2017年9月にβ運用として始まった空部屋、押入れなど貸していないスペースを物置として貸し出すことで収益をあげる「モノオク」というサービスを紹介した。
立地が悪くても運用可能でほんのわずかな空間でも収益を生むというもので、その時点では200か所のホスト登録があった。
それから4年弱。徐々にスペースは集まってきており、現在は首都圏はもちろん、大阪、福岡など都市部を中心に6000か所の登録があり、毎月預けている人が350人ほど、サービス登録者はのべで2万5000人ほどにも。
2020年度には空き家問題の解決に寄与する仕組みとして東京都スタートアップ実証実験促進事業(PoC Ground Tokyo)として世田谷区内で実証実験を実施している。確実に成長しているわけだが、収益としてはどうなのだろう。最新の状況を取材してきた。
賃料より収益が上がる、
物置としての活用
この4年弱運営をしてきて、他人の家にモノを預けても良いと思う人が意外に多いことに気づいたとモノオク株式会社の阿部祐一氏。
それがスペースの伸びなどに繋がっているわけだが、そこで問題として出てきたのは預けられる場所の数が増えてもそれが点在していると利用しにくいという点。そこで東京都の実証実験では特定の地域で預けられる場を集中して増やすというやり方をしている。
具体的な場所は世田谷区の三軒茶屋駅周辺の下馬、上馬、三軒茶屋界隈。というのは世田谷区は日本で一番トランクルームが多い一方で空き家も多い地域だから。
「トランクルームの分布で見ると世田谷区が最も集中しており、利用料金は1畳分で1万8000円。この価格でも8割埋まっており、供給が足りていないことが分かります。その一方で世田谷区は空き家も多いのはご存じの通り。であれば、トランクルームニーズを空き家利用で吸収できないかと考えたのです」。
そこでモノオクは2019年末から空室になっていた246沿いのビルの1階を自社オフィス兼貸出スペースとして借り、周辺エリアへのテコ入れを始めた。
「スペースは全部で38畳分ほどあり、そのうち、15~16畳分を貸出ており、利用料金は1畳9900円。もちろん、近隣トランクルームより月額利用料金は安く、初期費用もかからないので利用者にとっては非常に安価に預けられることになります」。
この金額で貸せれば賃貸住宅として貸すよりも収益が高くなる。現在同社が借りている部屋の場合、払っている賃料の坪単価より、モノオクとして貸している利用料金のほうが高いのである。
改装不要ですぐに貸せる
しかも、賃貸住宅と違い、貸すために改装をする必要がない。
「預け入れる品物の状態を維持するために冷暖房、空気清浄機などを用意していただいたり、預入時に立ち会っていただくなどの管理はある程度は必要ですが、内装に手を入れる必要はなく、すぐに始められるのがモノオク利用のメリットです」。
この点を利用すれば賃貸住宅としては貸しにくいスペースを活用することができる。たとえば住宅として貸す場合には多額の改装費がかかる古いアパートや近い将来建替えの予定があるため、住宅としては貸しにくい物件、今後手を入れるつもりで購入した空き家、高齢者宅、自宅などで使っていない部屋、押入れやクローゼットがある場合などなど。改修費を稼ぐためにしばらく貸すという方法も考えられるだろう。
もちろん、貸せるのは住宅だけではない。店舗やオフィスの使っていない場所、屋外倉庫なども十分に貸せる。
初期には主婦が我が家の空きスペースでお小遣い稼ぎと考え、1部屋を5000円で貸すなど相場を破壊するような設定をしていたこともあったそうだが、現在は地域の賃料相場、ニーズなどから「1畳6000円以上がお勧めです」といった適切な相場形成への誘導も行っている。地域によって相場は異なるものの、人が多く住んでいるところなら確実にニーズがあるという。
不測の事態に備え、保険も付帯
場所、利用者ともに登録は無料で、スマホがあれば簡単にできるが、ホストとして運用する場合には成約料金から30%をサービス手数料として払う必要がある。4畳半を1畳あたり1万円で貸したとして利用料金は合計で4万5000円/月となり、そこから1万3500円/月が手数料として引かれる計算である。
この手数料の中にはもしも、荷物の紛失、破損などのトラブルが起きた時に備えた保険も付帯(最大10万円、免責額3000円)も含まれている。大儲けには向かないが、使っていない場所を有効に使ってちょっとした小遣いを稼ぐつもりなら手軽にできるわけである。
トラブルに関しては預ける前に何を預けたかを申告、写真も添付することになっているので、預けてないものを紛失したという言いがかり的なトラブルは考えにくい。
荷物を預けたまま、取りに来ないケースも想定できるが、料金はクレジットカード払いなので、未払いは発生しにくい。荷物そのものは最後、同社が回収するとしているので、この辺りもトラブルにはなりにくかろう。
荷物の搬入・搬出は当人同士でやりとりする。家の空きスペースを利用するものの、家に来てもらうのは嫌というのであれば、受取り場所を別に指定することもできる。宅急便で配送なども可能だ。
利用者は短期、長期の2種類
ちなみに利用者は短期、長期の2種類。
「引っ越しやリフォーム時に一時荷物を保管しておきたいというのが短期利用の方々。3カ月から半年ほどの利用が多く、引っ越し事業者の箱そのまま持ち込まれるような例もあります。
もうひとつは生活空間の延長として利用するというもので、自宅には置いておけない、使う頻度の低い季節のレジャー用品や子どもの品などを近くのモノオクにという利用です。
最近では出費を節約するため、広い部屋からコンパクトな部屋に住み替え、荷物はモノオクにという例もあり、モノオクを使っても毎月の出費は下げられたという例も」。
今後の課題は地域での認知度を上げていくこと。多くのシェアサービスはアプリ利用等でネットから入るが、空き家を視野に入れて利用を広げていくなら高齢者も貸す人、借りる人になってくる。それを考え、同社では地道にチラシ配布等を行い、認知度アップに努めているという。
多くのメディアに取り上げられていることや同サービスを参考に地域の掲示板サイトで物置として使いませんか?といった書き込みが増えている現状を考えると認知度アップがイコール利用者、収益アップに繋がると思われる。今後のさらなる成長に期待したい。
健美家編集部(協力:中川寛子)