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アスベストに関する法改正 被害を出さないために解体、改修に関して意識をするべきこと 「建築知識の不動産投資ニュース030」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2023/05/11 配信

「アスベストによる健康被害」という文言について、ニュースで見たことがあると思うが、建設業の現場で過去に起こっていたこと、一般の人には関係ないこととして関心がない人が多いと思う。

しかしながら、その後の調査で30年、40年経った後にこの健康被害が生じているという事例が多く出てきたこともわかり、今後そのような被害を生まないためにきちんと知識を持っておくべきだ。

今回は、アスベストによる健康被害の知識とそれについての法改正について解説をする。

アスベストに関する法改正
アスベストに関する法改正

アスベストによる健康被害とは

まずアスベスト(石綿)とは、天然にできた鉱物繊維で「せきめん」「いしわた」とも呼ばれているものを指す。

石綿は蛇紋石族と角閃石族に大別される6種類があり、そのうち、わが国で使用された代表的な石綿は、蛇紋石族の白石綿(クリソタイル)と角閃石族の茶石綿(アモサイト)、青石綿(クロシドライト)である。

極めて細い繊維で、熱、摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っていることから、建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)、摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)といった様々な工業製品に使用されてきた。

しかし、石綿は肺がんや中皮腫を発症する発がん性が問題となり、2006年9月以降は、代替が困難な一定の適用除外製品等を除き、石綿及び石綿をその重量の0.1 %を超えて含有するすべての物の製造等が禁止された。

2012年3月1日以降は、「石綿分析用試料等」を除く、すべての石綿含有物の製造等が禁止された。

アスベストの使用量の推移
アスベストの使用量の推移
アスベスト
アスベスト

このアスベストはヒトの髪の毛の直径(40μm~100μm※1)よりも非常に細く(クリソタイル(白石綿)の直径0.02-0.08μm、クロシドライト(青石綿)0.04-0.15μm、アモサイト(茶石綿)0.06-0.35μm)、肉眼では見ることができない極めて細い繊維からなっている。

そのため、飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸入されてヒトの肺胞に沈着しやすい。吸い込んだ石綿の一部は異物として痰の中に混ざり体外へ排出される。

しかし、石綿繊維は丈夫で変化しにくい性質のため、肺の組織内に長く滞留することになる。この体内に滞留した石綿が要因となって、肺の線維化やがんの一種である肺がん、悪性中皮腫などの病気を引き起こす事例がみられる。

石綿繊維により長期間にわたって炎症がおこり、肺の組織が傷つけられ続けることで線維化が生じ、また、発生した活性酸素によりDNAが損傷された結果、遺伝子異常が起こり、細胞ががん化する可能性があると考えられている。

特に因果関係が強くみられる「中皮腫」については、2017年に中皮腫で死亡された方は1,555名で、1995年の3倍以上になっている。

平均40年とみられる潜伏期間を考慮すると、1960年代のアスベスト被ばくとの関連が問題とされている。
多くは、その時点で建設業、製造業に従事していた者である。

アスベスト利用と中皮腫の死亡
アスベスト利用と中皮腫の死亡

現在の対策の必要性

これら現在の被害者の多くは、製造、建設の現場でアスベスト被ばくに遭遇したものによると考えられているが、結果として現代でも社会には当時使用されたアスベストを含む材料が残されている。

使用されているこの材料自体は繊維を放出し続けるものではないので、その存在がただちにアスベスト被害を一般にもたらすものではないが、たとえば建築物の解体、改修、リフォームにおいて、素材自体が撤去、破砕される機会には繊維が大気中に飛散するため、対策を講ずる必要があり、そのための法規制とその改正が行われている。

法令は「大気汚染防止法」「石綿障害予防規則」である。前者は建築物等の解体等工事における石綿飛散防止対策を定めたもの、後者は作業におけるばく露防止対策等を定めたものになる。

解体、リフォーム(解体、改造、補修作業)においてレベル1建材:吹付け石綿、レベル2建材:石綿含有断熱材、そして今回改正により追加されたレベル3建材:石綿含有成型板等が、特定粉じん排出等作業を伴う建設工事(特定工事)の実施の届け出または作業計画の作成を義務付けられている。(レベル1,2は届け出、レベル3は計画作成)

これらの対象が存在すると想定される建築物の解体、改造、補修作業において必要な知識を有する者(建築物石綿含有建材調査者)による事前調査が令和5年10月以降義務付けられ、その記録を解体工事終了後3年間保存することが義務付けられた。

その内容によって、アスベスト除去のための工程、封じ込めまたは囲い込み作業の作業計画を作成し、除去作業を行うことになる。

アスベスト事前調査の方法
アスベスト事前調査の方法

発注者として知っておくべきこと

以上を整理すると、
・2006年以前の建築物の解体、改修、部分の撤去を含むリフォームなどにおいてはアスベストが建材として使われている可能性がある。

・その有無にかかわらず、80㎡以上の解体工事、100万円以上の改修、特定の解体、改修工事においては、労働基準監督署、都道府県知事に事前調査結果を届ける義務がある。

・工事開始前に事前調査結果を労働基準監督署または自治体へ報告する義務がある。

・それらに関する資料(建設時、改修時の図面、発注内容など)があれば、発注者から施工者に通知する配慮義務がある。

・アスベストが使われていることが明らかな場合は、その除去工事、作業方法、費用などの発注条件において、施工が法令を遵守して行われるようにする配慮義務がある。

・それらの調査費用がきちんと見積に計上されているかを確認し、適法な工事を行う施工業者を選ぶことが重要である。

どういったものにアスベストが使われてきたか、国交省資料に「目で見るアスベスト建材」という資料がある。
一読しておくと、リフォーム、改修などの際に役立つであろう。

避けられる未来の健康被害を食い止めるために、現在の建物を将来に生かしつつ使うために、建設業以外の人たちにこそ認識をしてもらいたいことなのだ。

住宅のアスベスト仕様部位
住宅のアスベスト仕様部位

執筆:新堀 学(しんぼり まなぶ)

新堀 学

■ 主な経歴

建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。
一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。

■ 主な著書

  • 2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
  • 2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
  • 2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
  • 2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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