先回の記事でご紹介したように、空前のキャンプブームも手伝って、いま『山を買う』ことが注目されている。
決して高すぎるハードルではなさそうな山林購入だが、投資面でも興味深いことは先回の記事でお伝えした通り。
では、山林投資を検討する際はどんな山林を選ぶと良いのだろうか?
全国にある山林の売買や仲介を行う物件サイト【山いちば】を運営している、株式会社山いちば・代表取締役の比賀真吾さんに話を聞いた。
注目すべきは「木材の運搬コスト」
山林面積は「大きめ」がオススメ
比賀さんのオススメは、木材市場や木材業者がたくさん居る山林や、それらが近い山林とのこと。
その理由は、ズバリ「運搬コスト」。
山林の財産は立木であり、立木を切って売却することで利益になるわけだが、この「運搬コスト」が馬鹿にならない額だそうで、切った木をいかにムダなくスムーズに運び出して市場に持っていけるかがポイントとなる。
例えば、狭い道幅しか確保できない山であれば、大型トレーラーが乗り入れられず、2t程度のトラックで何度もピストン輸送をしなければならない。また、木材市場が遠方にある山ならば、運搬に時間がかかり、一日せいぜい2往復しかできない…など、同じ量の木材を運ぶ場合でも運搬に係るコストや時間に差が生じてしまう。
つまり、その山に『どんな木が生えているか』『どうやって木を出せるか』『どこに木を持っていけるか』がキモなのだ。
林業は薄利な商売のため、今から木材市場が新規で入ることも考えにくく、現存の市場との距離感を測るとして、比賀さんのオススメは「30km圏内」。その距離感に加えて、どんな運搬車両が乗り入れられて、1日に何回運べるか?を考えると良いという。
次に比賀さんが挙げたのは「山林面積の大きさ」。
というのも、山は土地や住宅と違って“境界線”が曖昧なことがほとんどなのだとか。
地籍調査が入っていないことも多く、実際の広さと10倍ほど違うケースも珍しくないそう。自分の山の立木だと思って切ったら、実は他人の山だった…などの係争リスクを避ける意味でも、「大きめの山を買っておく方が良いでしょう」と比賀さん話す。
境界線と併せて、権利関係が複雑だったり曖昧なケースもあるようで、「業者からの情報だけでなく法務局に行って自分でしっかりと調べることも必要」ともアドバイスしてくれた。
「自然災害の多い昨今は、土砂災害や自然火災などの懸念もあります。
小さい山林面積の区画がたくさん集まった山は、Aさんの区画からBさんの区画に土砂が流れてAさんがBさんに謝り、Bさんの区画からもCさんの区画に土砂が流れているので謝って、CさんはDさんの…というような面倒なことも増えがちです。
山林面積の大きな山ならば、多少の土砂などは自分の山の中で完結できますし、『外への被害を軽減できる』のでオススメしたいですね」(比賀さん)
ちなみに、山林には「森林保険」もあり、購入時も必要書類等は少なく手続きもスムーズ。最短1週間ぐらいで引き渡しが行われるというのも、住宅・土地購入とは大きく違うところだろう。
山林投資は追い風傾向
木材売却時の収益化をしっかりと!
改めて、山を投資目的で購入する魅力を比賀さんに聞いた。
「いま世に出ているのは、立木の樹齢が50年~70年の山林が多いです。山の価値に直結する立木は、人間と一緒で大きくなれば手がかかりません。災害にでも遭わない限り、放っておけば木は太る(=育つ)のです。
構わない間に成長した立木を、気が向いたら…入用になったら…伐採して売却すればいい、という気楽さがあると思います。
近年はゲリラ豪雨などの大雨災害も多く、“自然のダム”の役割を持つ山林が見直されていますし、令和6年度から森林環境税が課される予定で、山林への予算も増える傾向にあります。
また、山林はエコの代表格でもありますが、再生可能エネルギーのひとつであるバイオマス発電の燃料としても木材はイメージが良く、これも山林の『伸びしろ』なのかなと。
過去最低水準の価格で買えて、自分のタイミングで売却できる。この時期の山林投資は悪くないと思いますよ」。
【山いちば】では100万円程度からの山林を扱っているそうだが、それを聞いても、想像する以上に手を出しやすい投資材料のように感じる。
収益化の参考になる先述のアドバイスを踏まえつつ、追い風局面にあるとされる山林投資を検討してみては如何だろうか?
健美家編集部(協力:アンズコミュニケーションズ)