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民間賃貸住宅の長期修繕計画 – 資産の価値、生産性をキープする考え方 「建築知識の不動産投資ニュース043」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2024/06/13 配信

令和6年6月に国交省より公表されている「長期修繕計画」に関する標準様式、ガイドラインなどが改訂された。これからの高齢化社会、また向かうべき持続可能社会に向けた区分所有マンションに関する施策のアップデートが行われているその一環である。一方で民間賃貸住宅においては長期修繕計画が準備されているだろうか。

2017年の報告によれば、賃貸住宅を所有している家主で長期修繕計画を立てている割合は22%だけであった。

CO2削減を含めた今後の住宅性能の向上要求の中で、現在の住宅の寿命を長寿命化するためにも自己の資産である賃貸住宅を守る長期修繕計画の必要性を理解しそれを考えることがこれからの家主の必須条件となる。

民間賃貸住宅の長期修繕計画
民間賃貸住宅の長期修繕計画

長期修繕計画をめぐる動向

近代集合住宅に日本人が住むようになっておよそ100年を超えた現代において、集合住宅の形態は大きく二つに分かれ、分譲と賃貸とがその需要にこたえて作られてきた。

前者の分譲型集合住宅については、この期間の生活スタイル意識、価値観の多様化、権利、利用関係の複雑さとそれらを容れる建築構造の不可分なところなどから課題が挙げられており、ストックとなるべき建築の修繕の計画とそれを実行するための資金の計画が必要とされ、令和2年に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律およびマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」が定められ、令和3年に「長期修繕計画標準様式」「長期修繕計画作成ガイドラインおよび同コメント」が改訂された。

長期修繕計画標準様式及び長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメントの位置づけ
長期修繕計画標準様式及び長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメントの位置づけ

ここでは、管理組合を主体として、長期修繕計画(修繕、資金)について内容とその具体的なものを同計画するか、そしてそれを実行するための文書資料のひな形が示されており、試算と検討を管理組合において行うための道筋となっている。

以下、ガイドラインの目的、計画の目的について抜粋しておく。

<ガイドラインの目的>
このガイドラインは、マンションにおける長期修繕計画の作成又は見直し(以下「作成」という。)及び修繕積立金の額の設定に関して、基本的な考え方等と長期修繕計画標準様式(以下「標準様式」という。)を使用しての作成方法を示すことにより、適切な内容の長期修繕計画の作成及びこれに基づいた修繕積立金の額の設定を促し、マンションの計画修繕工事の適時適切かつ円滑な実施を図ることを目的としています。

<長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の目的>
マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するためには、適時適切な修繕工事を行うことが必要です。また、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図る改良工事を行うことも望まれます。
そのためには、次に掲げる事項を目的とした長期修繕計画を作成し、これに基づいて修繕積立金の額を設定することが不可欠です。

①将来見込まれる修繕工事及び改修工事の内容、おおよその時期、概算の費用等を明確にする。
②計画修繕工事の実施のために積み立てる修繕積立金の額の根拠を明確にする。
③修繕工事及び改修工事に関する長期計画について、あらかじめ合意しておくことで、計画修繕工事の円滑な実施を図る。

この目的に関しては、冒頭に書いた「分譲」と「賃貸」の別なく、「集合住宅」という器の機能を維持していく、というそのむこうにある目的のために必要と思われる内容だ。

したがって、賃貸住宅の大家が自らの集合住宅についての長期修繕計画の必要性を理解し、それを策定するときに利用できる資料ということができる。

賃貸住宅の維持管理計画の実態

一方で、平成31年に国交省住宅局から公開された、「賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について」という報告書から見てみると、

「現在1800万戸を超える民間賃貸住宅については、今後築後数十年を迎えるストックの大幅な増加が見込まれる。居住者側のニーズの多様化も進んでおり、賃貸住宅経営をめぐる社会経済情勢は様々に変化していくことが見込まれる。

こうした現状を踏まえると、今後、多様化する居住ニーズに合わない賃貸住宅は陳腐化し、空室率の上昇や家賃水準の引き下げを強いられるおそれがある。」

という懸念から始まり、その背景状況のデータとともに、それに対処するための判断フローがこちらである。

賃貸住宅経営における投資判断フロー
賃貸住宅経営における投資判断フロー

そして、ここに民間賃貸住宅における長期修繕計画の作成状況についての計画を作成している家主の割合が2割前後という状況であることもグラフに示されている。

民間賃貸住宅における長期修繕計画の作成状況
民間賃貸住宅における長期修繕計画の作成状況

この資料の興味深いところは、木造、RC造などの修繕の有無による収益評価のシミュレーションが示されているところであり、

たとえば、木造アパートにおいては、
「計画修繕あり(30年まで使用)」の損益分岐点は18年目、「計画修繕なし(22年まで使用)」は15年目となり、実質利回りにおいて「計画修繕あり」が2.78%、「計画修繕なし」が2.13%と、「計画修繕あり」のほうが収益性が高い結果となった。

シミュレーション結果例
シミュレーション結果例

その他のシミュレーションにおいても、「長期に運用する場合は計画修繕を実施することが収益的に有利」という結論となる。

賃貸住宅の長期修繕計画作成について

では、実際に修繕計画をどのように立てるのか。
基本的には、部位別に
・屋根
・外壁
・手すり
・給排水管
・設備機器

などが特に老朽化によって明らかに性能が低下するところとなる。

各部劣化事例(屋根)
各部劣化事例(屋根)
各部劣化事例(外壁)
各部劣化事例(外壁)
各部劣化事例(給排水管)
各部劣化事例(給排水管)

国交省より「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」というパンフレットが公開されている。
(より詳しく知りたい場合は日本賃貸住宅管理協会から出ている、賃貸住宅版長期修繕計画案作成マニュアルがある。)

ここにある、いくつかの計画修繕パターンを参考にすると木造アパートでは
・5-10年目:外部通路まわり塗装、室内設備修理、排水管洗浄
・11-15年目:屋根外壁塗装、外部塗装、給湯器修理交換、排水管洗浄
・16-20年目:外部塗装、室内設備修理、給排水管洗浄交換、外構修繕
・21-25年目:屋根外壁塗装葺き替え、外部塗装防水、浴室設備など交換、排水管洗浄
・26-30年目:外部塗装、室内設備修理、給排水管交換洗浄、外構修繕

などという修繕イメージで、戸あたり30年で174万円などの資金イメージがわかる。

こういった計画を冒頭に書いたガイドラインを参考に、標準様式を用いて作ってみることが必要だろう。ガイドラインにも記されているが、自分だけではできない場合は建築、施工、設計の専門家に相談していくことも有用だろう。

と同時にまずは自分でひととおりトライしてみて書けるところと、分からないところを知っておくことが賃貸経営のビジョンのためにも大事なことではないだろうか。

各部修繕イメージ(木造アパート)- 民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブックより抜粋
各部修繕イメージ(木造アパート)- 民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブックより抜粋

長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン(コメント含む)

長期修繕計画標準様式(Excel形式)

執筆:新堀 学(しんぼり まなぶ)

新堀 学

■ 主な経歴

建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。
一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。

■ 主な著書

  • 2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
  • 2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
  • 2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
  • 2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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