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大家負担で入居者の理想の空間へリノベーション。「自分好み賃貸」で築50年物件の入居率をアップ【前編】

賃貸経営/リノベ・修繕 ニュース

2024/05/21 配信

入居率50%を切った築50年マンションを問い合わせの途切れない人気のリノベーション物件へ。

関西地方に暮らす二代目大家の神吉(かんき)優美さんは、空室の目立つ2階、3階の住戸で1人1人の入居希望者の好みを聞いて入居申し込み後にリノベ―ションする、「自分好み賃貸」を始めたことで入居率を78%まで改善させた。

全72戸中、コモンリビングや倉庫として5戸を使用。残りの67戸の住戸のうち、現在は長期入居の高齢者、通常の原状回復で入居の付いたベトナム人技能実習生、「自分好み賃貸」の入居者(工事中の住戸も含める)ら52世帯の住人が暮らしているという。

前編では、高齢の入居者ばかりが暮らす築50年マンションに若者を呼び込もうと、神吉さんが「自分好み賃貸」のプロジェクトを始めるまでの奮闘ぶりを紹介したい。

レール上に着脱式の格子の間仕切りを採用した部屋。2×4の木材で、隙間を開けて格子にしたり、並べて簡易壁にしたりすることが可能。壁面のカラーは数十種類のグレーから入居希望者が好みの色を選んだ

材料費150~200万円で1戸1戸改修。5年間で20戸の入居申し込み

「自分好み賃貸」では1部屋ごとに入居の申し込みを受けてから、入居者が希望する住空間を設計士を交えてプランニングし、神吉さんの会社が抱える大工が解体しフルリノベーションを行う。1戸の広さは約39㎡。リノベーション費用は大家が持つ。

プロジェクト開始からの5年間で19戸をフルリノベーション。すでに入居者が入れ替わった部屋もあるが改修した19戸は満室だ。

2024年4月には20戸目の入居申し込みが入り、現在20戸目の工事に入っている。1戸あたりの着工から完工までの工期は3か月程度で、入居者の要望をヒアリングし図面作成まで入れると入居希望者に割く時間はさらに長い。

カスタムメイドする賃貸住宅「自分好み賃貸」は画一的な賃貸物件では満足のできない入居希望者の心をつかみ、入居申し込みから完成まで1年待った入居希望者もいたそうだ。

神吉さんのマンションに入居を申し込む人は様々だ。

年齢層は20~40代が中心で、アパレル系企業のスタッフ、会社員、医療関係者、公務員、料理人など職業はバラバラ。関西エリアでデザイナーズマンションを扱う専門サイト「極/KIWAMI」で写真を見た入居希望者が多いという。施工事例を見て、関西圏以外のエリアから転勤に合わせて入居したいという申し込みもあった。

施工事例は明日の後編で紹介するが、クローゼット機能を玄関に集約し、身につけていたコートなどを玄関で脱いで収納する部屋や、着脱式の格子を用いた間仕切りを設けた部屋など、入居希望者の数だけ間取りも内装も異なる。

正直、大家の持ち出しでここまでカスタマイズするのかと思うほど、1部屋ごとデザイン性に富んでいる。

「このプロジェクトを始めた5年前で材料費が150万円程度、その後、資材高騰が続き、最近では外部委託のユニットバス設置費やガス工事代なども含め、材料費は200万円弱ぐらいだと思います。その他に、当社が抱える大工の人件費が加わります」と神吉さんは話す。

かつては2階、3階の約39㎡の広さの部屋を5万円で募集しても入居が決まらず、仲介店からは「4万円台まで家賃を下げたらどうですか」と言われたそうだ。「自分好み賃貸」を取り入れてからは、5万9000円、6万円と、数千円刻みで家賃は上がり現在は月額6万6000円で貸している。

1戸あたりの材料費が200万円、大工の人工が別途かかり、月額1万6000円の家賃アップ。時間と費用をかけて1戸1戸古い部屋の付加価値を上げていく。

投資家目線で見ると、中長期を見据えたこのような取り組みができるのも二代目の大家だからといえるだろう。

だが神吉さんは大学教授の仕事、子育て、大家と三刀流で奔走し、賃貸経営を軌道に乗せるまでは様々な試行錯誤を重ねてきた。

2階、3階で10年も入居が決まらない部屋。フルリノベしても入居がつかず

1970年築、鉄骨造3階建て全72戸のマンション。最寄り駅近くに新しい賃貸用物件が増えたこともあり、2階、3階の部屋は退去するとなかなか入居が付かなかった

「自分好み賃貸」を導入したのは神吉さんの父の法人で所有していた1970年築の3階建て鉄骨造のマンションだ。

全72戸と世帯数が多く、所有物件の中でも空室が一番多かった。マンションが建つのは駅から徒歩10分。大阪市内のターミナル駅までのアクセスも悪くない立地だが、最寄り駅の近くに築浅物件が建ち並び、築50年と経年を迎えかつエレベーターのない同物件の競争力は乏しかった。

1階の住戸については数十年前に入居して高齢となった入居者や、新たに住人となった高齢者らが入居していたが、2階、3階の住戸は退去すると次の借り手が決まらない。原状回復工事をしたものの10年以上も入居がつかない部屋もあった。

こうした状況下で、老人ホームに入所した父親に代わって、2018年、大学で建築学を専攻し一級建築士の資格も有する神吉さんが所有物件の立て直しを図ることになる。

「共用部の掃除をしながら“大家の娘です。よろしくお願いします”、と入居者さんに挨拶をしたり、顔なじみになった人たちと立ち話をしたり、空室の排水トラップの水が切れないよう水を差して回りながら、築50年以上の借家をどうしたら良いかと頭を悩ませました」と神吉さんは語る。

試しに空室の目立つ2階、3階でフルリノベーションをしたものの、現実は厳しかった。改修前に5万円で貸していた部屋を6万2000円に値段を上げて入居募集したものの、入居が決まらなかったのだ。

元気だった頃の神吉さんの父親は、寝ても覚めても借家や入居者のことを考えている人で、「大企業ならポルシェみたいなスポーツカーで颯爽と走ればいいが、 うちみたいなところはたとえかっこ悪いと周りに笑われようが、 軽トラに土を積んで運んで、道に凸凹があれば埋めながら走っていくしかないんや」と語っていたそうだ。

ほかにも、「入居者からいただく家賃で、私らはご飯を食べていることを分かっておきなさい。人を追い出すようなことはするなよ」と幼い神吉さんに口酸っぱく言っていたという。

そうした父の教えが染みついていた神吉さんは既存の入居者の暮らしを守りつつ、父親が守ってきたマンションに若い人を呼び込むにはどうしたら良いだろうかと考えを巡らせた。

2019年に神吉さんが始めたのは「自分好み賃貸」という募集方法だった。

きっかけは神吉さんが旧知の不動産会社「人と不動産」(大阪市天王寺区)の小上馬大作さんに相談したことに始まる。

小上馬さんは、大阪市中央区の谷町6丁目界隈の空堀(からほり)地区で古い長屋を複合施設やシェアオフィス、レンタルキッチンなどへ再生するプロジェクトを手掛けた人物だ。

そんな小上馬さんからの「大工を専属で抱えているってすごい強みですよね。入居者を先に決めてから、その人の希望に応じてプランニングし、解体して工事するというやり方を神吉さんのマンションならばできるのではないですか」というアドバイスが発端となった。

ところでなぜ専属の大工を抱えているのかを疑問に思う人もいるだろう。

補足すると神吉さんの父親は1950年代に脱サラして建売業に参入。戦後の住宅不足もあって家を建てると即完売したという。建売業を祖業に、住宅が売れ残るようになるとそれらの住宅を貸し出した。

その後は建売業から賃貸用の住宅を建設し維持管理する大家業へシフトした。

こうした経緯で複数棟の物件を所有していたことから 、神吉さんの会社では自社施工の大工を1名抱えていた。

「自分好みの賃貸物件で暮らしませんか?」

まずは入居希望者を発掘しようと、マンションの1戸を解体するワークショップを開催した。

「DIYワークショップ」は大好評だったが…。「参加者はワイワイみんなと作業をするのが好きだったようです。自分好み賃貸への引き合いには至りませんでした」(神吉さん)
「DIYワークショップ」の風景。スイッチプレートにアイアン風の加工作業をしている
「DIYワークショップ」の風景。スイッチプレートにアイアン風の加工作業をしている

参加者らに「賃貸の物件を好みに合った部屋にリノベーションしますよ」と話ししたものの、申し込みはさっぱり入らなかった。

そこでフルリノベーション済みの部屋をモデルルーム化し、不動産会社のサイトに掲載したところ、今度はすぐに申し込みがあった。その後も写真を見た人から立て続けに「自分好み賃貸」への入居申し込みが入ったのだという。

「その写真の影響力が大きく、同じようなプランの住戸が続いたのですが、せっかくイチからつくるのですから、“どんな住まいがいいのか、一緒に考えましょうよ”と促し、様々なプランの住戸を作っていきました」

明日の後編では、あれもこれもと理想が膨らんでいく入居希望者と、大家の立場から予算や安全面を考えて判断が必要となる「自分好み賃貸」の課題。一方で大家1人では到底思いつかないであろうバラエティに富んだ部屋が仕上がるという醍醐味を施工写真と共に紹介していく

執筆:スドウミキ(すどうみき)

スドウミキ

■ 主な経歴

出版業界で20年勤務。不動産分野を専門とする雑誌での取材・編集をきっかけにサラリーマン大家の夫と出会い結婚。2022年宅地建物取引士の資格を取得。夫の勧めで法人を設立し、築古アパート1棟を購入する。1歳の子どもを持つ一児の母。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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