3月3日、札幌市西区の地下鉄東西線・宮の沢駅付近のマンション「宮の沢ハイツ」で、屋上付近のコンクリート製の庇(ひさし)が約30メートルにわたり崩落するという事故があった。ケガ人はいない。
「宮の沢ハイツ」は全室が賃貸用の7階建てRCマンション。1972年に建てられた後に増築されており、一番古い中央部分は築45年。全55室のうち、52世帯が入居中であった。
間取りはファミリー向けで、賃貸サイトには最近まで、56.70㎡(17.15坪)の2LDKの部屋が、家賃4万6000円で掲載されていた。築年数が古いこともあり、賃料は近隣相場より低めで、入居者は高齢者が多かったようだ。
「宮の沢ハイツ」は昨年8月から、大阪の呉服店を営む企業が所有しており、その前には東京の不動産会社が所有していた。
札幌のテレビ局の報道によれば、現在の所有者は、「自分は不動産にはくわしくない。東京の不動産会社から、『いい物件がある。持ち主も管理会社もしっかりしているので心配ない』と言われて買った。できるだけ早く、元通りに修復して安心して住める状態にしたい」と話している。
また、宮の沢ハイツはつい最近まで売却に出されていたという情報もある。「地下鉄駅に近い場所なので、注目していた」というある不動産投資家は、「確か、価格は約3億円、利回りは9%程度で出ていたのではないか。土地値が1億2000万円くらいだから、強気だなと思った。建物は古いので、もし自分が買えたら更地にして新築用地にしようと思っていた。まさか、こんなことになるなんて・・・」と驚いた様子で語った。
札幌市は23日、同マンションが、建築基準法で3年に一度、市へ建物の状況等を報告することが義務づけられている「特殊建築物」であるにもかかわらず、1998年から報告が行われていないことを発表しており、適切な修繕が行われていなかったことが、事故の原因と見られている。
札幌市によれば、前述の市への定期報告について、昨年度に対象となった市内1881件の共同住宅のうち、定期報告があったのは1613件という。
秋元克広市長は23日の記者会見で「何年間も報告のないような建物は名前を公表するなど、定期点検や報告が促進される手だてを考えていかないといけない」と話した。
健美家編集部