自宅の一室を安く貸し出し賃料収入
シニアと若者の双方にメリット
70代や80代といった高齢者の自宅に、地方出身者の学生など若者が一緒に住む。ただし、2人の関係は祖父と孫ではなく赤の他人。正確には賃貸オーナーと入居者だ。近年そんな「異世代ホームシェア」が日本で広がりつつある。
シェアハウスを筆頭に、戸建て住宅などを使い他人同士が寝食を共にするライフスタイルが普及して久しい。その多くは10代~20代の同世代の男女が一緒に暮らすもので、物件オーナーもともに生活するシェアハウスはさほど多くない。あくまでも経営者と入居者の関係だ。
対して異世代ホームシェアは、血縁関係のないシニアと若者がシニアの家で同居するスタイル。若者は地方出身の学生のケースが多くみられる。もともと欧米で広がり、日本にも上陸した。
基本的には子どもの独立などで空き部屋のあるシニアが一室を安く貸し出し、若者が同居して共同生活を送るが、食事は別々、時折若者がシニアの生活を手伝う(介護ではない)など事前に決めたルールに従う。近すぎず遠すぎずの距離感といったところだろう。
異世代ホームシェアには、シニア・若者の双方のメリット・デメリットが考えられる。まとめると以下が想定されるだろう。
■シニア側
メリット:孤立の解消、防犯など生活の安心感、生活面のサポート など
デメリット:騒音や夜更かしなど生活スタイルの違い など
■若者側
メリット:安価な家賃、一人暮らしの不安解消、話し相手 など
デメリット:過干渉、友達を呼びづらい など
シニアにとって若者との同居は生活面で安心があり、電球の取り換えや重いものの持ち運びなど、大変な作業を手伝ってもらえるかもしれない。
高齢単身者は引きこもりになりやすく地域コミュニティと疎遠になりがちだが、同居人がいることで孤立が解消され、メンタル面でもプラスに働くだろう。単身高齢世帯は孤独死が問題なっているが、同居人がいることで体調が急変しても医療につないでもらいやすい。
少ないとはいえ賃料収入も得られる。家賃はシニア(賃貸オーナー)が自由に決められこともあるが、異世代ホームシェアの目的は収益でなく若者の生活支援や交流なので、周辺相場に比べて安く設定することがほとんどだ。
片や、世代の違う人と同居するのだから、騒音や物音、起床・就寝時間など生活習慣の違いには頭を悩ますかもしれない。小言を言いたくなっても、相手は他人だから気を使う必要もある。ただし、入居前にルールを設けておくことで、ある程度は回避できる。
進学などで見知らぬ場所に住む若者にとっては、同居人の存在は心強い。コミュニケーションを通じて学ぶこともあるだろう。地域とのつながりのあるシニアを通じて、若者もコミュニティに溶け込みやすい。
一般的な賃貸住宅やルームシェアに比べると家賃も安く、経済的な負担を軽減できるのも魅力的だ。とはいえ、シニアがそうであるように生活スタイルの違いなどには戸惑うだろうし、場合によっては注意されるかもしれない。
まだ根付いていないので、トラブルも起きるだろうが、徐々に仕組みやルールなどは整備されていくだろう。
両者のマッチングはNPOや福井県、京都府など一部の自治体が行っていて、オンラインなどで空き部屋を貸したいシニアと安く部屋を借りたい若者を募集し、コーディネーターが希望などをヒアリング。
両者を引き合わせ面談をしたうえで合意にいたれば、共同生活が始まる。その後も、コーディネーターが相談相手になり、トラブルなどがあれば対応することがほとんどだ。
シニアと若者だけではなく、地域にとっても若者がいることでコミュニティの維持や活性化にもつながる。異世代ホームシェアは、いまの時代に即し多岐にわたる可能性を秘めた、新たな暮らし方・住まい方と言えるだろう。
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健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))