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老朽化した狭いワンルーム2戸を1戸に、これまでと違うターゲット向けに質、賃料アップを

賃貸経営/リノベ・修繕 ニュース

2023/02/13 配信

東京メトロ千代田線根津駅から歩いて2分。路地に建つエメラルドマンションは1972年に建てられた鉄骨造の3階建て。3階にあった4畳半+水回りの2部屋が1LDKに改装され、それまでの家賃からするとかなりアップした上にあっという間に入居が決まった。内装だけでなく、外観も含め、これまでとは全く違うターゲットを狙った改装について聞いた。

予算、規模から建替えではなく再生を選択

物件がある谷根千周辺は細い路地が多く残るエリア。エメラルドマンションもそうした路地に面しており、築51年。3階建てで1階にはオフィス、2階、3階に2世帯が居住していたが、3階に住んでいた外国人はコロナ禍で退去。

以前の外観。路地に面しており、建替えるとこれまでより小さくなってしまう
以前の外観。路地に面しており、建替えるとこれまでより小さくなってしまう

そのまま、1年半ほど放置されていたが、たまたまオーナーが自宅の改修を依頼した株式会社Drawerの田中マサシ氏に相談したことから改装することになった。

「建替えには2億円後半くらいの予算がかかる上に現在よりも小さな建物しか建たない。そこで既存の建物が生かせるなら生かして使おうということになって着手しました。

改装中の様子。これまで気づかなかったが建物内部はかなり傷んでいたわけである
改装前の様子。これまで気づかなかったが建物内部はかなり傷んでいたわけである

現オーナーは三代目で建物の経歴を知らないままに解体をしてみたところ、驚いたことに煤(すす)だらけ。近隣に住む初代オーナーの身内に以前火事があったかどうかを聞いてみたところ、建築後2年ほどで2階が火事になっていたことが判明しました。ただ、鉄骨は補修できる範囲内だったため、一部を入れ替え補修して補強の上で外壁塗装を施しました」。

ワンルーム2戸より1LDK1戸という理由

改装前の室内。かなり荒れている。これを直しただけでは借りてもらえまい
改装前の室内。かなり荒れている。これを直しただけでは借りてもらえまい

元々は和室4畳半に水回りという2戸があり、室内はかなり荒れ果てていた。それを元に戻したところで魅力的な物件にはなりそうにない。

窓からの眺望。周辺に高い建物がないので3階からでもこの眺望が得られる
窓からの眺望。周辺に高い建物がないので3階からでもこの眺望が得られる

また、現場に来てみると窓からスカイツリーが見え、眺望が抜けている。周囲に高い建物がないため、3階でも十分に開放的なのである。

以前の玄関は現在の玄関部分、現在キッチンになっている部分にそれぞれあった
以前の玄関は現在の玄関部分、現在キッチンになっている部分にそれぞれあった

そこで眺望を楽しんでもらえるようにと1戸1LDKに改装することにした。狭いワンルームを作るより、長く住んでもらえるような広い住戸を作ることにしたのである。これは非常に賢明な判断だと思う。いくつか理由がある。

ひとつは根津界隈の街自体の変化。この建物が建った頃の根津界隈は路地が残っていることからも分かるように下町の雰囲気が残る、あまり知られていないまちだった。だから、狭くてもお手頃な物件はニーズに合っていたのだ。

ちなみに以前の賃料は6万円~8万円ほどだったとか。しかも、きちんと払われることがあまりなかったとも。いささかルーズな方がお住まいだったようである。

ところがこの50年ほどの間に谷根千(谷中、根津、千駄木)が人気になり、住みたい人も増えた。であればそうした、多少高額でもきちんと払ってくれる人たちをターゲットにした質、賃料の物件は十分あり得るはずだ。

また、コロナ禍での賃貸市場の変化もある。単身向けの手頃な物件は動かなくなっているが、それよりワンランク上の部屋は動いている。単身者向けに小さな部屋をたくさんつくる事が収益に繋がりにくいこともある。立地、広さ次第ではあるものの、質の高い、他と差別化できる物件を作るほうが収益を高くするかもしれないのである。

コロナ禍では部屋に対するニーズも変えた。住居としても、仕事場としても使えるような間取り、広さを探す人が増えているのだ。同様に開放的で眺望が楽しめる家に人気が集まるようにもなっている。

現しになった鉄骨が印象的な室内

玄関(右手)と室内の間に小さなホール。壁際には収納もたっぷり
玄関(右手)と室内の間に小さなホール。壁際には収納もたっぷり

実際の間取りは横に広い玄関を入ったところがちょっとしたホール的な空間になっており、そこから入ると11.8畳のリビングダイニング。

仕事場として使う可能性を考えるとキッチンは見えない位置にあるほうが良い
仕事場として使う可能性を考えるとキッチンは見えない位置にあるほうが良い

キッチンはその奥にあり、入ったところからは見えない作り。仕事場兼用として使う人には使いやすい間取りだ。

室内天井には鉄骨が現しになっており、インテリアのアクセントに。これは面白いアイディアである。

玄関からキッチン、居室側を見たところ。正面の木のパネルが印象的だ
玄関からキッチン、居室側を見たところ。正面の木のパネルが印象的だ

リビングダイニングの正面には印象的な木の壁がある。これはtoolboxで販売しているウッドウォールパネル、クラシックリブパネルを利用したもので、この1枚で部屋に質感が生まれる。最近、人気だそうで、覚えておいても良い材だろう。

居室内。右手にスカイツリーが見える
居室内。右手にスカイツリーが見える
居室収納。ロールスクリーンが設置されている。このやり方も面白い
居室収納。ロールスクリーンが設置されている。このやり方も面白い

木の壁の裏側が洋室5.5畳。眺望が魅力の部屋で、リビングとの間には収納が設けられている。水回りはキッチンの奥だ。

壁は汚れたら塗るだけで原状回復ができる塗料で仕上げた。長く住んでもらうことを考えて断熱材は2種類入れ、サッシは断熱性の高い樹脂サッシに変えた。

ルーバーで覆って建物外観もグレードアップ

新しくなった外観。これで洗濯物が見えることもなくなり、雰囲気は大きく変わった

新しくなった外観。これで洗濯物が見えることもなくなり、雰囲気は大きく変わった

もうひとつ、面白いのは外壁。現在は不燃性の木のルーバーで覆われているが、これは2階居住者の洗濯物を見えなくするため。それなりの賃料の物件であれば室内だけではなく、外観にもこだわりたいところだが、居住者に洗濯物を干すなとは言えない。そこでルーバーでカバーすることで見た目をグレードアップさせたというわけだ。

賃料は16万2000円。仲介を担当する合同会社THIRDPROJECTの久保暁育氏によると相場よりちょっと上くらいに設定しているという。

「このエリアで50㎡弱の鉄骨造の物件はほとんどないため、RC造の築浅物件を参考にやや強気で家賃設定をしています。このあたりで日当たり、眺望に恵まれた物件は少なく、室内も含めて考えると大丈夫だろうと考えています」。

実際、2023年1月7日に行われた内覧会ではカップル、仕事場で使いたいという単身者などから8組ほどの予約が入っており、最終的には5組から申込みが入った。審査後21日には契約に至っている。早々に決まったと言って良いだろう。

防水のやり替え、塗装などを含め外装修繕費で約1500万円、鉄骨のやり替え、水平区画の界壁の防火処理、サッシカバー工法などを含めたその他内装で約1300万円ほどがかかっている。

それだけで見るとさほど収益性が高いようには思えないが、そのまま放置、一円も生まないままでいることを考えると、はるかに賢明な選択である。

田中氏は他にも多くの賃貸住宅、空き家などの改修を手がけているが、自分が住んでもいいと思う物件しかやらないというのが基本方針。

だが、その結果、どの物件も短期で選ばれ、長く居住してもらっているとか。ホームページには多数の改修事例が掲載されているので、参考にしたいところだ。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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