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居住用←→事業用への用途転用で物件の価値を向上したい時に。できる転用、できない転用「不動産投資家のための建築知識004」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2021/03/12 配信

「不動産投資家のための建築知識」シリーズ。前回の記事では建物件購入前の建築のチェック方法について述べたが、投資後の賃貸事業計画を考えるにあたって大きな分岐点となる建物、物件を「事業でつかうか居住で使うか」ということ、そしてその転用が可能かどうかについての一般的な知識について解説する。

利回り計画とそのエリアのニーズとのマッチング
エリアの動向を読むことから始まる賃貸事業計画

「不動産」の言葉が表すように建物がその場所から動かせないという原則のうえで、その建物を利用する賃貸事業では

1)まずエリアのニーズを把握し、2)つぎにそれにふさわしい事業計画を持つという考え方をすることが基本の定石だろう。

その事業計画を考えるにあたってわかりやすい指標となるのは、賃貸の事業用物件の賃料(坪当たり単価)と住居用物件の賃料(坪当たり単価)の比較をすることだ。

同じ賃貸であっても調べてみるとエリアにより驚くほど差がある場合も多い。

一般には契約形態、利用形態の違いから住居用物件賃料の方が期間的には安定していることが多いが、新線や新駅の開通など大きな都市計画上の開発が近隣で行われると、その影響を大きく受けるのも住居用物件の方である。

事業用物件については、大きく貸店舗物件と貸事務所物件に分かれるが、こちらでも貸店舗物件の方は近隣エリアの性格の影響が大きく、その変化の影響も考慮する必要がある。

ここで、これらのエリアから影響を受ける用途賃貸物件で賃貸事業計画を立てる場合、エリアの変化を読むことも組み込む必要があることがわかるだろう。

すなわち事業期間中に隣接エリアなどで大きな近隣開発などが予定されている場合、その影響が検討している物件の周囲にどういう変化を与えるか。

それによって、例えばもともとは住居用物件賃料の坪当たり単価>事業用物件賃料の坪当たり単価だったエリアで数年後にその賃料単価の逆転が起こることを予想でき、それを先取りしたエリアの変化を利用した利潤の計画につながることもある。当然出口の売却価格にも影響すると同時に、賃貸事業期間中の収益でも差が出てくる。

転用改修の事例1
転用改修の事例1

「転用」「用途変更」という
ゲームチェンジの手段

であれば、と考えてみたいのは「転用」という手段だ。
たとえば、2000年ごろにスタートしたリノベーション・ブームの初期において、東日本橋エリアなどで行われていたのがこの「転用」「コンバージョン」だ。

「2002年問題」と当時呼ばれていたオフィス床の過剰供給予測とそれによる玉突き状態で、空室が増えていくと予想された貸事務所物件をリノベーションすることで、住居用物件として「転用」し、「都市内居住」というあらたなニーズの借り手を掘り起こし、さらに賃料単価の向上が見込めるゲームチェンジが行われていたのだ。

もちろんそのためには、単に不動産情報に「居住用」と言えば済むという簡単な話ではなく、建築の用途と地域についての知識が必要とされる。それを次に解説しよう。

転用改修の事例2
転用改修の事例2

地域と用途との関係
住宅が作れない地域や事業ができない地域がある

日本国内の建築は、その敷地が都市計画区域内であればその都市計画に定められた「用途地域」があり、その用途地域ごとに建築できる建築物(容積、建蔽率、用途)が決められている。(12種類)
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このなかでたとえば「工業専用地域」には「住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿」「兼用住宅」の用途は作ってはいけないと定められている。したがって、「住居用賃貸物件」への転用も不可なのだ。

一方で、「第一種低層住居専用地域」では、こんどは住宅以外の「店舗等、事務所等、ホテル・旅館、遊戯施設・風俗施設ほか」が建築できず、また兼用住宅として事業のために床を利用するとしても、50uかつ建築物の1/2未満という制限および用途の制限があり、これもまた同じく「転用」についての制限となる。

まれに、この「用途地域」の線引き、指定が都市計画によって変更になることもあり、それによって新たな賃貸マーケットが生まれることもあるので、必ず検討物件エリアの都市計画区分は確認し、自分の賃貸事業計画がそのエリアで可能なのか、またニーズの動向と一致しているのか確かめよう。

用途と安全について
単体、単用途の建物でない場合に注意する安全の法規

建築物の用途がこのように区分されている理由の一つは、使い方とそれに伴う安全の確保が深く結びついているからだ。たとえば、事務所で煮炊きを盛大に行うことはその使い方の中心ではない。

一方で住居においてはそれがまさに居住の一部であり、ということは火気使用について安全を高める作り方が必要だ。さらにそれが棟を同じくする共同住宅であれば、戸建ての家よりも火災の被害は隣家にも及ぶ危険を考えなければならない。

1階商業と上階共同住宅の混在
1階商業と上階共同住宅の混在

そういう、使い方とそれに必要とされる安全性について、より安全であるべき建築物(用途)について、「特殊建築物」という区分が作られている。そしてそれらについては安全性を高める、建築上の対応が定められている。
※具体的には「学校(専修学校及び各種学校を含む。以下同様とする。)、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物」である。
※※戸建住宅、事務所は含まれない。

これらに対しては、安全上の「定期報告の義務」「耐火性能」「避難、消火設備」「内装制限」「用途変更における確認申請の必要」「安全上の措置の計画届け出」「避難階段、排煙設備についての規定」などの建築基準法上の定めがありそれを守る必要がある。

すなわちそのための新たに改修=追加投資が必要となるケースがあるということだ。

また、建物の一部がこれらの用途となる場合には、その他の用途と防火扉などの手段で区画を行う必要がある(異種用途区画)などがあるため、「転用」を検討するに際しては、建築基準法、消防法に詳しい建築士、または行政の窓口などに相談して進めることが必要だろう。

知識が必要とされる「用途の転用」だが、最初に述べたようにエリアの市場やニーズの動向をうまく利用することで、むしろ競争力を増す、場合によってはエリアの性格を変えることすらある大きな武器でもあるということを今回はお伝えしたい。

そしてそのためには専門家の知見の賢い利用が有用だということも投資家の武器として考えてほしい。

執筆:新堀 学/しんぼり まなぶ

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【プロフィール】
建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。
著作
2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

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