイレに行くのを躊躇しそうである
キッチン、バス・トイレはこんな状態。冬場はトイレに行くのを躊躇しそうである

5人目の入居者が引っ越す前の短い期間に中を見せていただくことができたが、快適な暮らしを前提にする人には選ばれにくい物件であることは一目で分かった。冬場の夜、トイレに行くとすると一度外に出なくてはいけない、そんな暮らしになるのである。だが、その一方でこれだけの広い空間を自分の好きに使えることの魅力も感じた。マスではないかもしれないが、それを良しとする人は確実にいる。クラフトスタジオ神路の例はそれを教えてくれる。

箱の内部は快適な居住空間

そこで、弥生荘も同様の方法で再生することに。つまり、建物の内部をスケルトンにして長手方向に三分割。そこに今回は水回りも入れたL字型の箱を置き、その中では現在の基準で考えても十分に快適な暮らしができるように断熱材などを使用、それ以外はそのままという住まいである。

20戸から3戸へ。ざっくり図面で見るとこんな形に変化している
20戸から3戸へ。ざっくり図面で見るとこんな形に変化している

実際の住まいは入ったところに9畳ほどのステンレスの業務用の雰囲気のあるキッチンが置かれた土間があり、右手にL字型の居住空間となる箱が置かれている。その居住空間の箱の天井部分が2階の床となる。

改装後の間取りはこんな形になっている
改装後の間取りはこんな形になっている

ただし、2階の壁、屋根は雨漏りその他必要な修理が施されているだけで、室内側で断熱その他の改修は行われておらず、隙間、歪みその他はそのまま。暑く、寒いことは確実だが、広告ではそれもきちんと説明されている。天井が高く、広くて開放的な空間が手に入るが、それにはデメリットも伴うというわけである。

賃貸住宅としては大きめの1611サイズのバスルーム
賃貸住宅としては大きめの1611サイズのバスルーム

また、箱の中に用意されたバスルームは1616サイズと賃貸では大きめ。洗面所などもゆったりと作られており、そのあたりも他の住宅にはない魅力。箱の内部の居住スペースは約15畳。全体の広さとしては74u強ある。

キッチン部分の床は土間。右手と突き当り部分がL字の居住部分
キッチン部分の床は土間。右手と突き当り部分がL字の居住部分

住む人から見た魅力としてはDIY可という点も挙げられる。居住空間となる箱の床部分、箱の外側の壁部分と2階の中心部の柱、梁については床を貼る、ビスを打つなどができるのである。

といっても、何でもできるというわけではない。ビスの長さその他の詳細や原状回復をすることになった際の費用の目安が細かく記載した説明書が用意されており、後日のトラブルを回避するための工夫もされている。

業種によっては事務所兼住居という使い方も可能で、登記もできる。ただし、オフィスのみの利用はできない。

割り切った改修で収益を確保

吹き抜けの下が土間部分になる。L字型の居住スペースの天井が2階の床になっているのだ
吹き抜けの下が土間部分になる。L字型の居住スペースの天井が2階の床になっているのだ

改修では雨漏りしていた屋根を金属屋根に改変、内部をスケルトンにして2枚の、1〜2階を貫通する界壁を立てた。床はコンクリートを打ち、居住空間の箱の天井で2階の床になる部分には24ミリの構造用合板を使い、これらによって従前に比較して耐震性能をアップさせている。内部は雨漏りなどでカビだらけになっている部屋があったり、給排水が詰まっていたりとボロボロだったそうで、給排水や設備関係はすべてやり直すことになった。

だが、それ以外は極力あるものを利用、コストダウンを図った。たとえば、壁は既存の土壁の上に木材下地を渡し、ガルバリウム鋼板を貼っただけ。窓も同様にそのまま使っている。加えて3部屋を全く同じデザインにすることで設計料、手間も省いた。

その結果、総投資額は3400万円に。賃料は10万5000円で礼金、敷金は各1カ月。オーナーとしては10年くらいで回収できればと考えていたそうだが、最終的には9年ほどで回収できる見込みだという。

「周辺にある長屋物件では間取り等は変えずに内部だけを改修している例が大半でしたが、それでは特徴がなく、賃貸商品として埋もれてしまう。それよりは大きく印象を変える使い方、土間や広い浴室など他にない空間を作るほうが選ばれるはず。戸数をそのままに改修するとしたら、資材も手間も大量に必要で、その割には収益が上がらない。長屋として戸数を減らして再生が現実的ではないかと思いました」。

1階から天井を見上げるとこんな感じ。カメラではとらえきれないほどの高さがある、開放的な空間で、これだけのボリュームがある賃貸住宅も珍しい
1階から天井を見上げるとこんな感じ。カメラではとらえきれないほどの高さがある、開放的な空間で、これだけのボリュームがある賃貸住宅も珍しい

日本で住宅を改修するとなるとすべてを改修しようとすることが多いが、使う部分だけ、住む部分だけなどと割り切ってしまえば費用は抑えられる。空き家のうちでも規模の大きな住宅は改修費が嵩むと敬遠されがちだが、発想を変えて使う部分だけを改修すれば無理がない。また、最初に改修した部分の家賃収入で次の改修費を賄うようにすれば、最終的には全体を改修することも可能になるのではないだろうか。

2月に行われた内覧会では入居希望者のほか、地主、大家など不動産の使い方を参考にしたいという人も多く集まったというが、納得である。ニッチな住み方を望む人を集めるためのノウハウは必要になるだろうが、やり方には参考すべき点が多いと思う。

健美家編集部(協力:中川寛子)

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