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近年増加中、貸切利用できるレンタルジムは儲かるのか。収益性、注意点を聞いてきた

不動産投資全般/その他投資 ニュース

2022/08/01 配信

このところ、身体を動かす、動かしたい人が増えている。

経済産業省の特定サービス産業動態統計速報(2022年5月)によると売上高は前年同月比+42.0%と6カ月連続の増加、会費収入は同様に+41.5%で15カ月連続の増加などとなっており、コロナ禍初期に落ち込んだものの、現在は確実な復調傾向にある。

日本のフィットネスクラブ自体も2010年に約3600弱だったものが、2018年には約5800弱になっており、特に近年の小規模な郊外型、24時間利用可の施設は新規参入も増え、活況を呈している。

加えてこうした統計に表れていない動きがある。それがマンションやビルの1室を利用したレンタルジムだ。

個人で利用するのはもちろん、この10年ほどで一般的になったパーソナルトレーナーがレッスンを行う場として利用するなどが予想され、ここ1~2年でレンタルスペースを扱うサイトでも探せるようになってきた。実際のところ、どのような場所なのか、東日本橋に開業したばかりのレンタルジムを取材した。

築古ビル1階の飲食店跡をジムに改装

古いビルの1階、道路に面したところに所在するまんてんジム
古いビルの1階、道路に面したところに所在するまんてんジム

都営浅草線東日本橋駅の目の前に誕生したまんてんジムは1972(昭和47)年築のビル1階にある。長年飲食店が入っていたが、コロナ禍で退店。しばらく放置されていた場所で、ビルの管理にあたる株式会社REX建築不動産の荻谷強氏がオーナーにジムとしての再生を提案。実現したものである。

用途をジムとしたのは個人的な関心から。荻谷氏自身、一般的なスポーツジムからスタート、24時間利用できるジムを経て、現在は格闘技系のジムでトレーニングを続けており、トレーナーから場所に関する悩みを聞いた。

「クラブに所属して教えていても、それだけでは厳しいので個人でレッスンを行っているトレーナーが多いのですが、そこで問題となるのはどこでレッスンをするか。他のスポーツクラブを利用するわけにはいかず、場所探しに困っているトレーナーが多いと聞きました」。

トレーナーが個人で開いているジムもあるが、場所を借りて設備を整えて開業となるとハードルが高い。レンタルスペース自体はこのところ増えており、ヨガなど設備がなくても始められるレッスンならそれでも良いが、設備が必要となると途端に数が減る。

自分が管理、オフィスを構えるビルなので、空いている時間は自分が使えば良いという思惑もあり、オーナーにとりあえずの清掃、片づけの費用、100万円を出してもらい、残りは自分で出資する形で始めることにした。

「駅に近い1階店舗で広さは約20坪。普通に店舗として貸せば家賃は20万円ほどでしょうか。ただ、事情があり、2年間限定でしか利用できないので、飲食店はもちろん、その他店舗としても貸しにくい。そこで格安の5万円という家賃で貸してもらえることになりました」。

100万円強をかけて改装、開業へ

オーナーが一応の撤去はしてくれたものの、それでも内装その他の撤去が必要だったため、10日がかりで大工と2人で作業、解体、廃材処分、内装に約60万円ほどかかった。

器具類はメルカリで中古を探した。意外に出品はあるが、問題は重さ。200キロ、300キロとなると送料が多額に及ぶ。24か月で回収すると考えるとここで予算はかけられない。

幸い、都内、木場で出品している人がおり、しかも、運送業者だったという幸運が重なり、無事に2台のマシンを購入。こうした機材類ではホームジム用の安価な商品もあるものの、壊れやすく、それを懸念してプロユースのしっかりしたものにしたという。

「無人のジムでトラブルになる可能性があるのはマシンの故障などによる怪我。その不安を払拭するために安価な、壊れやすいマシンではなく、プロユースの品を用意しました。

それ以外で意外に出費が嵩んだのは床材。ホームジム用のそれほど高くない品ですが、すでに滑りやすいという声も出ているので、半分は貼り直す予定です」。

店内内部。手前の半分が格闘技等に使えるスペースで奥にマシンが置かれている。青いカーテンの向こうが脱衣スペース
店内内部。手前の半分が格闘技等に使えるスペースで奥にマシンが置かれている。青いカーテンの向こうが脱衣スペース

それ以外では可変ダンベル、EZバー、サンドバッグ、ボクシング防具2セット、ミットなどを用意、壁には全身が映る鏡も用意した。器材等に約50万円かかったため、当初100万円の予算だったが、実際にはもう少しかかった。

募集、運営はほぼ自動で手間なし

募集はレンタルスペース募集サイト「インスタベース」「スペースマーケット」を利用することにした。予約開始から10日ほどの時点では9割がインスタベース経由で、出だしとしては好調。始めたばかりというのに予約も順調に入り始めた。

「インスタベースは手数料が35%と高いのですが、広告してくれ、予約、回収まで一気通貫にお任せでき、かつレビュー制度もあって地道に続けていけば評価も高まる仕組み。手数料分の価値はあるかなと思っています」。

当初、心配したのはダブルブッキング。2つのサイトで募集しているとあり得る話だが、これは早々に解決した。グーグルカレンダーと連動させれば、一方で予約が入ったことが他のサイトのカレンダーにも反映される。これでダブルブッキングの心配はなく、募集はほぼ自動で行えることに。

もうひとつ、レンタルスペース運営の問題は清掃、ごみ出しだが、この点でもレンタルジムは手間がない。

「パーティースペースは3時間、4時間と長時間借りてもらえますが、その分、利用後の清掃、ごみ出しが面倒です。飲んだ後の作業で分別がきちんとできていないことはよくありますし、分別されていてもごみ出しはモノによって曜日が違い、何度も足を運ぶ必要も。

前夜に利用者がいたそうだが、翌朝の取材時でこの状態。きちんと整理して置かれていた
前夜に利用者がいたそうだが、翌朝の取材時でこの状態。きちんと整理して置かれていた

ところがレンタルジムは1時間借りれば十分なので、その分たくさんの人に使ってもらう必要はありますが、飲食禁止にしているのでごみは出ませんし、慣れている人は使った後のマシンの清掃なども自分できちんとやります。なので、それほど清掃も必要なく、運営者としては非常に楽ちんです」。

ちなみに同ジムには更衣スペースはあるものの、浴室はもちろん、シャワーも用意されていない。周囲の人たちに聞いてみたところ、意外に使われていないからだと荻谷氏。

「レンタルジムを利用する人は基本的にはご近所さん。このあたりはオフィスがたくさんありますし、ここ数年でマンションも増加。そうした人たちが来て利用しているので、利用後は自宅でシャワーという人も多い。

私自身もシャワー施設があったジムでも使ったことはありません。費用、手間の面から考えても、必要性から考えても要らないだろうと判断しました」。

利用料金は時間、曜日で細かく設定

利用料金は利用者が多いだろう時間、曜日は高く、そうではない時間は安くと細かく設定されている。具体的には平日の朝7時~9時(いずれもその時間からスタートしての1時間の料金)が800円、10時~17時は2200円、22~23時は1000円(ビルは24時に閉館)で、土日祝は12時~20時が2200円になる。

価格設定では一般的なジムに通っている人がお手頃に感じるだろう額を意識した。

手前が押す系、奥が引っ張り系のマシン。この2台があればほとんどのトレーニングは可能だとか。今後、使い方を開設するなど使いやすくする工夫をしていくそうだ
手前が押す系、奥が引っ張り系のマシン。この2台があればほとんどのトレーニングは可能だとか。今後、使い方を開設するなど使いやすくする工夫をしていくそうだ

「定期的に通っている人でも月に4回くらいが一般的。価格としては月額1万円くらいでしょうか。それがこのジムで2200円で4回なら一般的なジムに比べてお得という計算になります。マシンの数はそれほど多くはありませんが、押し系、引っ張り系が1台ずつにダンベル、トレーニングベンチがあり、正しい知識があればほぼすべてのトレーニングは可能です」。

利用できる時間は1日17時間で、これが全部埋まれば1日で2万3000円ということになるが、とりあえずの目標はフル稼働の25%と荻谷氏。1日の4分の1が埋まり、月に10万円ちょっと稼いでくれるのが最低ラインだという。

貸切ならではのメリットで集客を

対象としているのは普通のジムに通っていたものの不自由さを感じている人たち。

「一般的なジムにはいろいろな禁止事項があります。たとえば、筋トレ上級者に人気の、複数種目を連続してトレーニングするジャイアントトレーニングという方法がありますが、これは機器類を占有してしまうことから禁止されています。一方でマナーが悪く、次の人が使いたいと待っていてもどいてくれない人がいるのも、一般ジムのあるあるです。

また、まじめに取り組んでいる人は筋肉の動きを見たいので裸でやりたいのですが、一般には禁止されていますし、声、音を出すのもダメ。

音楽をかけるのも、力を込めた時に声が出ることすら禁止されていたり。また、グループでサポートしながらのトレーニングも一般ジムではできません。そうした不自由さを感じている人に使っていただければと思っています」。

もうひとつ、使って欲しいと思っているのがパーソナルトレーナーの人たち。すでに利用者のうちにはリピーターも出始めているが、そのうちに一人、該当しそうな人がいるとのこと。数人が定期的に使ってくれるようになれば利用が安定する。

また、コロナ第7波で遠のいたが、インバウンドの人たちも意識している。

外国人も含め、使い方についての質問がでないよう、店内のあちこちにはこうした分かりやすい掲示が貼られている
外国人も含め、使い方についての質問がでないよう、店内のあちこちにはこうした分かりやすい掲示が貼られている

「東日本橋は成田、羽田どちらから来ても停車駅で交通の利便性が高い場所。それを意識してこの数年、ホテルが増えています。そのうち、長期滞在する外国人客に使ってもらえればと思い、あらかじめ、掲示には英文も入れていたのですが、まだしばらくは難しそうです」。

音、知識、収益性がポイント

場所の貸し方としては手間もなく、最初に設備を整えれば始められそうだが、いくつか問題もある。ひとつは音の問題。

「サンドバッグ、ミット打ちの音は意外に響きます。そのため、マンション1室で始めるのは難しいかもしれません」。

もうひとつは知識の問題。まんてんジムは格闘技、筋トレができるように知識のある人が取り組んでメリハリをつけた投資を行っている。ジム、スタジオといっても幅は広く、機材類の必要がないヨガ、ピラティスなどのようなものから、マシンが必要なものまであり、どんな人を対象にするかで設備、仕様は異なる。パーソナルトレーナーがいて使用すると想定するならマシンを安価なホームジム用にしても良いのではないかと荻谷氏。そのあたりをきちんと分かって投資する必要があるのである。

音の問題も格闘技でなければ問題ない可能性もあり、逆にダンス関係ではより厳しくなることも考えられる。

もちろん、収益性の問題もある。同ジムの場合には期間限定という特別な要件があるため、家賃は非常に抑えられており、それが経営に寄与している。だが、そうした条件で借りられることは一般には期待できない。普通に賃料を払って経営すると考えた場合、どこでいくらの料金を取れば収益を上げられるか。

前述したように商圏自体は狭く、まだまだ全体の数は少ない。近隣に競合がなく、オフィス、住宅のある地域であればニーズは一定数はあるはずだ。

ちなみに現在同ジムが掲載している2サイトで中央区内にいくつ、競合となりそうなジムがあるかを検索してみたところ、スペースマーケットで10カ所、インスタベースで8カ所だった。この2年ほどで急激に増えたコワーキングスペース、ワークスペースなどに比べるとまだまだ競争は少ない。やりようによっては面白いかもしれない。

また、ジムに限らず、レンタルスペースサイトを見ると実にいろいろな場の使い方が出てきており、たまに覗くと参考になる。

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健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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