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駅前ビル2階を住宅から店舗に。街の変化に合わせて用途を変えるという試み

賃貸経営/リノベ・修繕 ニュース

2023/03/20 配信

東京メトロ丸の内線新大塚駅を出たところに築40年、RC造4階建てのMKビルがある。1階には洋菓子店が入っており、2階以上は住戸なのだが、その2階の2戸が空いてしまった。普通なら原状回復して住戸として募集というところだが、ここではリノベーションで2戸を店舗に改装した。どういう意図か。手掛けた尚建の徳山明氏に聞いた。

周囲の発展で取り残されたビルを改修

駅から見たMKビル。駅周辺の写真を撮影すると必ずと言って良いほど入り込む位置にある
駅から見たMKビル。駅周辺の写真を撮影すると必ずと言って良いほど入り込む位置にある

MKビルがあるのは東京メトロ丸の内線新大塚駅と道を1本隔てた場所。目と鼻の先といえるほどの場所で、地下鉄から階段を上がってきた目線の先の建物がある。1階は店舗なので目立って良いのだが、2階は住居。駅の方向に大きな窓があり、部屋からも駅が見えるのだが、率直なところ、見え過ぎる。バルコニーも駅側なので、洗濯物も丸見えだ。

MKビルのすぐ脇の道の様子。古いアパートなどもあり、都心の、駅から2~3分の場所とは思えない
MKビルのすぐ脇の道の様子。古いアパートなどもあり、都心の、駅から2~3分の場所とは思えない

「もともとのこのあたりはすぐ裏手がそうであるように、アパートなどが入り交じるごく普通の住宅街。そこに駅ができ、だんだん周囲が発展、繁華になってきたことで古い建物がそれに取り残されてしまった。住宅としては少しバランスが悪い感じになってきた地域です」と尚建の徳山氏。

外から室内がよく見えることに加え、コンパクトな3点ユニット。これでは単身者にしか貸せない
外から室内がよく見えることに加え、コンパクトな3点ユニット。これでは単身者にしか貸せない

2階2室のうち、まず空いたのが駅に面した側の住戸。DK6.5畳に洋室6.3畳というコンパクトな部屋でしかも、3点ユニットという間取りである。間取りだけでも今の時代にはそぐわない上に外壁から漏水を起こしており、古いタイプの3点ユニットは床が腐って入れ替えが必要な状態になっていたという。

そこで徳山氏はとりあえず、スケルトンにすることを提案。その後、どう改修するかを考えましょうということになったのがコロナ前のこと。その後にもう一部屋も空いた。

後に空いた部屋。仕切りのない部屋で階下の音の問題、日当たりの悪さなど住宅としてはマイナス点も
後に空いた部屋。仕切りのない部屋で階下の音の問題、日当たりの悪さなど住宅としてはマイナス点も

こちらの部屋もかなり傷んでいる上に隣戸と近く日当たりが良くない。階下に洋菓子店の作業場があることから仕込みの音が気になるというハンディもあった。老朽化もあり、いずれの部屋も住宅として貸すには辛いと徳山氏は判断した。

駅に面した側の部屋。駅からよく見えるのと同じくらい室内からも駅、道路がよく見える。見え過ぎる
駅に面した側の部屋。駅からよく見えるのと同じくらい室内からも駅、道路がよく見える。見え過ぎる

そこで、時代に合わせて店舗にすることにした。住むにあたってマイナスになる視認性の良さは店舗としてはプラスになる。多少音の問題がある物件も寝る場所としてではなく使えばさほどの問題にはならなくなる。幸い、用途地域は第1種中高層住居専用地域で、2階までの150㎡までなら店舗にはできることになっていた。

ここを起点に地域の魅力を再考

もうひとつ、意識したのはこの場所が背後にある住宅地の入口にあたるという点。公園もあり、若いファミリー世帯も多い住宅地である。しかしながら都心を走る地下鉄駅周辺であることから、利便性だけで選ばれる傾向があり、地域の良さが理解されていなかったと徳山氏。

そこでここが地域の価値を高めるための起点となるよう、このフロアを「SPOT新大塚」と名付け、専有部分の間に2つの共用部分を設けた改装を行った。

改装後の間取り。階段を挟んで共用部を設け、その奥に各店舗の専有部分があるという間取りになっている
改装後の間取り。階段を挟んで共用部を設け、その奥に各店舗の専有部分があるという間取りになっている

店舗は2種類。駅側の店舗は小物物販を想定、賃貸面積18.9㎡。反対側は軽飲食を想定、厨房を含み、賃貸面積は22㎡(重飲食は不可)。厨房はこれから借りた人が改装することになるが、それ以外は内装仕上げはほぼ仕上げた状態になっており、すぐに店を持ちたい人も借りられるようになっている。

軽飲食を想定した部屋。奥にキッチンを配す想定でここだけはテナントが自分で改装することになる
軽飲食を想定した部屋。奥にキッチンを配す想定でここだけはテナントが自分で改装することになる

賃料は始めてお店、飲食店を出す人にも手の届きやすい金額を想定している。それによってここに住む若い年代と同年代の店主が生まれれば、ある意味、インキュベーション施設としても機能するのではないかと思う。

共用部。一息付けるようにベンチが用意されている
共用部。一息付けるようにベンチが用意されている

室内は40年前のコンクリート躯体を現しにしつつ、珪藻土を使って温かみも感じられるように仕上げられており、共用部にあるトイレ、ベンチも柔らかな雰囲気になっている。契約は定期借家で令和13年7月までの8年間を想定している。

「この8年間は街の人にこの場所を認知してもらうための時間と考えています。店を利用するだけでなく、共用部で会話が生まれ、この場に愛着を持つ人が増えてくれれば良いと思っています。

その次にはこのエリアに外から人が入ってくるフェイズに移行、さらにその後は地域に住居、店が増えるように、この場所を育てていければと考えています」。

2階テナントにとっては1階から2階への誘導が重要だが、1階エントランス、2階への階段室などについては今後テナントとも相談しながら進める予定だという。

時期を見るという経営の必要性

この建物もそうだが、小規模な建物の場合には単独で建替えても収支が合わないことはよくある。特にRC造であれば解体にそれなりの費用がかかり、さらに合いにくい。といって近隣と一緒に建替えを考えても、それぞれの所有者にはそれぞれに理由があり、なかなかタイミングは合わない。

だが、これから現在70代半ばとなっている団塊世代の代替わり期が到来することを考えると、代替わり後に築年数の経った古い建物の共同建替えや開発が可能になることは十分考えられる。

そうした時代背景を考慮すると現在の古い建物を今急いで動かすより、少し時間を稼いで動向を見るというのはあり得る手。もちろん、その間、稼がずに放置するわけにはいかないので、その時々に合わせた稼ぐやり方を考える必要はもちろんある。その意味では稼ぐ手を考えられる事業者と一緒に方法を考え、サブリースで運営をお願いして時を待つというのは有効だろう。

新大塚駅周辺もそうだが、古い街では駅周辺とそれ以外の地域に不動産の使われ方、期待されるものにずれが生じている地域もあるはず。そんな地域ではタイミングを見計らう経営も必要なのかもしれない。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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