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これからの経営のヒントにも。「障害者グループホームガイド第4版」を読んでみた

不動産投資全般/その他投資 ニュース

2022/02/07 配信

公益社団法人東京共同住宅協会が出した「障害者グループホーム開設に向けてのガイドブック」の第4版が出た。同ガイドブックは2011年に第一版から更新を重ねており、第3版までに1万部を発行している。今回の第4版は3年ぶりの改定とのことで、2021年12月に完成している。同協会に送付を依頼、どのような内容なのか、読んでみた。

開設事例にメリット、デメリットの記載も

ホームページ内の告知から。A4版で102ページ
ホームページ内の告知から。A4版で102ページ

ガイドブックは大きく2部から構成されている。第1編は障害者等の全体的な状況の解説から始まり、障害者グループホームの歩みと現状、障害者グループホームの開設に当たっての物件の取得方法や開設事例、不動産情報入手について、さらには課題と関係者の声などがまとめられており、これまで障害者グループホームについて知識の無かった人でも分かりやすく理解できるようになっている。

特になるほどと思ったのは開設事例の紹介。相続で取得した中古建物を建て替えて半分を賃貸アパート、半分をグループホームにした例、自治体の高齢者住宅として使われていた木造2階建てアパートを自治体の制度廃止に伴って社会福祉法人に一括で貸し出した例、賃貸併用住宅を転用した例、土地を購入した法人が長期に安定した収益を求めて一括借り上げを選択した例が掲載されており、さまざまな建物タイプでの開設が可能であることがよく分かった。

施設開設に当たっては東京都の施設整備費補助が利用でき、それによって耐震改修や間取り変更などができているのだとか。そうした助成や必要経費、必要書類など細かいところにまで解説があり、きちんと整理されているのがありがたいところ。

ただ、第1編第5章の課題、関係者の声を読むとグループホームの運営者のみならず、就労支援、地域活動参画などを行っていくためには地域のさまざまな団体との連携が必要なことも分かり、一般の住宅以上にノウハウが求められていることも分かる。きちんと事前に学び、用意してスタートしないとそうそうはうまくはいかないのだろう。

もうひとつ、率直に良いと思ったのはメリット、デメリットの記載があること。たとえば、物件を取得する3つの方法というパートでは中古物件を賃借して始める場合のメリットとして「新築に比較して初期投資が少なく住む。

アパートに限らず、戸建て住宅でも利用できることがある」とあり、デメリットとしては「都の施設整備費補助申し込み、リフォーム工事、グループホーム開設まで長期間にわたり、運営事業者の賃料持ち出しが発生することが多い。家主さんの善意にばかり依拠することもできない。場合によっては、間取り変更での制約もあり得る」。

それ以外のやり方についてもプラス、マイナスがきちんと書かれているのは好感がもたれるところである。

福祉的活用も対象はさまざま

続く第2編は不動産オーナーに向けて福祉系建物で不動産活用を考えてみませんかと、福祉的活用を呼び掛けるもの。相続税の課税強化の実情に始まり、これまでのように賃貸住宅だけを対策として考えるのではなく、もっと多種多様な施設も視野に入れて考えるべきだとする考えには賛成である。

その様々な施設、選択のうちのひとつに福祉系建物があるというわけだが、福祉的な活用はなにも障害者グループホームだけではない。ガイドブックではその他の選択肢も示されている。高齢者向け、子ども向けとやり方はいろいろあるのだ。

安めの賃料でも長期に貸せば収益は高くなる

ただ、いずれの活用でも福祉系と聞くだけで利回りが芳しくないのでは?と考える人が多い。ところがガイドブックでは賃料が低い傾向にあることは確かとしたうえで、違うメリットがあることを指摘する。

それが福祉サービス事業者への一括賃貸借契約になるため、個別の入居者・利用者と契約を結ぶ必要がなく、空室リスクがないということ。入退去の立ち合いや原状回復、新規入居者募集、募集期間中の賃料ロスなどが発生せず、しかも、長期の契約になる。建物の維持管理費用、入居者の管理も不要と考えると、賃料がある程度安価になっても、長期的に見れば損はしないという。

ガイドブックでは1室10万円の賃料で一般賃貸にした場合と、一割安い1室9万円で福祉系賃貸にした場合の12年間の事業収支を比較しているのだが、長期で見ると福祉系のほうが手取り収入が多い計算になっている。

これについてはある不動産オーナーからも聞いたことがある。それはあまり立地の良くない、いくら内装に手を入れてもなかなか一般賃貸では決まりにくい物件で、それで退去の度に手間、費用がかかることを考えると多少賃料が安くなっても10年ずっと借りてもらえる福祉系が良いという選択だった。

立地が良い場合でも、経営の手間を考えると長期で借りてもらえるほうが長い目で見るとおトクという考えはあり得るだろう。

また、福祉的活用であれば社会貢献にもなる。最近では社会同様、障害者の高齢化も進んでおり、自分亡き後の子どもの行く末に悩む親御さんも多いのだとか。そうした人たちに少しでも安心していただける施設を作ることは意義もある。

もちろん、意義、善意だけでは成り立たないものであり、安易に始めてみようとは言えない。だが、こういう選択があることを知っているだけでも経営にバリエーションが生まれるというものである。興味がある方は一読してみて損はない。

公益社団法人東京共同住宅協会 03-3400-8620 一部500円に送料が必要

健美家編集部(協力:中川寛子)

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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