今年は春の大型連休中に石川県で震度6強の地震が発生し、その後も散発的に地震が発生している。全国的にも地震が頻発している。5月26日には、千葉県と茨城県で震度5弱の揺れを観測した。日本は世界の中でも有数の地震国である。
ここ数年を振り返っても2016年4月には熊本で立て続けに2度最大震度7を記録する地震が発生し、2回目が余震ではなく本震とされた珍しい地震だったが、熊本県を中心に8600戸の家屋が全壊し、3万4000戸が半壊するなど大きな被害をもたらした。近い将来に発生が予想されている南海トラフ地震では東日本大震災を上回る被害が想定されている。
倒壊・半壊だけではない
液状化で大きく傾く家屋
地震への対策は欠かせない。東日本大震災では、建物の倒壊・半壊のほかに液状化現象により建物が傾いたりしたことで地盤に対する注目度が一気に上がった。
地盤調査や地盤改良を手掛ける企業にもスポットが当たり、地盤業界大手のサムシンググループの地盤保証では、不同沈下などで建物に損壊が生じた場合、地盤や建物の修復工事にかかる費用を保証する。同社では、地盤改良を行っても十数年と年月が経過するとともに、さまざまな要因で地盤が沈下する可能性はあるとして地盤保証を提供している。
アパート・マンションといった賃貸住宅のオーナーは、地震への対応として入居者と資産を守る備えが重要になる。土地を買って賃貸マンションを建てる場合、地盤調査をしておくと安心感がある。基本的に地盤が緩いとされるのは、海沿いや河口付近などのエリアだ。例えば、東京で言えば東京湾岸や江戸川、荒川、墨田川などが近いエリアの地盤が弱いとされる。
地盤改良工法は表層改良、柱状改良、鋼管打設工法がある。地盤改良をすることで1u当たり2〜3トンの重みに耐えられるようになるという。
軟弱な地盤が浅い場合は表層改良で対応する。改良面積により費用は異なってくるが、表層改良方法に比べて柱状改良や鋼管打設はおよそ3倍コストが高くなる。表層改良は使用範囲が限定され、柱状改良は汎用性が最も高く費用もリーズナブル、鋼管打設は安定感があるがコストは高い――といった特徴がある。
イメージ先行から脱却が必要
過去の冠水・水害事例を参入に
土地の成り立ちを知っておくことも不動産投資の上で危機管理の参考になる。古地図を見ると、昔は沼地や田んぼだったりすることは珍しくない。地名から推察することもできる。例えば渋谷だ。地名に「谷」が入っているように地形は谷になっており、台風やゲリラ豪雨に見舞われると谷底に向かって水が流れていくので谷底で形成される街は水没しやすい。
治水対策がしっかりできている街かどうかも知る必要がありそうだ。江東区や墨田区などの城東エリアは墨田川、荒川、江戸川のほかに小規模河川が多い地域であるため、水害に見舞われやすいとのイメージが強いが、江東区内に住む80歳近い男性は、「生まれも育ちも深川だが、これまで水害に遭ったことはない。近年、毎年のようにゲリラ豪雨が発生するが、実際に東京都内で冠水・水没などのニュースに上がるのは城東エリアではない。しっかり治水対策ができているからだ」と語る。
新型コロナウイルス前の2019年に襲来した台風19号で、多摩川流域が氾濫して住宅街が冠水したり、一部のタワマンの機械室に水が流れ込んで停電でエレベーターが使えない日々が続いたことは記憶に新しい。
ハザードマップの精度も上昇
防災対応の起点は関東大震災
不動産投資先を選ぶ際にハザードマップが欠かせないツールになりつつある。国土地理院では5月30日に「ハザードマップポータルサイト」をリニューアルしたと発表した。
誰でも簡単に災害リスクが理解できるように地図上の災害リスクを文字で伝えるユニバーサルデザイン科を図ったのが特徴だ。音声読み上げソフトを使うことで死角に障害を持つ人の利用も可能にした。「重ねるハザードマップ」で住所入力や現在地を検索するだけでその地点の災害リスクや災害時に取るべき行動を文字で表示する機能を追加して運用を始めた。
また、建築メーカー系シンクタンクの担当者は、「制度が変われば耐震に向けたルールなども変わるが、その原点はなにかということだ。今年は関東大震災から100年となる節目の年だが、関東大震災当時も炊き出しなどいろいろなことを行っているが、実はそれが現在の備蓄や防災対応の日本の都市政策の原点になっている。
地域の防災活動を、これらは官主導に限らず民から動き出し官がサポートする。自助享受というが、その対応が災害初動のときに非常に役に立つ」と話す。
関東大震災は発生から10日ほどで米国から355万ドルの義捐金が集まったことを考えれば、当時と違い今は情報システム発達し、AI(人工知能)を活用したシミュレーションで被害予測も精度を上げてきている。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))