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ひっくり返った地盤の常識!武蔵野台地と東京低地、ホントに地震に強いのはどっち?

不動産投資全般/災害・防災 ニュース

2021/08/16 配信

地盤が固く、地震に強いのは首都圏でいえば武蔵野台地のような高台。逆に地盤が軟らかく、地震に弱いのは東京低地のような低地であるというのがこれまでの地震を巡る常識だった。

2021年に公開されたのが右側の東京都区部の情報である
2021年に公開されたのが右側の東京都区部の情報である

だが、必ずしもそうではないということが分かってきた。以前から専門家の間では武蔵野台地上でも世田谷区辺りに揺れやすい場所があることが知られていたというが、2021年5月に国立研究開発法人産業技術総合研究所地質調査総合センター地質情報研究部門(以下産総研)が公開した東京都区部の3次元地質地盤図でそれがはっきりした。これまでの通念を大きく覆す結果について見ていこう。

地下の地質を立体で読み取れる3次元地質地盤図

2018年3月に公開された千葉県北部地域に続き、公開された東京都区部の3次元地質地盤図だが、これは東京都土木技術支援・人材育成センターが持つ東京の公共工事のボーリングデータ数万点を地図上に立体的に表示。

それ以外の20地点でボーリング調査を行い、地層の堆積年代や堆積環境を調べ、基準となる地層の区分を設定。その地層区分をもとに公共工事のボーリングデータへ地層の対比・追跡を行ったうえで独自技術により地層境界面を推定、3次元地質モデルを作成したものだという。

すごく簡単に言ってしまうと地表面の下がどのようになっているかをボーリングデータから推測、立体的に表したもので、東京23区の東西、南北それぞれ約32キロの範囲を作成するのに4人がかりで全体で4年かかったという。

東京都区部の地下には2種類の埋没谷があった

そこで現れたのが地中深くにある2種類の、誕生した年代の違う埋没した谷である。まず、ひとつは東京低地の地下にあるもの。

東京低地の地下にある埋没谷。標高は場所によって異なる
東京低地の地下にある埋没谷。標高は場所によって異なる

現在の東京低地自体も海抜ゼロメートル地帯が広がるなど標高は低い場所だが、さらにその地下には約2万年前の、寒冷な時代に形成された谷があり、その谷を沖積層と呼ばれる、主に泥層からなる新しく軟らかい地層が埋めている。

谷の深さの違いが分かる図。海に近い、中心の部分が深い谷になっている
谷の深さの違いが分かる図。海に近い、中心の部分が深い谷になっている

谷の深さは80mほどから10m以内までと場所によってかなり幅があり、当然ながら地震の際の揺れ方も深いところと浅いところではかなり異なるはず。

一口に東京低地といっても地盤が軟らかくて揺れやすいところと、それほどでもない場所があることになる。実際の図で見ると上野、秋葉原や小岩駅から東側あたりでは低地と言われながらも、場合によっては台地よりも地震に対して強いことも想定される。

東京低地でも埋没谷の深さで揺れ方には差

では、もっと細かく、どこがどのくらい深いのかを見るためにはどうすれば良いか。まずは「都市域の地質地盤図」から「東京都区部を表示」を選択、東京都23区の平面図を表出させる。左側に「平面図の選択」というボックスがあるので、そこから「沖積層基底面」を選択すると約2万年前にできた埋没谷の一番深い部分が出てくる。この谷は東京の下町エリアのみならず、湾岸部をぐるりと取り囲んでいる。

使い方はそれほど難しくないので試してみていただきたい
使い方はそれほど難しくないので試してみていただきたい

深さと地名を同時に見るためには「平面図の選択」の上にある「不透明度」を操作する。100%にしておくと地名の文字が見えないので、左にスライド、50%前後を選択すると地名も深さも同時に見えるようになる。

任意の地点をクリックしてみたところ
任意の地点をクリックしてみたところ

また、地図上の埋没谷の任意の場所をクリックするとその場所の標高が表出される。目安として5m間隔の線があるが、もう少し詳しいところまでは分かるのである。

武蔵野台地の地下にも2つの細長い埋没谷

同様に荒川と多摩川の間に広がる武蔵野台地の地下にある埋没谷を見るためには「都市域の地質地盤図」⇒「東京都区部を表示」⇒「平面図の選択」で「東京層下部基底面」を選択する。不透明度は東京低地の場合と同じである。

武蔵野台地の地下にある埋没谷。大きな谷が2つ、それ以外にも小さな谷が点在している
武蔵野台地の地下にある埋没谷。大きな谷が2つ、それ以外にも小さな谷が点在している

そして、武蔵野台地の地下には特に大きな谷が2つある。ひとつは多摩川沿いに広がるもので、お屋敷街として名高い田園調布の西側から等々力、上野毛、瀬田、尾山台、祖師谷大蔵、成城と世田谷区のかなりの部分を占めるもの。いずれも住宅地としては人気のある高台だが、実は地下には谷があったのである。

実際に表出させてみるとこのように見える
実際に表出させてみるとこのように見える

もうひとつの谷は多摩川沿いのものよりも広い範囲に渡っており、より都心に存在する。中央線の中野駅あたりから代々木、渋谷から恵比寿、大崎、高輪、鮫洲あたりに伸びており、海に近くなるにつれ、谷が深くなっているのが特徴だ。

また、この2つの谷以外にも大田区、品川区内や港区、中央区、文京区にも小さな、独立した谷がある。特に日本橋から御茶ノ水にかけては細く、深い谷が刻まれている。

東京低地下は約2万年前、武蔵野台地下は約14万年前

東京低地地下の谷と武蔵野台地地下のそれとの違いは作られた時期だという。東京低地の埋没谷は約2万年前に作られたものだが、武蔵野台地の地下の埋没谷はそれよりも古く、約14万年前に作られたというのである。

産総研情報地質研究グループグループ長の中澤努氏によると、地球は過去45万年間で何度か氷期と温暖期(間氷期)を繰り返してきたという。

私たちはついつい数十年、100年単位でモノを考えるが、地球はそれよりもはるかに古い
私たちはついつい数十年、100年単位でモノを考えるが、地球はそれよりもはるかに古い

「氷期には雪が融けずに陸地に氷床ができることによってその分、海水が減って海水面が下がり、そこに谷ができます。その後、間氷期になって温かくなると氷が解けて海水面が上昇、入り江になった谷に軟弱な泥層が堆積して埋没谷が作られます。

そのうち、東京低地の地下の埋没谷は約2万年前の最終氷期に作られ、縄文海進で埋められたもの。当時の利根川、荒川が合流したものです。武蔵野台地下の谷はそれ以前、約14万年前に作られ、下末吉海進で埋められたもので、2つの武蔵野台地地下の谷はいずれもその当時の多摩川の流路ではないかと思われます」。

土地の高低では地震時の揺れ方は分からない

地下に軟らかく、揺れやすい泥層で埋まった谷があることが分かったことで、地震に強い場所、弱い場所の考え方を変える必要が出てきた。高台だから地盤が固く、揺れにくいということはないのだ。逆に低地のほうが揺れにくい可能性もある。順に見て行こう。

武蔵野台地上でも東京低地同様の揺れ方をする場所がある
武蔵野台地上でも東京低地同様の揺れ方をする場所がある

まずは武蔵野台地の例。上の図は世田谷区内の武蔵野台地上の地盤を4つに区分、模式化したものだ。これまでなら武蔵野台地上ならどの地点でも同じように揺れにくいと思われていたが、実際には武蔵野台地上でも埋没谷の有無、武蔵野礫層の有無、関東ローム層の厚さなどにより、地震時の揺れは異なる。

それを表すのが模式図の上にある4つのグラフである。これは地震動の増幅特性を簡易的に評価する常時微動観測のH/Vスペクトルと言われるもの。ここで注目したいのは横軸にある周波数。この数値のピークが1Hz前後とやや低周波にある場合には木造住宅に被害が出やすい。

そして模式図で見ると中央の2つのグラフのピークは1Hz~2Hzとなっており、うち右側は1Hzに非常に高いピークが来ている。0.5Hz~1Hzは木造住宅を大きく揺らすキラーパルスで、東京低地と同様の揺れ方が予想される。武蔵野台地上から大丈夫は通用しないのだ。

関東ローム層が厚いと揺れは増幅する

しかも、中央の2つのグラフのうち、右側のグラフでは1Hzに非常に高いピークが来ているが、この違いは武蔵野礫層の有無、関東ローム層の厚さの違い。関東ローム層は建物を支える力、地耐力があり、木造住宅の支持層としてはよく利用されるが、実は地震の揺れを増幅させると中澤氏。

「東日本大震災時、栃木県では宇都宮市街地ではあまり被害が多くなかったにも関わらず、宇都宮市東部から芳賀町にかけての高台で大きな被害が出ました。高台なのになぜという疑問の声が上がりましたが、これは宇都宮付近の丘陵、段丘は関東ローム層が厚い地域だったため。30mにも及んでいる地域があり、それが揺れを増幅したと考えられます」。

低地のほうが地震には強いことすらある

高台が必ずしも地震に強いわけではないわけで、逆に低地のほうが強いこともある。というのは台地に堆積していた東京層、関東ローム層などの柔らかい層が削られており、地表近くに支持層と呼ばれる固い地層がある可能性があるからだ。

前述の模式図には出ていないが、世田谷区でいえば多摩川沿いには砂利の多い低地があり、関東ローム層はほとんどない。そうした場所では台地上では深いところにある支持層が地表面近くにあり、実は地盤は固くて地震には揺れにくい。もちろん、低地なので水害の危険はあるが、地震には揺れにくいのである。

その点で驚くのは地名からしても、目でみても谷であり、低地だから弱いと思われていた渋谷も実は浅いところに固い支持層があり、実は揺れにくい場所だという事実。高い、低いだけで判断してはいけないのである。

2024年までには首都圏主要部が明らかに

常識と思ってきたことが覆されているわけだが、今後は土地、不動産の取得を考える際には3次元地質地盤図を参考にし、そこまでを考えた備えがあるかどうかを確認するようにしたいところ。現在は千葉県北部地域と東京都区部のみが公開されているが、今後、2024年までには首都圏主要部の地質地盤図が公開される予定である。

1点、注意したいのはこうした地図は特定の地点の危険あるいは危険がないことを表したものではないということ。土地の境界などと違い、異なる地形、深さの境界には明確な線が引かれているわけではない。大体、このあたりから深さが変わる程度に考え、最終的には地盤調査などで確認をして欲しい。

健美家編集部(協力:中川寛子)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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