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「賃貸DIY」ニーズの現在:オーナーと管理と入居者の協力関係をつくれるかが鍵 「不動産投資家のための建築知識006」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2021/05/13 配信

不動産投資家のための建築知識」シリーズ。前回の記事では「空き家活用のヒント」について述べたが今回は、コロナ下のステイホームと共に居住者のニーズがさらに高まっているDIYを賃貸でも可能にする「賃貸DIY」の動向とその内容について解説する。

前回のストック活用の手立ての一つとしても、また投資物件の企画としても、これから期待される領域だ。

「賃貸DIY」が生まれるまで?
自分の住まいを自分でつくる」に魅力を感じる居住者たち

この一年以上になるコロナ感染状況下において、緊急事態宣言によるステイホーム生活、またワークスタイルのリモート化などにより、居住環境への関心とニーズが変化してきた。

いわゆる「DIY」は、家で過ごす時間の増加、また家庭でのワーキングの導入などから、より住まいの質への関心が高まり、またライフスタイルに合わせて手を入れる行動をとる人々が増加している。

賃貸DIY居住者によるDIY
賃貸DIY居住者によるDIY

一例としてホームセンターの売上は2020年に前年比5%の伸びとなっている。(日本DIYホームセンター協会調べ)。

この動きは、もともとコロナ以前からのDIY志向としてたとえば、SUUMOの2017年、2018年の賃貸契約者動向調査の項目でも、カスタマイズ実施経験率の上昇として見えつつあったのだが、やはりステイホーム、リモートワーク生活が日常となることで必要の後押しが影響を与えている状況だ。

もともと、「DIY」はDo It Yourselfの意味であり、アメリカの住宅関連産業の一翼となるセルフビルド系の文化に端を発する。

日本の住産業とは事情が異なるため、単純にそれが輸入されたとするのは難しいが、日本ではリフォーム・リノベーションの普及に追従する形で、一種の「セルフ・リノベーション」として雑誌記事になるなど社会的に認知されつつある。

そういったメディアに触れて「DIY」を自分でもやってみたい層が増える中で、特に若年層が居住している賃貸でのDIYは、いわゆる賃貸規約の「原状回復」の壁があって一方向から見ると「見えない流行」であった。

「借りたもの」を「借りたときの状態で返す」という伝統的な規約事項だが、実際にはフック一つ打てない/打たないというのは、生活の中でありえない。結果として「糊跡なしに貼ってはがせる壁紙」「穴の残らないボード釘」などが開発され、DIY界でのヒット商品となっている。

この動きに変化が見えたのは、2012年の「メゾン青樹ロイヤルアネックス」という、壁紙を選べる「カスタマイズ賃貸」が世に出たときだった。

原状回復が新旧入居者の入れ替わりの時点で「だけ」問題になるのであれば、古い壁紙は更新してしまうのであれば、新しい壁紙を新しい入居者に選んでもらうことが可能であろうという考えであった。
結果として、この賃貸マンションは「行列のできる」とまで言われる人気を博した。(※現在は別の事業者による別の運営となっている。)

すなわち、ここで顕在化したのが「自分の住まいを自分でつくる」という居住者たちの存在、新しいマーケットゾーンだった。

賃貸DIYを運営するための課題と
それによる伸びしろ

このニーズが隠れたものから表に出たことによって、感度のよいオーナー、提案力のある管理会社によって、いくつかの先行事例で「DIY可」という賃貸住宅が企画され募集を開始することになったのだ。

オーナー、管理会社、入居者のあいだで、「原状回復」が絶対ルールではないという認識が広まりつつある。先述の調査でも、DIY賃貸では、入居者が「長く利用したい」「大事に使いたい」という意向が示され、現実にマナーの良い入居者の利用が多いと聞く。

そういった面だけでなく、通常の物件への設備、意匠の更新投資の一部を入居者が負担しているという具体的なプラスのメリットに魅力を感じるオーナーも多い。

賃貸DIYがコミュニティにつながる
賃貸DIYがコミュニティにつながる

もちろん、そのウィンウィンの関係が持続するためにはただ「DIY可」という看板を出せばよいという簡単な話ではなく、管理規約の特約と、管理会社の理解、そしてオーナーの決断が必要である。

一般には、「原状回復」を不要にしつつ、共用部、躯体、防火など建築基準法、消防法に関わる改修はしないという線引きを明確にすること、そして何かあらかじめ決められたことから外れるようなことがあれば管理会社に相談をする、管理会社が回答をするという関係を築くこと、そしてそれらを理解したオーナーの意識変革がそろって初めて、持続できる「DIY賃貸」という企画が成立するのだ。

賃貸DIY化により満室を実現した本多マンション
賃貸DIY化により満室を実現した本多マンション

2019年に「DIY賃貸」としてリリースされた「本多マンション」では、エレベーターなしの3階建て築39年(当時)、駅徒歩8分の空室マンションが「DIY可」となって、半年で満室となった。

上に書いたようなDIY志向の入居者が集まることによって、マンション内コミュニティの発生につながり、またオーナーの負担は外装メンテナンス、基本的設備の更新だけとなっている。しかしながら、規約にDIY特約をつけ、DIYサポート(外部専門家による)というオプションをつけることで賃料も平均10%程度上げられることになった。

条件の悪い(築年の古い、駅遠)ケース、空室の埋まらないケースでこそ、むしろチャレンジしてみる手法の一つとして「DIY賃貸」というプログラムは、興味深い手法だと思われる。

次回は「DIY賃貸」において、知っておくべき建築法規の知識について解説したい。

賃貸DIY居住者によるDIYのバリューアップ
賃貸DIY居住者によるDIYのバリューアップ

画像提供:Naoko Ibe

執筆:新堀 学/しんぼり まなぶ

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【プロフィール】
建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。
著作
2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

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