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レオパレス問題から考える、リスクを避ける工事監理の重要性 「不動産投資家のための建築知識001」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2020/12/10 配信

2020年のコロナ禍に限らず、近年の大きなニュースの上位を占めるのは地震や風水害など様々な災害であり、それらが全世界において常にどこかで生じていることが報道される今日、人々は「リスク」に敏感になっている。

不動産投資の世界ではこれまでいわゆる投資する建築そのものの不良施工や不法状態が問題になることは少なかった。

しかし、それは問題がなかったのではなく、基本的にはエリアで需要が決まる値下がりしない市場であり、取引において建築そのもののリスクを「無視できること」としても成立していた事情によるものである。

しかしながら、2000年代初頭の「姉歯事件」以来、建築に求める遵法性、安全性のリスクにも社会が敏感になってきている。

単なる「物件」ではなく、社会の資産としての価値を損なう行為に厳しい目が注がれる。このことから、不動産投資家にとっても、自分の保有する、あるいは投資する建築資産がどういった成り立ちのものであるのか把握しておくことは、そこにあるリスクを知ることであり重要なことだ。

このシリーズでは、建築の専門家でない不動産投資家を想定して、リスクを避けるために、あるいは逆に投資のストロングポイントを探り当て「建築を使う/運用する」ために、必要な建築の知識が常識となるよう紹介していく。

レオパレスオーナーの嘆き
リスクの根はどこにある

先年からの投資アパート界での話題の一つ、レオパレス案件の是正工事について助言のご相談を受けることになった。ご相談にあたり経緯を調べてみると報道されている不法事実の向こうに、「ではどうしたら防げたのか?」という疑問がやはり浮かび上がってくる。

この件を単に「悪い会社が悪いことをした」ということで片づけてしまうだけでよいのか、ということを考えることが他人事とせずこの事件を自分の糧にすることができるリスクを避ける思考だ。

簡単に報道にある事実関係を整理すると、
1)サブリース契約を前提としたアパート企画を不動産事業のプロでない地主に持ち掛け、工期、工費の少ない「合理的」設計・工法で短期間に自社で建築を設計施工し、競争力のある価格でそれを賃貸として回すことで、キャッシュフローを回転させていくかたちの事業であった。

2)短工期、廉価の建築のための合理化は、現場・下請けへのプレッシャーにもなり、また自社設計施工であるため本来的な第三者的「監理」が十分に行われなかった。結果としてアパート=集合住宅という建築用途に不可欠な防火性能を法規定通りに持つに至らない施工不備が発生した。

3)現在その不法状態を是正するために、半年以上入居者を退去させるなどして防火性能を法適合するよう是正工事が行われている。

<「工事監理」を理解していますか>

この件における大きな分かれ目と思われるのは、やはり施工不備に対するチェックがなされなかったことだ。具体的には「工事監理」業務が十分に行われていなかったということで、所属の一級建築士が国土交通省より処分を通達されている。

ここで注意してほしいのが、日常見ない「監理」(スーパーヴィジョン)という言葉だ。

これは「管理」(マネージメント)一般と異なり、「建築の施工時において、設計図書(行政に確認済の設計内容)に準ずる施工が行われているか責任をもって照合確認すること」という建築士の業務を指す特定の言葉であり、一般には設計施工が分離していれば設計者が監理者を兼ねることが多い。

工事監理者とは(出典:国土交通省工事監理ガイドラインパンフレット)
工事監理者とは(出典:国土交通省工事監理ガイドラインパンフレット)

この監理は施工者に対してやはり第三者的な位置から行いそれを「監理報告書」として建築主に報告し、また監理確認に基づいた施工者への指導助言などによって、建築主は設計図書にある(=契約通りの)建築物を引き渡しを受けることができるということになる。

しかしながら、問題の事案では、監理者が近縁社内の人物であったために上記の第三者的な位置からの監理姿勢が不十分であったことが指摘されている。すなわち設計施工一体の工法であることの工期、工費的メリットの裏側にはこの監理についてのコンプライアンス不足が伴ってしまっていたのだ。

完了検査申請書例(監理状況報告ページ)

もちろん、設計施工一体であっても、きちんとした監理をする会社はありむしろ普通だが、契約した施工者がどちらであるのかは、会社の思想によるものであり、やはり建築主が契約時に確かめることが重要だ。

<監理と「監理報告書」の価値とは>

では、「監理」は具体的に何を与えてくれるのだろうか。

監理報告書には、竣工後に目視などで確認できない、構造や材料、施工の状態などの各工程における記録が含まれる。これがあることで仮に竣工後不具合が発生した場合にも、工程のどこで不備が存在していたのか、いなかったのかを、建物を解体しなくとも確認することができるわけだ。(レオパレスの場合はそれがなかったので、不備を確認するためにも一部解体して直接中を確認しなければならなかった。)

「建築確認は完了検査があるじゃない」と、建築の施工をある程度ご存じの方は言われるかもしれない。

しかしながら行政を含む検査機関の完了検査(および中間検査)では、最低限の構造と材料に関する確認しか行われず、その間々の工程すべての遵法性まで保証するものではない。その時点で検査願いが出された内容についての検査確認以上でも以下でもない。

報告書抜粋ページ例
報告書抜粋ページ例

監理報告書として工程の記録があること、すなわち監理がなされていることであり、そのことがその建築物に不可視の施工というリスクが少ないということを示す一つの証左となる。

また、何か運用中に不具合があったとしても、それに対して対策を立てる手掛かりとして有力な資料となる。その不具合が、経年的な事由によるものか、施工や設計の不備によるものかの中立的な資料ともなるものでもある。

あなたの投資している、所有している建物には「監理報告書」はあるだろうか。

次回は、リスクを避けるために確認すべき「エビデンス」について解説する。

参考:国土交通省「工事監理ガイドラインパンフレット」
国土交通省「工事監理ガイドライン」(別紙)

執筆:新堀 学/しんぼり まなぶ

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【プロフィール】
建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。
著作
2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

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