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IoTとの付き合い方 スマートホームの事業意識「建築知識の不動産投資ニュース031」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2023/06/08 配信

近年は「オートメーション」、「スマート」などの文言がホームやオフィスなどに接頭辞として組み合わされ、様々な場面でネットワーク的サービスの中に組み込まれていく流れの中にある。

国土交通省・サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)においても、見えないネットワークの上に一つの端末としての「住宅」が構想されている。そこに恩恵を受ける社会とはどのようなものなのかいくつか最近の話題から考えてみたい

スマートホームの事業意識
スマートホームの事業意識

サービス停止されたスマートロック

自分の体験であるが、先日所属している団体の事務所を引っ越しすることになった。多くの人が不定期に出入りする一種のシェア的利用に合わせた鍵管理の問題を考えることになり、スマートロックを各種検討してまずはシンプルなアプリと近接無線通信タイプのものを採用することになったのだが、その検討の中で候補に挙げられていた一社の製品がつい先日、サポート停止というニュースが流れてきたのだ。

サポート停止となったのは、販売後5年になる、買い切りタイプのスマートロックで今後はサービスアプリがアップデートされない、サーバーも更新されないということになる。結果として、ユーザーは次世代機へ移行を余儀なくされることになる。

この変化するネットワークと所有という固定的財産観の相性の悪さは、携帯電話、スマートフォンの端末寿命というこれまでの体験で誰もが感じていることであり、ビジネスは利用と所有を微妙にすり替えしつつ、キャッシュを獲得していく時代となっている。

自分のスマートロック導入の経験でも、結局は「権限」を常に動的にコントロールする必要があり、現在権限を持っている人間が誰かのマネジメントということに「気を配る」ことが必要となる。カギという実態が権限そのものである時代から、認証という手続きが権利、人格そのものになっているのだ。

スマートロック程度であれば、もちろんバックアップのハードキーなどの手段で安全保障的な対応は可能であるが、当然ながらそのマネジメントをうまく働き続けさせないと事故的な不都合が生じてしまう。ユーザー側の責務部分が大きくなっているのである。

スマートロック
スマートロック

次世代型住宅で構想されているテーマ

さて、この建築、住宅のスマート化というのがどのように日本で導入されてきているかについて、国交省のサステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)を振り返ってみると平成29年度に第一回の公募が行われ、その時の資料では「日本再興戦略2016」からの流れであることがわかる

論点とされていたのは
・情報セキュリティの確保や個人情報・プライバシーの確保の必要性
・導入に際してのヒューマンサポート等の必要性
・繋げる・連動させることに伴う問題
・自動化やサービスに頼ることに対する不安
といった、なし崩しの普及を想定したどちらかといえば慎重な意見が多かったことがわかる。
また、それが実現する内容としても
・「健康管理」
・「家事負担軽減・光熱費」
・「防災・危機管理」
・「住宅のセキュリティ」
・「子どもの見守り」
・「介護・高齢者見守り」
というものであり、それほど一般の生活感と離れたものではなかった。

しかしながら、令和5年度の公募資料「次世代住宅プロジェクト2023」においては、
・高齢者・障害者等の自立支援
・健康管理の支援
・防犯対策の充実
・コミュニティの維持・形成
・家事負担の軽減・時間短縮
・物流効率化への貢献
と微妙に変化しており、より生活に入り込んでくる傾向が読み取れる。

次世代型住宅モデル
次世代型住宅モデル

それらのIoT住宅をどのように実現するかについては、新築、改修のいずれもが対象となっている。

総体的な印象を言うと、これらの実現の目指す未来はいわば「住宅が公共的サービスを担う」時代なのかもしれない。家族や地域といった伝統的な庇護的セーフティネットが都市化によって失われ、それを代替する形で社会保障制度とそのための公共税負担が国民生活に大きな部分を占めるようになってきた平成を経て、令和の近い将来においてはそのサービスネットワークの福祉的末端としての住宅が構想されている、とみることができるだろう。

生活ニーズという情報の価値とアップデートするネットワーク

実際すでにIoTマンションというスタイルも珍しくはない現在、それらの実装に対してコストを払う層は十分に存在し差別化という点でも意味がある。言い換えれば省力化されたコンシェルジェ付きマンションの実現という考え方ができるだろう。その延長線では相対的にはサービスに重心が移っていき、実際の場所や空間、建築はむしろそのための器になっていく。

ニーズとサービスが密着し、そこにレスポンスが多くなるとそのやり取り自体の情報的価値が増していく。データの蓄積からニーズ予想と調達計画化などの最適化が行われるようになるならば、結果として住民のそのサービスへの依存が生じることはAmazonなどのITサービスの例を見れば想像がつくだろう。

先日リビングテック協会が発表した図版にスマートホームカオスマップがある。

端末となる「住宅」にこれだけのサービスが接続されようとしている中、冒頭に示したスマートロックの事例からも、これらのサービスを受け続けることはすなわち変化し続けるネットワークにつながるための永遠のアップデートを必要とする。

サブスクリプションベースの持続的産業が生まれてたかだか30年程度ということを考えると、建築にイメージする持続性とサービスの持続性のギャップが溶け合うのはもう少し先になるのかもしれないが、賃貸、所有を問わず住宅のオーナーは自分の物件を「端末化するかしないか」の選択をせまられる時代がいずれ訪れるのだろう。

端末としてのスマートホーム
端末としてのスマートホーム

執筆:新堀 学(しんぼり まなぶ)

新堀 学

■ 主な経歴

建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。
一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。

■ 主な著書

  • 2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
  • 2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
  • 2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
  • 2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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